僕の読書メモ

札幌在住の25歳。読書とコーヒーと服が好きです。上手な文章を書けるようになりたいです。

そして少女は再び屋上で死を迎え、物語は始まる。逸木裕「少女は夜を綴らない」を読みました。

こんばんは。

7月も終盤に差し掛かっていますが、相変わらず忙しい僕。
今回は出張先からブログを更新しています。

 

今回読んだのは、逸木裕(いつきゆう)さんの「少女は夜を綴らない」(角川書店)です。

 

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少女は夜を綴らない

少女は夜を綴らない

 

 

(以下Amazon 内容紹介より引用)

“人を傷つけてしまうかもしれない”という強迫観念に囚われている、中学3年生の山根理子。彼女は小学6年生のときに同級生の加奈子を目の前で“死なせてしまった”ことを、トラウマとして抱えていた。 “身近な人間の殺害計画”を“夜の日記”と名付けたノートに綴ることで心を落ち着け、どうにか学校生活を送っていた理子の前に、ある日、加奈子の弟・悠人が現れる。“加奈子の死”にまつわる理子の秘密を暴露すると脅され、理子は悠人の父親を殺す計画を手伝うことに。やむを得ず殺害計画を考えるうち、誰にも言えなかった“夜の日記”を共有できる悠人に心惹かれていく理子。やがてふたりは殺害計画を実行に移すが――。
 
逸木さんは、デビュー作「虹を待つ彼女」で横溝正史ミステリ大賞を受賞しており、今回が2作目。前作はAIの話題が盛り返してきていた時期に親和性の高かった、人工知能をテーマにしており、テロを起こした少女の自我を人工知能で再現していくうちに彼女の心の中が少しずつ見えてきて謎に迫っていく…、といった近未来的なミステリでしたが…。
 
 

 

虹を待つ彼女

虹を待つ彼女

 

 

 
2作目はうって変わって、”少し”個性はあるものの、普通の女の子が普通に学校に通いながら…、と青春ミステリよりの作品になっている。
いや、なっていない。
ページを開くとすぐわかる通り、主人公は普通の女の子ではないし、普通の学校生活もおくれていない。
 
さて。
 
前作は、天才少女がビルの屋上でドローンに銃で撃たれて自殺するところから物語がはじまった。
そして今作もまた、一人の少女が屋上で毒を飲まされ転落死する。
表紙もまたしても屋上のワンシーン。
作者にとって、屋上と少女の死は、切っても切り離せないのかもしれない。
 
 そして、物語は始まる。
 
主人公の少女は、友達に毒を飲ませ転落する、その死の一部始終を見てから、無意識に誰かを殺したい衝動に駆られているのではないか、実際に殺してしまっているのではないか、という加害恐怖に苛まれながら、学校生活を送りはじめる。
 
その衝動は、数少ないが信頼のおける友達と話しているときやボードゲーム部の部活動を行っているときにも訪れ、ふとした瞬間、誰かを殺してしまっているのではないか。
そんな恐怖が常に付きまとっているのである。そんな衝動を抑えるために、少女は現実味のある殺人妄想を日々綴って、綴り続ける。
 
ある時、殺してしまった少女の弟から殺人計画を手伝ってほしい、と話を持ち掛けられる。少女は、殺人なんてやってはいけないという思いとは裏腹に、少年の殺人への羨望が、少女にとっては加害恐怖からの解放へと繋がり、やがて安堵を覚え始める。
それは、自身の殺人衝動や殺人日記を受け入れてくれたからであり、その感覚は次第に意識的に殺人を起こして殺人者であることを受け入れてしまえば加害恐怖におびえなくても済むのではないかとエスカレートしていく。
少女の行きつく先はどこか。そして殺人計画の行方は。
 
 
そんな普通ではない境遇の少女の、普通ではない学校生活を、殺伐ながら軽快に描かれており、しかし最終的にはミステリの伏線を回収し、収まるところに収まり、さらには少女にまっとうな少女としての生きる希望さえも与えてくれるような物語になっている。
 
なんなんだ、この気持ちは、と。
抵抗しながらも歪んでいく少女は、「悪い人」と「いい人」にぶつかりながら、形作られていく。
そして読み終わったときに、こう思う。
 
やっぱり、少女は普通の女の子だったと。
そう、少女は夜を綴らない。いや、綴れない。
 
 
後味の良い(いや、一部は悪いのか?)物語の終わり方であったし、早い物語の展開で、一気に読み進めさせられた気がする。
恐るべし、逸木裕。恐るべし、屋上の少女。
次はどんな少女が屋上で死を迎えるのか。不謹慎ながら楽しみでもある。
 
おわり。

【読書記録】2017年6月の読書数は32冊でした。

こんにちは7月、さようなら半年。

今年も後半戦、6月は全くブログを更新しませんでしたが、読書だけは相変わらず粛々と読むことができました。感謝感謝。

 

6月は32冊読むことができ、内容はこんなかんじです。

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ちなみに上半期で読んだ冊数は196冊。

 

6月は、先月公言していたように、小野不由美さんの「十二国記」シリーズや高田大介さんの「図書館の魔女」シリーズを読みました。

 

ちなみに、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」シリーズは「珍妃の井戸」の一冊しか読みませんでした。というのはKindle西尾維新さんの「掟上今日子」シリーズが50%ポイント還元セールがあって、一気買いしてしまったためです。笑

 

「図書館の魔女」はメフィスト賞を受賞した作品でかなりのボリュームがあるんですが、本当に面白かったです。タイトルから本を使いながら魔法を操っていくファンタジー系のエンターテイメント小説かと思っていたのですが、中身を読むと想像の浅さに恥ずかしくなりました。

 

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

 

 

魔女といいながらも「この世に魔法なんかない」と"魔女"自身が否定する。手話や指話なども踏まえながら言葉とは何か、言語とは何かを考えさせる。そして諸外国とのスリルあふれる外交、些細な発見から論理を組み立てて現状を打破して国としての存続を図っていく左腕とのやり取り。etc...

説明ったらしいし、長いしでヨムヒト(読む人)を選びそうな小説ですが、私は大ファンになりました。大量の積読がなければ、続編の烏の伝言もすぐにでも読むというのに…。

 

他に挙げるとすれば、古典作品を少し読み始めたところでしょうか。「潮騒」や「点と線」、「ティファニーで朝食を」など。

名作は色あせない。色あせない名作は今後も少しずつ読んでいこうと思います。

 

あとは今更ながら、村上春樹さんの「蛍」を。

これはノルウェイの森の作品の一部のもとになった短編として有名ですが、「蛍」そのものでも村上さんぽさが凝縮された作品のように感じました。

 

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

 

 

 

またぽつぽつと更新できるように、今月もよろしくお願いします。

 

 

【読書記録】2017年5月の読書数は36冊でした。

 

早いもので6月になりました。

仕事が全然落ち着かず、忙しい状態はいつまで続くのやら。

寝る時間を削って、ゲームしたり読書したりしています。

まれにある、休みの時間も大体体調崩しているので、できることはゲームか読書ぐらいなんですよね。笑

ゲームや小説の主人公って体調崩さないからいいなぁ、って思います。

 

最近はNeir AutomataやHorizon Zero Dawnをやってますが、最近の流行は「意志のある機械」なんだなぁ、とつくづく思うところです。

 

ニーア オートマタ - PS4

ニーア オートマタ - PS4

 

 

Horizon Zero Dawn 通常版 - PS4

Horizon Zero Dawn 通常版 - PS4

 

 

でも、両作品とも、2017年に発売された作品の中では群を抜く面白さと世界観なので、PS4持っている人はぜひともやったほうがいいですよ。

 

 

さて、今月の読書記録は以下の通り。 

 36冊読みました。

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 内訳はこんな感じです。

 

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 知念実希人さんの「天久鷹央の推理・事件カルテシリーズ」や貫井徳郎さんの創元推理文庫3部作、そして浅田次郎さんの「蒼穹の昴シリーズ」などがシリーズ系で読み切ったところです。

 

といっても、まだ蒼穹の昴シリーズは名を変えて続くのですが...笑

 

今月読んだ中でおすすめだったのは、ブログでも紹介した以下の2作です。

 宮内悠介さんの「あとは野となれ大和撫子」と

masahirom0504.hatenablog.com

 

辻村深月さんの「かがみの孤城」です。

masahirom0504.hatenablog.com

ブログを読み返すとほぼあらすじを書いているだけでした。笑

この間、王様のブランチでも紹介されていたみたいですね。

 

この二作は本当にお勧めです。

 

あとは、個人的に推している辻堂ゆめさんの「あなたのいない記憶」、

 

あなたのいない記憶

あなたのいない記憶

 

 

そして、会計士としては読んでおきたいと思った橘玲さんの「永遠の旅行者」でしょうか。

 

永遠の旅行者(上) (幻冬舎文庫)

永遠の旅行者(上) (幻冬舎文庫)

 

 

 

又吉直樹さんの劇場は面白いんですけどどうも好きになれない感じ、また塩田武士さんの「罪の声」はとっても面白かったんですけど、実際のグリコ・森永事件の時代を生きていたらもっと面白かったんだろうなぁ、というところでおすすめ次点です。

 

 

と5月の振り返りはこんなところです。

 

6月は、浅田次郎さんの蒼穹の昴シリーズ第2章~、小野不由美さんの「十二国記シリーズ」、そして高田大介さんの「図書館の魔女シリーズ」など、長編ファンタジーや長編時代小説なんかを読み進めていこうかなぁ、と思っています。

 

あぁ、早く仕事にケリがついてほしいですね。笑

 

それでは。

 

 

 

 

 

辻村深月「かがみの孤城」は、原点回帰かつ最高純度のまさに辻村さんらしいファンタジーミステリーでした。

こんばんは。

二日続けての投稿です。

今回は辻村深月さんの「かがみの孤城」(ポプラ社)です。

この本を読み終わった瞬間、宮内さんの「あとは野となれ大和撫子」のように、感想を書かずにはいてもたってもいられなくなってしまったのです。

 

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

 (以下Amazon 内容紹介より引用)

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

 

300booksでも言っていましたが、この作品は辻村作品のなかでも人気の高い「スロウハイツの神様」が好きな人なら、絶対に一読することをお勧めしたい小説です。かならずや、寝る間も惜しんで一気読みをしてしまうはずです。

そして、「ぼくのメジャースプーン」、「凍りのクジラ」、「冷たい校舎の時は止まる」、「子どもたちは夜と遊ぶ」など初期作品が好きな人にも、おすすめです。原点回帰であり、かつ洗練された最高傑作に間違いありません。

 

300books.net

 

(2017/6/14追記)

王様のブランチで「かがみの孤城」が紹介された後、一時的にアクセス数が上がりました。びっくり。番組内でも大絶賛されていました。

また、最新号の「ダ・ヴィンチ」でもプラチナ本として紹介され、ダ・ヴィンチニュースでもインタビュー記事が2度紹介されていました。

 

 

さて、気になるあらすじはこんな感じ。

 

 

主人公の安西こころは、学校でのいじめが原因で家に閉じこもるようになってしまっていた。ある時、部屋の全身鏡が光っていて、手をふれるとこころは不思議なお城へと導かれる。この城の主はオオカミの仮面をかぶった小さな女の子、「オオカミさま」。こころは、同じようにオオカミさまに連れられてきた6人の中学生とともに、なんでも願いがかなう一本の「願いの鍵」を探しに行くのでした...。

 

いや、これ、辻村さんすぎるでしょ!!

辻村さんといえば、ファンタジーミステリー、ファンタジーミステリーといえば、辻村さん。

 

装丁も素敵すぎるし。カバーももちろんいいんだけど、カバーを外すと、外国文学っぽい表紙に物語とのリンクを感じるし。

 

 

 

 

…。

 

そう。ミステリーなんです。

以下、ネタバレも含んじゃいますが、辻村作品ただのファンタジーじゃ終わりません。

ファンタジアスなミステリー。易しい、ではなく、優しい謎解きが含まれたファンタジーの世界。

 

 

 

 

 

 

ここから先は、本を読んだ方のみスクロールしてください。

 

 

こころがかがみの孤城で出会った、6人の中学生、アキ、スバル、リオン、マサムネ、フウカ、ウレシノ。彼らはみんな、日本の学校に通えていない子供たちでした。

 

物語の中で、彼らは葛藤しながら触れ合っていくうちに、少しずつお互いに心を開いていきます。孤城の中でしか出会わない、秘密を共有できる仲間たち。

 

いじめられていて、友達に裏切者あつかいをされて、自分がいらない子のように思えて、なんとなくだるくていかなくなったらいけなくなって、親が過保護で、義理の父親に暴力を振るわれて、金づるとしてしか見られてなくて。

 

この小説で挙げられていたのはたったの7例ですが、それぞれがそれぞれの要因で学校に通えなくなった事情を打ち明けていきます。(最後まで打ち明けられない子もいますが)

 

孤城が空いているのは5月1日から3月30日まで。願いの鍵を見つけられないまま、お城での楽しかった日々は刻一刻と過ぎていきます。

(きっと4月からの最初の一か月は学校に通える子も、5月ぐらいから通えなくなるのかもしれません。)

 

 

あるとき、アキが学校の制服を着て孤城に行きました。そこでみんなは気づきました。自分が通っている学校の制服だと。学校に通えない子供たちはみんな同じ学校の生徒だったと。

マサムネは提案しました。2学期の最初の日、保健室でも、音楽室でもいいから1日だけ学校であってみよう、と。みんなは決心しました、だって私たちは一人じゃないのだから。

でも、彼らは出会えませんでした。彼らの2学期の最初の日、みんな同じ学校に行ったはずなのに。もしかして、並行世界。パラレルワールド。彼らは絶対に出会えないことに気づかされるのです。オオカミさまは、私たちを弄んでいるのだと。

しかしこれもまた、早とちりなのです。オオカミさまはそんな悪い子じゃありません。物語は確信に近づき、こころがそれに気づきます。私たちの世界はずれている。でも並行世界なんかじゃない。ずれているのは時間なんだと。

 

ここまでは、ちゃんと読んでいた読者はすぐ気づいたはずです。ゲームでの食い違い、音楽プレイヤー、うるう年だから出会えた二人、街並みの移り変わり、ハッピーマンデー制度、そして変わらない中学校の制服。

 

スバルのイマは1985年。

アキのイマは1992年。

こころとリオンのイマは2006年。

マサムネのイマは2013年。

フウカのイマは2020年。

そして、ウレシノのイマは2027年。

 

彼らはそれぞれのイマから、時の止まった校舎、ではなくお城へと導かれていたのでした。彼らの間には7年ごとのスキマがあります。でも1999年の中学生はいませんし、こころとリオンは同い年です。

 

そしてリオンは気づくのです。オオカミさまは死んだお姉さんだと。1999年に中学校に通いたくても通えなかったお姉さんだと。お姉さんは日本の中学校に通いたくても通えなかったリオンに同じ中学校の友達を作ってあげたかった。それがオオカミさまの願いでした。偶然にも、リオンが日本に戻ってきたとき、同じ中学校に友達が最初からいるのです。それがこころなのでした。

 

こころとリオンは同じ中学校に通う友達になりました。

スバルは工業高校にすすみます。いつか独自のゲーム機をつくって、マサムネの「このゲーム機は友達が作ったんだ」をほんとにしてあげると決意します。

フウカは、もし覚えていたら、ウレシノと運命的な出会いが再びできると信じて、ウレシノの告白を了承します。

そしてアキは…。

 

 

 

 

 

 

 

 

アキは、喜多嶋晶子は、大学時代のフリースクールのボランティアを通じて、リオンの姉、実生に出会います。アキ自身中学校に通えない時期があったこと、実生の死に咽び泣く男の子の姿をみて、いつか自分を救ってくれたように、誰かの助けになってあげたい。そう決意します。それから月日は流れ、3人の子どもと出会います。こころと、マサムネと、そしてウレシノと。

 

 

物語は、こころが中心の世界で進んでいきますが、その孤城はリオンを救うためだったり、喜多嶋先生=アキがこころやマサムネ、ウレシノの助けになっていたり、そしてそのアキ自身も、オオカミさまやほかの6人に手を差し伸べてもらったり。

 

仲間はずれになったり、道をはずれてしまったり。

はずれてしまった7人の始まりは、仲間はずれのいない終わりへと向かっていったのでした。

 

~ Fin. ~

 

 

まとめなおしても、素敵な物語です。これ自体がまるで絵本のような、童話のような。

子どもから大人まで、是非読んでほしい物語ですし、何度も何度も読み返したい小説だと思いました。

 

 

ほんとうにおしまい。

 

 

 

 

宮内悠介「あとは野となれ大和撫子」は、中央アジアの昨今を訴えかける社会派エンターテイメント小説でした。

こんばんは。5月です。

といってもすでに後半に差し掛かっています。

 

仕事のほうは相変わらず忙しく、そのせいで土日はほぼ毎週疲れと風邪でダウン、意識が朦朧としながら、小説を読み耽っている。そんな状況です。

 

今回は宮内悠介さんの「あとは野となれ大和撫子」(KADOKAWA)を読みました。

 

あとは野となれ大和撫子

あとは野となれ大和撫子

 

(以下Amazon 内容紹介より引用)

中央アジアのアラルスタン。ソビエト時代の末期に建てられた沙漠の小国だ。この国では、初代大統領が側室を囲っていた後宮(ハレム)を将来有望な女性たちの高等教育の場に変え、様々な理由で居場所を無くした少女たちが、政治家や外交官を目指して日夜勉学に励んでいた。日本人少女ナツキは両親を紛争で失い、ここに身を寄せる者の一人。後宮の若い衆のリーダーであるアイシャ、姉と慕う面倒見の良いジャミラとともに気楽な日々を送っていたが、現大統領が暗殺され、事態は一変する。国の危機にもかかわらず中枢を担っていた男たちは逃亡し、残されたのは後宮の少女のみ。彼女たちはこの国を――自分たちの居場所を守るため、自ら臨時政府を立ち上げ、「国家をやってみる」べく奮闘するが……!?

内紛、外交、宗教対立、テロに陰謀、環境破壊と問題は山積み。
それでも、つらい今日を笑い飛ばして明日へ進む
彼女たちが最後に掴み取るものとは――?

 

内容紹介に詰め込まれること詰め込まれること。

 

2000年代の環境開発の弊害として発生した、アラル海の干上がりによって出来た小国アラルスタン。ウズベキスタンの自治州から独立した国家の大統領が演説中に殺害されて、残された可憐な(?)女の子たちが国家の運営に!あー、もうどうなっちゃうわけ!!

 

と、海外を舞台にしたハーフフィクションを思わせる前半の説明から、後半は一転ライトノベルのようなあらすじに、頭が混乱させられる。買うかどうか迷っていたところに、Twitterでおすすめですよという声があったので、思い切って買ってみたのでした。

 

 

確かに、物語はあらすじのとおりで、間違いないのですが…。

 

 

思っていた以上に、近い過去、今、そして未来の中央アジアで、世界で起こっていることを、起こるかもしれない環境問題や宗教対立、あまたの時事問題を、わかりやすく、そして鮮烈に書かれている、ノンフィクションのようなフィクションでした。

 

これは面白い!!さらっと読めて、そしてためになる。

 

 

もちろん、ありえねーだろ!っていうギャグみたいな展開もあるんですが、読む前と読み終わった後では、中央アジアの知識は雲泥の差、月と鼈です。

 

 

宮内さんといえば、日系二世・三世のアメリカでの生き様をつづった「カブールの園」で話題となりましたが、こちらも「日本ではないところで暮らす日本人(日系人)」に焦点を当てています。海外が舞台の小説も登場人物に日本名がいるだけで、ちょっと読みやすくなっているように感じられるのは気のせいでしょうか。笑

 

 

カブールの園

カブールの園

 

 

「わたしは虐められていただけ。人種差別なんか受けてない!断じて!」

 

この文章を読んだとき、ハッと思いました。

 

「いじめ」も絶対に許されないことですが、人種差別を受けた人たちにとっては、ただの「いじめ」だったらよかったのに、と思ってしまうぐらい根深い苦しみなんだと。

 

僕も中学生の人は、ある特定の人に攻撃される、今でいう「いじめ」のようなものを受けた時期があったけれども、(幸い後に残るほど酷いものではなかったけれど)、差別は受けたことがない。ある意味では当たり前だ、日本に住んでいる日本人なのだから。そして差別をしたという意識もない。

 

しかし、無意識に差別をしているのかもしれない。私たちの先祖は、アイヌを迫害してきた歴史があるし、女性の社会進出以前の性差や職業差別をしてきた\された歴史もあった。だから、今この瞬間、無意識的に誰かを差別してる可能性だって否定できない。ただ、日本はほぼ単一民族であり、「差別」の重さを意識している日本人は少ない。僕だってそう。そして歴史を重んじない。

 

このあいだ韓国から来た男性が「ファッキンコリアン」などと罵声を浴びせられる話があったときもそう思った。酔っ払いからすれば、愛嬌愛嬌、ただの「いじり」のつもりかもしれない。でも、彼は絶対差別だと受け取ったと思う。いじりには境界はないのかもしれないが、差別は完全なる線引きだと思う。俺のテリトリーに入ってくるんじゃねぇと。彼は苦笑しながら立ち去った。

 

きっと僕が彼ならこう言う。

「これは差別じゃないよ。ただのいじりだよ。」

そしてこう思う。

「悔しい。悔しい悔しい悔しい。」

 

いろいろと考えさせられる一文でした。

 

 

日系人が主人公の「カブールの園」とは異なり、「あとは野となれ大和撫子」は両親は日本人で転勤で来たものの、両親が爆発に巻き込まれて、みなしごとなった日本人が主人公。

「日本人」が異物のように扱われるシーンは極力最低限になっていて、中央アジアの情勢をあくまでもエンターテイメントとして昇華させたかった、そこだけに焦点を当てたかったのだろうと思います。

 

純文学(芥川賞)好きには「カブールの園」、エンターテイメント(直木賞)好きには「あとは野となれ大和撫子」がおすすめです。どちらの切り口も面白い宮内悠介さんの作品、これからも読んでいきたいと思います。

 

蛇足ですが、上記2作品を読んでて、関連する気がした書籍をいくつか記載し終わりにします。

 

一つ目は、もしアラルスタンという国があったら、という現実とは異なるもう一つの現実を舞台にしたという点で、知念実希人さんの「屋上のテロリスト」です。

 

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 

こちらは、もしポツダム宣言が受託が遅くなり、日本がベルリンのように東西に分裂したら、という舞台の小説です。ジャンルは青春ミステリーでしょうか。

 

 

二つ目は、「あとは野となれ大和撫子」でナツキが言っていた、私はいつかこの地に水を戻したい、ただこの地を干せ上がらせたみたいに、またほかの地域に干害をもたらすかもしれない、チョウの羽ばたきが台風を起こすように、みたいな話から。

ズバリですが、思い出すのはこの映画ですよね。

 

 

そしてPS4のゲームも思い出しましたよ。こちらも名作です。

 

 

 

そして三つ目、後宮(パレス)つながりで、といってもこちらは中国ですが。

 

後宮小説 (新潮文庫)

後宮小説 (新潮文庫)

 

 

もう20年以上も前の作品ですが、とても有名な作品ですね。

 

 

 

そして最後に、「カブールの園」で第二次世界大戦下で日本人が収容されていたマンザナーに訪れるシーンがありますが、こちらもそのマンザナーに収容されていた、従軍になった日本人をテーマに書かれたミステリー。

 

青鉛筆の女 (創元推理文庫)

青鉛筆の女 (創元推理文庫)

 

 

これについては、以前記事で触れました。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

 

こんな感じで、最近読んだ小説同士が、リンクしたように感じる時があります。

そんな時ちょっと楽しくなるのです。

 

蛇足でしたね。

 

では。