読書メモ

札幌在住の26歳。一応公認会計士。ほぼ読書記録ブログと化してます。比較的なんでも読みますが、一番好きなジャンルは推理小説。

【読書記録】2017年8月の読書数は27冊でした。

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さようなら8月、こんにちは9月。

そしてさようなら夏、いらっしゃいませ北海道の秋、という感じです。

 

夏は野外フェスに行ったり山に登ったりとアクティブだったので、夏が名残惜しいですが、ここは読書の秋、教養の秋とポジティブにとらえることにします。

 

さてさて、今月の読書記録はこんな感じです。27冊!

 

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平野啓一郎さんの「日蝕」、西加奈子さんの「サラバ!」、池澤夏樹さんの「スティル・ライフ」、佐藤正午さんの「Y」と、純文学よりの小説たち(「サラバ!」は直木賞ですが、僕の中ではエンターテインメントよりは純文学の箱に入れたほうが個人的にすっきりします)から始まって、

後半はサラ・ウォーターズの「半身」や相沢沙呼さんの「マツリカシリーズ」、そしてアガサ・クリスティとミステリ尽くしで終わりました。

 

平野啓一郎さんの「日蝕」は、1999年の芥川賞受賞作品なのですが、受賞時も賛否両論となった、その特徴ある文体に触れるべきです。フランスの神学者が蒐集の旅をしている中で、錬金術師や両性具有者との邂逅を経て、キリスト教との新たなつながりを模索しているようなストーリーも異色ですが、20世紀前半から中盤にかけて書かれたような古風で形式ばった文体は、まるで実際に中世ヨーロッパに書かれた書物をその時代の学者が翻訳したように感じられ、挑戦的な作品だったと伺えます。

 

日蝕 (新潮文庫)

日蝕 (新潮文庫)

 

 

 

続いて、西加奈子さんの「サラバ!」上下巻。

個人的に、西加奈子さんと又吉直樹さんと中村文則さんの小説は、読んでもハマらないと感じていました。もちろん、作品を読んだうえでそう思っています。

西加奈子さんの小説の帯には「中村文則さん、又吉直樹さん推薦!」

中村文則さんの小説の帯には「西加奈子さん、又吉直樹さん推薦!」

そして又吉直樹さんの小説の帯には「西加奈子さん、中村文則さん推薦!」

そう書かれているような気がして、僕の中ではなんだか好きになれない純文学トライアングルの一角にいました。(「舞台」はとっても面白かったですが。)

 

その気持ちで、「サラバ!」を読んでみていたのですが、その考えは大きく間違っていたことに気づかされました。

サラバ!」は傑作です。間違いなく傑作だと思いました。

なんで、もっと早く読んでいなかったのか、悔やまれる恥ずかしい、そんな作品。

 

サラバ!の上巻の半分ぐらいまでは、淡々とイランやエジプト、日本での生活が淡々と語られており、なんだかちょっと読んでいて退屈でした。しかしあの上巻半分の記載はいわばダムのようなものでした。上巻の後半から、感情の放流が始まりました。自分の感情や他人の言動などに振り回されて振り回される主人公の放流たるや、とうとうと滔々と、僕の目に、耳に、五感に大量の水が流れ込んでくるような感覚に陥りました。西加奈子におぼれてしまった。

 

サラバ! 上

サラバ! 上

 

 

 

サラバ! 下

サラバ! 下

 

 

 

相沢沙呼さんの「マツリカシリーズ」の最新作「マツリカ・マトリョシカ」、せっかくなので、最初から読むことに。

主人公の柴犬(通称)がマツリカさんに振り回されながら謎を解決していく。そして謎を解決しながら成長していく、ジュブナイル日常の謎的なシリーズ。

ジュブナイル小説らしい、スピード感あるストーリー展開ながらにして、秀逸なプロットは、読んでいてとても楽しくなります。

読み終わった瞬間に、もう次の作品が読みたくなる、中毒性MAXな小説です。 

 

あと、変わったところでいうと、穂村弘さんの「短歌の友人」でしょうか。

先日、本屋さんを歩き回っているときに、ふいに短歌の棚に目が行きまして、「そういえば、詩は読んだことあるけど、短歌って読んだことないなぁ」と思ったのです。しかし、短歌を読もうとおもっても、何を手に取ったらいいかわかりません。正直俵万智さんの「~~サラダ記念日」しか知りません。なので、歌集を買うのはハードルが、というかリスクが高い、そんな気がしました。

いろいろ、検索してみると、短歌の評論でこの「短歌の友人」がおすすめされていたので、購入してみました。

 

読んでみると、短歌の評論というよりは、もう詰め込みに詰め込んだ短編小説のおもちゃ箱みたいで、短歌たるやを全く知らない僕でも、面白いなぁと思いながら、リラックスした気持ちで読むことができました。

 

 

短歌の友人 (河出文庫)

短歌の友人 (河出文庫)

 

 

 

と今回は、こんなところです。

9月は出張が多く飛行機であっちへこっちへ行ったり来たりなので、Kindleでの読書がメインになりそうです。

 

ではでは。

 

 

僕が個人的に好きな漫画10作品を紹介します。

こんにちは。

8月も3分の1が過ぎようとしていて、もうお盆休みに入っている人もいるのでしょうか。おととい、8月7日は北海道では七夕の日でした。

 

いつも、小説ばかり読んでいる僕ですが、漫画もそれなりに読んでいます。特にiPadをかってからはKindleでまとめ買いする機会も増えました。

 

昔はいわゆる少年ものの王道バトル漫画として、ワンピースやNARUTO、ブリーチなど読んでいたのですが、最近は王道からは外れた漫画(と言っては失礼ですが)をよく読みます。

せっかくなので、僕の個人的に好きな漫画10作品を紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

1.イエスタデイをうたって冬目景集英社

  

 

 

コンビニバイトで何となく毎日を過ごしているリクオのもとにカラスを連れた少女、ハルが現れる。一方、リクオは大学時代からの友人、榀子のことが忘れられない。

と、あらすじが2行でかけてしまう、この漫画。

僕は何を隠そう冬目景さんのこの漫画が大好きなわけです。くくってしまえば、青年向けの恋愛コミックなんですが、いわゆる恋愛漫画みたく、恋愛恋愛していなくて、主人公たちに際立ったキャラクターはないのだけど、どこか情緒的な、文学的な感じがするのです。そしてハルがかわいい。その情緒さを際立たせるのが作品のタッチ。作者が美大出身であったこともあり、輪郭や髪型などの手書き感が、いつか懐かしい夏の思い出…のようなノスタルジアを味わせてくれます。冬目さんの作品画集もとっても素晴らしいです。

余談ですが、冬目さんはこの作品以外にも多く作品を書かれており、「羊のうた」や「幻想博覧会」「ハツカネズミの時間」などどれも面白いですが、個人的に好きなのは「マホロミ 時空建築幻視譚」です。取壊し寸前の建物の取っ手に触れると建物の記憶が少しだけ見える建築学生の物語。全四巻。

 

また、現在月間バーズにて「空色ノイズの姫君」を連載中。こちらもおすすめです。

 

2.アルテ(大久保圭コミックゼノン

 

 

アルテ 1巻
 

 

 

中世ヨーロッパのフィレンツェヴェネツィアを舞台にした、職業画家を目指す女性の物語。当時は職業画家は男性の仕事で、女性、特に貴族の女性は家系の繁栄のために、多額の結納金をもって名家へ嫁がせるものであったとされる時代のなかで、貴族として、女性として、の生き方と戦い自立しようとする主人公アルテ。物乞いや高級娼婦など様々な人との出会いの中で、職業画家として、元貴族として、そして女性として成長していく姿にとても引き込まれます。そして表情豊かなアルテがかわいい。

 

3.ベイビーステップ勝木光講談社

 

 

 

 

勤勉・真面目でオールエーだから、あだ名がエーちゃん。そんなエーちゃんが、運動不足の解消のためにテニスの体験レッスンに行き、テニスの世界にはまっていく、スポーツ漫画。テニス漫画といえばこの漫画、ぐらい有名なテニスの王子様の「ありえない」設定とは真逆で、様々なテニス理論や実際のトレーニング・アプローチなどに基づいたリアルなテニス漫画で、テニス経験者としてはなるほどと思いながら読んでしまう。そしてナッちゃんがかわいい。

 

 

4.スパイラル~推理の絆~(城平京水野英多スクウェア・エニックス

 

 

 

 

天才の弟、鳴海歩(なるみあゆむ)の類稀なる洞察力と理論に基づいた構築力によって、難事件を解決しながら兄の行方を捜していく物語。

ガンガン・コミックスも「魔法陣グルグル」や「まもって守護月天!」、「ハレのちグウ」など結構読んでいた気がします。僕の全盛期はこの「スパイラル~推理の絆~」や「東京アンダーグラウンド」「鋼の錬金術師」だったんですが、中でもこの作品は夢中で読んでいました。

単発の事件解決の推理漫画が、いつのまにか途中からお兄さんとの確執と真実を見つける物語と変わっていったという点の評価は分かれるところですが、細かい伏線や高度な心理戦は最後まで読んでてぞくぞくさせられました。あとひよのさんかわいい。

 

東京アンダーグラウンド、読みなおしたくなってきました。 

 

あ、あと城平京さんの小説「名探偵に薔薇を」もオススメです。

 

5.星野、目をつぶって。(永椎晃平/講談社

 

 

 

人との関わりを避けながら高校生活を送る主人公、小早川が人気者のギャルである星野美咲に振り回される、結構王道な青春恋愛漫画

顔もかわいく人気者の星野が唯一隠していることが、すっぴん。すっぴんの顔が地味すぎて人気者の輪を何とか保とうとしているが、川でおぼれていた子猫を助けたために、小早川にすっぴんがばれてしまう。そして化粧がへたくそな星野のかわりに、美術部の小早川が星野のメイク担当として、学校生活に巻き込まれていく。

でも、星野の行動力に感化されつつも、「いやいや、人間っていうのはそうそうすぐには変わんねーんだよ」みたいな主人公の鬱屈した感情が、王道の展開から少しはずれて進んでいくところが、たまらないです。あとすっぴん星野がかわいい。

 

6.恋は雨上がりのように眉月じゅん小学館

 

 

 

 

ファミレスでバイトしている女子高生橘あきらとそのファミレスの店長の恋愛物語。

ただし、好意の方向は、あきら⇒店長で、店長もその好意をありがたいと思いながらも、自分の年齢や世間体、あきらの将来を考えて、優しく突き放す。一歩間違えば、おじさんの妄想漫画になりかねないテーマを、読んでいて気持ち悪くならない、そして面白い絶妙なバランス感で進んでくストーリーがなんともいえないです。

 「たちばなあきら」と聞くと、「橘玲」さんをおもいだしてしまうのが悲しいところ。(笑)

 

 

 

7.よつばと!(あずまきよひと/メディアワークス

 

 

 

 

よつばちゃんという5さいのおんなのこが、きんじょのひとたちとほんぽうにふれあっていくものがたりです!きみはよつばとフレンズなんだね!っていうかんじです。きんどるばんはないよ。

 

作者は違うけど、何となく雰囲気の似ている石黒正数さんの「それでも町は廻っている」も併せておすすめです。

  

8.ドメスティックな彼女流石景講談社

 

 ひょんな事から童貞を卒業した主人公ナツオは、父の再婚によって、片思いしている学校の先生と童貞を卒業した相手(2人は姉妹)と同居することに。という主人公ハーレム系の物語。少年誌でここまでやっちゃっていいの?ってぐらいエロくて、近親相姦のセックスシーンも多く出てくる、いろいろギリギリな漫画。なんだけど、読み始めたら面白いです。

 

 

9.惑星のさみだれ水上悟志少年画報社

 

 

 

 これも昔に読んでとてもはまっていた漫画。また読もうかな。

大枠は普通の人がある日力を得てしまい敵と戦うバトル漫画なのですが、世界を救うために力を得たヒロインが、何よりも世界を壊したがっている、というところが面白いです。

10巻完結というコンパクトさの中にこれでもかと面白さや名言を詰め込んでおり、是非一読すべき漫画です。

 

 

10.メイドインアビスつくしあきひと竹書房

 

 アビスというどこまで続くかわからない謎の縦穴を探索する探窟家の物語。主人公のリコも探窟家にあこがれをもち、誰も到達したことのない縦穴の底を目指します。絵柄からかなりかわいい感じがするのですが、内容はそろそろグロく、死んだり死にかけたり。webコミックながら、単行本でも読みたくなる面白さです。

 

 

 

その他紹介できなかった、おすすめ漫画

ほかにも紹介したい漫画があったのですが、10作品に絞ってしまったため紹介できなかった作品たち、備忘録として記載しておきます。

 

羽海野チカハチミツとクローバー」/「3月のライオン

桂正和「I's」

畑健二郎ハヤテのごとく!

仲村佳樹「スキップビート」

宮原るりみそララ恋愛ラボ僕らはみんな河合荘

渡辺静「CHIMES」

 

ではでは。

【読書記録】2017年7月の読書数は16冊でした。

連投です。

 

2017年の読書記録。
今月は、仕事がとっても忙しい時期があったり、毎夜飲み会のある出張が続いたり、となかなか読書時間が確保できませんでした。

 

悲しい。

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というわけで2017年7月の読書数は16冊。
先月までのペースからすると50%ぐらいですね。
でも、200冊超えたから読む気がなくなって失速したわけではありません。

 

内訳は以下の通り。

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読んだ冊数は少ないものの、バラエティ豊かに、面白い作品をたくさん読むことができた月でもあります。

 

過去記事で紹介した逸木裕さんの「少女は夜を綴らない」や

 

masahirom0504.hatenablog.com

 辻堂ゆめさんの「悪女の品格」だけではなく、

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

今年没後30年の澁澤龍彦さんの遺作で、天竺へ向かう途中の高岡親王の幻想奇譚を綴った連作短編集「高岡親王航海記」や

(梨木果歩さんの家守奇譚も似たような印象を受けます。) 

高丘親王航海記 (文春文庫)

高丘親王航海記 (文春文庫)

 

 

文章の耽美さが素晴らしいと評される、自身の無意識的直観である第六感を超える第七官(感)のように、自己と他者の思考や意識が無意識的につながっているような恋愛感覚をさまよう一方的で双方向的な少し変わった恋愛?小説である尾崎翠さんの「第七官界彷徨」 、

 

勉強とは何か、について哲学的に考え、勉強は必ずしもしなければならないものではく(無意識的なものも含めて)自発的に行うものであって、そして勉強するものたるものキモくあれ、とその「勉強する」ことの考え方や落としどころなどを抽象的にまとめ上げた、千葉雅也さんの「勉強の哲学」、

 

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために

 

 

そして、ネガティブになりがちな現代において、人間のポジティブな面に焦点を当てて、精神的にまっすぐな信念を掲げる人たちの人間情緒を書き上げた、武者小路実篤さんの「真理先生」などたくさんの、「何度も読み返したくなる作品」に出会えた月だったかなと思います。

 

真理先生 (新潮文庫)

真理先生 (新潮文庫)

 

 

8月は、引き続き北海道も暑い季節なので、外へ飛び出すことも多くなりそうですが、
仕事も一段落し時間もあることなので、もっとたくさん本が読めたらいいなと思っています。

 

長い歴史小説にもチャレンジできたらいいですね。

 

 

では、この辺で。

悪女になり切れない悪女へ。東京創元社から待望の新刊、辻堂ゆめ「悪女の品格」を読みました。

8月になりました。
最近はもっぱら登山に行ったり、ドラクエXIの攻略にいそしんでいます。

 

今回読んだのは、辻堂ゆめさんの「悪女の品格」(ミステリ・フロンティア)です。

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なんとサイン本。

サイン本がネットで買えるとは便利な世の中です。(いいのかは別として笑)

 

 

 

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

 

 (以下Amazon 内容紹介より引用)

「普通になんて生きられない。金がないと」光岡めぐみは三人の恋人を器用に転がし貢がせ、贅沢な生活を送っている。ところがこの一週間、監禁や薬品混入事件など何者かに次々と狙われるようになり、そして彼女自身の過去の罪を告発する手紙が届く――。めぐみはパーティーで知り合った大学准教授と共に犯人を捜すが……。わたしを狙うのは、誰? 東大在学中にデビューを果たした今注目の新鋭が放つ、渾身の長編ミステリ!

 

辻堂さんは、「いなくなった私へ」でこのミステリーがすごい!大賞で優秀賞を受賞後、「コーイチは、高く飛んだ」や「あなたのいない記憶」など、宝島社から作品を出しています。そんな辻堂さんの待望の新刊は、なんとミステリ・フロンティアから。うれしい。

 

 

いなくなった私へ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

いなくなった私へ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 

コーイチは、高く飛んだ (『このミス』大賞シリーズ)

コーイチは、高く飛んだ (『このミス』大賞シリーズ)

 

 

あなたのいない記憶

あなたのいない記憶

 

 

 

ミステリ・フロンティアは、僕の大好きな東京創元社から出しているフランス装版のレーベルです。馴染み多いのは、創元推理文庫や創元SF文庫ですが、ミステリ・フロンティアで発刊された作品の多くは、創元推理文庫で文庫化されます。有名どころで言えば、伊坂幸太郎さんの「アヒルと鴨のコインロッカー」や海藤尊さんの「夢見る黄金地球儀」、米澤穂信さんの「さよなら妖精」など。最近では、深緑野分さんの「オーブランの少女」などでしょうか。

 

 

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

 

 

 

そんな、僕が推している新進気鋭の作家が、僕のもっとも好きな出版社から出す最新刊「悪女の品格」、楽しみじゃないわけがありません。

 

 

「悪女の品格」は、大女優の娘で、かつてはいじめっ子、今では三股をかけ金持ちの男を手玉にとる悪女、めぐみがマンション近くの物置で目を覚ますところから物語が始まります。物置に閉じ込められてしまっためぐみは、その後も塩酸をかけられたり、脅迫文が送られたりと散々な目に合います。

 

 しかし、めぐみはめげない女。婚活パーティーで出会った優良物件の准教授とともに、過去の清算をしつつ、物語は進んでいきます。脅迫の内容が意味するところとは。犯人はいったい誰か。そして犯行の動機は。

 

悪いのに、本当にいいところはあまりないのに憎めないめぐみと、正体不明のイケメン准教授の息の詰まった、息の合った掛け合いも含めて、一気読みしてしまう楽しさが散りばめられた作品でした。

今回も最後に少し心温かくなる結末でした。(で、いいんですよね?笑)

 

 

「悪女の品格」というタイトル。

 

悪女、と聞くとどうしても思い出してしまうのが中島みゆきさんの名曲「悪女」。

マリコの部屋へ~♪、と出だしが印象に残る、悪女を演じ切れないいい女の曲ですね。

 

サビはこんな感じ。 

 

悪女になるなら 月夜はおよしよ 素直になりすぎる

隠しておいた 言葉がほろり こぼれてしまう 「行かないで」

悪女になるなら 裸足で夜明けの 電車で泣いてから

涙ぽろぽろ ぽろぽろ 流れて涸れてから

 

 

最初、「悪女の品格」と聞いたとき、この中島みゆきさんの「悪女」の歌詞を思い浮かべながら、悪女になり切れないいい女の話かなと思っていましたが、めぐみは藤沢において行かれても、飛び入り参加した婚活パーティーで出会った男とともに、しっかりパンプス(笑)を履いて、夜が明ける前に車で「いい男ゲット!」と思いながら帰る女ですからこの悪女よりは悪女なのでしょう。

 

しかし、准教授には「どうも君は悪女の品格が備わっていない。まったくないとは言わないけど、ずいぶんと中途半端だ」なんて言われてしまっている点からすれば、悪女になり切れないいい女、という解釈もあながち間違っていないのかな、と思います。

 

彼女なりのバックグラウンドがあって、悪い女を演じている、少しは魔性さが備わっているのかもしれませんが、悪女を演じることに自棄になっているような寂しい女性のように僕にはうつりました。

 

この一連の事件を通じて、いい女のメッキがはがれ、今までの友人はみんないなくなってしまったけれども、同時に悪女のメッキもはがれ、新しく生きてみようと前向きに決心できた彼女の品格は、きっといい女へと向かうのだと信じています。

 

私がいなくなって、あなたがいなくなって、今度はみんながいなくなった、辻堂作品、何もかもがなくなる日は近いのかもしれません。

 

なんて。

 

締め方が雑ですが、今回はこの辺で。

 

そして少女は再び屋上で死を迎え、物語は始まる。逸木裕「少女は夜を綴らない」を読みました。

こんばんは。

7月も終盤に差し掛かっていますが、相変わらず忙しい僕。
今回は出張先からブログを更新しています。

 

今回読んだのは、逸木裕(いつきゆう)さんの「少女は夜を綴らない」(角川書店)です。

 

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少女は夜を綴らない

少女は夜を綴らない

 

 

(以下Amazon 内容紹介より引用)

“人を傷つけてしまうかもしれない”という強迫観念に囚われている、中学3年生の山根理子。彼女は小学6年生のときに同級生の加奈子を目の前で“死なせてしまった”ことを、トラウマとして抱えていた。 “身近な人間の殺害計画”を“夜の日記”と名付けたノートに綴ることで心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた理子の前に、ある日、加奈子の弟・悠人が現れる。“加奈子の死”にまつわる理子の秘密を暴露すると脅され、理子は悠人の父親を殺す計画を手伝うことに。やむを得ず殺害計画を考えるうち、誰にも言えなかった“夜の日記”を共有できる悠人に心惹かれていく理子。やがてふたりは殺害計画を実行に移すが――。
 
逸木さんは、デビュー作「虹を待つ彼女」で横溝正史ミステリ大賞を受賞しており、今回が2作目。前作はAIの話題が盛り返してきていた時期に親和性の高かった、人工知能をテーマにしており、テロを起こした少女の自我を人工知能で再現していくうちに彼女の心の中が少しずつ見えてきて謎に迫っていく…、といった近未来的なミステリでしたが…。
 
 

 

虹を待つ彼女

虹を待つ彼女

 

 

 
2作目はうって変わって、”少し”個性はあるものの、普通の女の子が普通に学校に通いながら…、と青春ミステリよりの作品になっている。
いや、なっていない。
ページを開くとすぐわかる通り、主人公は普通の女の子ではないし、普通の学校生活もおくれていない。
 
さて。
 
前作は、天才少女がビルの屋上でドローンに銃で撃たれて自殺するところから物語がはじまった。
そして今作もまた、一人の少女が屋上で毒を飲まされ転落死する。
表紙もまたしても屋上のワンシーン。
作者にとって、屋上と少女の死は、切っても切り離せないのかもしれない。
 
 そして、物語は始まる。
 
主人公の少女は、友達に毒を飲ませ転落する、その死の一部始終を見てから、無意識に誰かを殺したい衝動に駆られているのではないか、実際に殺してしまっているのではないか、という加害恐怖に苛まれながら、学校生活を送りはじめる。
 
その衝動は、数少ないが信頼のおける友達と話しているときやボードゲーム部の部活動を行っているときにも訪れ、ふとした瞬間、誰かを殺してしまっているのではないか。
そんな恐怖が常に付きまとっているのである。そんな衝動を抑えるために、少女は現実味のある殺人妄想を日々綴って、綴り続ける。
 
ある時、殺してしまった少女の弟から殺人計画を手伝ってほしい、と話を持ち掛けられる。少女は、殺人なんてやってはいけないという思いとは裏腹に、少年の殺人への羨望が、少女にとっては加害恐怖からの解放へと繋がり、やがて安堵を覚え始める。
それは、自身の殺人衝動や殺人日記を受け入れてくれたからであり、その感覚は次第に意識的に殺人を起こして殺人者であることを受け入れてしまえば加害恐怖におびえなくても済むのではないかとエスカレートしていく。
少女の行きつく先はどこか。そして殺人計画の行方は。
 
 
そんな普通ではない境遇の少女の、普通ではない学校生活を、殺伐ながら軽快に描かれており、しかし最終的にはミステリの伏線を回収し、収まるところに収まり、さらには少女にまっとうな少女としての生きる希望さえも与えてくれるような物語になっている。
 
なんなんだ、この気持ちは、と。
抵抗しながらも歪んでいく少女は、「悪い人」と「いい人」にぶつかりながら、形作られていく。
そして読み終わったときに、こう思う。
 
やっぱり、少女は普通の女の子だったと。
そう、少女は夜を綴らない。いや、綴れない。
 
 
後味の良い(いや、一部は悪いのか?)物語の終わり方であったし、早い物語の展開で、一気に読み進めさせられた気がする。
恐るべし、逸木裕。恐るべし、屋上の少女。
次はどんな少女が屋上で死を迎えるのか。不謹慎ながら楽しみでもある。
 
おわり。