読書ノート

札幌在住の26歳。読書が好きで読書感想ブログをちまちま書いています。特に推理小説が好きですが、どんなジャンルの本でも読むように心がけています。おすすめの本は通年募集中です。

「古典部」好きにも「米澤穂信」好きにも必携の一冊。「米澤穂信と古典部」 (角川書店)

今回の読書記録は米澤穂信さんの「米澤穂信古典部」(角川書店)です。

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  「わたし、米澤穂信が気になります...!」となったのは2004年、中学生のころです。僕は地元の小さな本屋さんで「春季限定いちごタルト事件」を手に取ります。しかも表紙の絵が気になったから、という理由で。<古典部>シリーズではありませんでした。春季限定を読みおわり、「米澤穂信っていう作家、面白い!」となった僕が次に読んだのが「さよなら妖精」。マーヤとの出会いが僕を米澤沼へと足を踏み入れるきっかけとなりました。それから「クドリャフカの順番」が刊行されて初めて古典部を読み始めました...。とそういう経緯でございました。

 

 そんなもんで、<古典部>シリーズとの出会いは遅かった僕ですが、いざ読み始めるとめんどくさがり屋な折木くんのキャラクターがとてもはまって、というかしっくりきてしまってこちらのシリーズもまた、虜になってしまいました。その<古典部>シリーズからついにファンブックが発売。映画化記念でしょうか。

 

米澤穂信と古典部

米澤穂信と古典部

 

ある日、大日向が地学講義室に持ち込んだのは、鏑矢中学校で配られていた「読書感想の例文」という冊子。盛り上がる一同に、奉太郎は気が気でない――。
書き下ろし新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」の他、古典部メンバー四人の本棚、著者の仕事場や執筆資料も初公開!
氷菓』以来、米澤穂信と一五年間ともに歩み、進化を続けている〈古典部〉シリーズについて「広く深く」網羅した必読の一冊。


【CONTENTS】
Interview 〈古典部〉シリーズ15年のあゆみ
古典部〉書き下ろし短編 「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」
対談集――北村薫恩田陸綾辻行人大崎梢
著者による〈古典部〉シリーズ全解説
さらにディープな〈古典部〉隠れネタ大公開!
米澤穂信に30の質問 読者編/作家、声優、漫画家編
あなたの本棚見せてください! 古典部メンバー4人の本棚大公開
お仕事場拝見 2017年
『いまさら翼といわれても』刊行密着レポート!
米澤穂信マイルストーン
講演録 物語のみなもと
門外不出の〈古典部〉ディクショナリー

 

僕が愛してやまない米澤穂信さんの<古典部>シリーズのムックが発売されたのですから買わないわけがありません。こういう場合はKindleではなく、紙で買うのが僕の流儀です。

 

ムック自体はやや薄いですが、内容はかなり充実しています。「米澤穂信古典部」というタイトルに疑義あり、というぐらいに。笑

というよりも「米澤穂信」と「古典部」に関するムックなのでしょうね。それぐらい<古典部>シリーズの内容はもちろんのこと、同シリーズの紹介や掌編、豆知識だけではなく、米澤さんの読書遍歴やおすすめ本の紹介、北村薫さんや恩田陸さん、綾辻行人さん、大崎梢さんなどとの対談記事などもかなり詰め込まれています。

「九マイルは遠すぎる」や「戻り川心中」、最近「太宰治の辞書」の刊行でファン歓喜の<円紫さんと私>シリーズの「六の宮の姫君」など(あと初野晴さんの「クロスキューブ」も!!!)自分の書棚にもある珠玉の本たちも紹介していて、ファンブックとしても、ブックガイドとしても使える。最高です。最高です。

 

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

九マイルは遠すぎる (ハヤカワ・ミステリ文庫 19-2)

 

 

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

太宰治の辞書 (創元推理文庫)

 

 

退出ゲーム (角川文庫)

退出ゲーム (角川文庫)

 

 


ちなみに米澤作品ではどれが好きですか?と聞かれるとどれも好きなのでなかなか選べませんが、思い入れのある「さよなら妖精」と山椒のきいた「羊たちの儚い祝宴」でしょうか。あとは変わり種のような正統派のような「折れた竜骨」。古典部が出てこない...(笑) 古典部では短編ですが「連峰は晴れているか」が一番好きかもしれません。

 

 

米澤穂信古典部」を読んだ後、特に気になった作品が、市井豊さんの「聴き屋の芸術学部祭」に収録されている 「からくりツィスカの余命」です。こちらは表題作が第5回ミステリーズ!新人賞の佳作に選ばれており、米澤さんもまた第10回から新人賞の選考委員をされております。

聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

聴き屋の芸術学部祭 (創元推理文庫)

 

 実際に読んでみましたが、物語の結末を考える短編、読んでいる間ただひたすらに楽しかったです。紙芝居風の劇を想像しながら読み進める瞬間、どういう結末がいいんだろうと考える瞬間、結末がわかった瞬間、そして劇中の文章へと戻り読みする瞬間。純粋にワクワクしながら読むことができました。短編っていうのがまたいいですよね、物語が凝縮されているところが。ワクワク果汁100%みたいな感じでした。笑

 

そんなこんなで古典部ファンブックもとい米澤穂信ファンブック、是非お買い求めを。ちなみにkotobaの最新号でも、米澤穂信さんの理想の本棚が紹介されています。合わせてどうぞ。

 

kotoba(コトバ)2017年秋号

kotoba(コトバ)2017年秋号

 

 

 

 

ノーベル賞受賞作家カズオ・イシグロの「日の名残り」「わたしを離さないで」を今更ながら読んだ

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10月5日、カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞しました。

本当に素晴らしいことだと思います。

ノーベル文学賞にカズオ・イシグロさん|まるわかりノーベル賞2017|NHK NEWS WEB

 

くだんのハルキストたちは今年も村上春樹の受賞を期待していたようですが、村上春樹ノーベル賞は相性が悪いはずであるから、今後も受賞はないと思っています。村上春樹氏の作品が悪いというわけではなく、むしろ僕も好んで読んでいますが、村上氏の小説は読者層に普遍的な心理的影響を与え続ける一方で、社会的な影響はというと抽象的すぎて、貢献しているかどうかの判断がつきづらい。とそう思うわけです。

 

そして今回の焦点は、村上氏ではなく、カズオ・イシグロ氏のほうです。

恥ずかしいことながら、「日の名残り」と「わたしを離さないで」を持っていながらにして、わたしはながらく積読状態にしたまま、ノーベル文学賞の発表日を迎えてしまいました。まったく、遺憾であります。まさに忘れられた巨匠の積読の名残がわたしに読ませないで、というわけでございます。意味不明。

 

聞くところによると、Amazonでの注文は急増し、店舗在庫からは姿を消し、図書館は5年待ちだという。ともすれば、わたしが手元に持っているのは、幸運であり、運命であり、また義憤であるわけです。そんな思いもあって、今回この二作を読むことにしました。そして読み終わる。土屋政雄氏の訳が素晴らしかったおかげで、圧倒的なスピードで読み終わってしまいました。そして感慨に耽るわけであります。

 

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 

(以下Amazon 内容紹介より引用) 

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞ブッカー賞受賞作。

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

(以下Amazon内容紹介より引用)

 自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点。解説/柴田元幸

 

 

日の名残り」はリアリズム的回想、「わたしを離さないで」は非リアリズム的回想と真逆の方向に書かれているような小説でしたが、どちらの小説も衝撃的な事実や出来事を淡々と静謐なタッチで徐々に明らかになっていく、その語り部が十分その出来事を咀嚼しつくし、その登場人物たちの内情がそうであることがさもあたりまえであるかのように描かれている。語り部のある種の人格者的な特徴は両作品とも似ているように感じました。

ただ、「日の名残り」の語り部であるスティーブンスについては、一部回想と事実に齟齬が生じるケースがあり、そういう点では咀嚼した結果、事実を理想化、美化してしまっている点があることだけは留意する必要があるかもしれません。

 

 

日の名残り」は過去の栄華な大英帝国時代への郷愁の念、「わたしを離さないで」は縋り付けない普通の生活への憧憬と諦観が、どちらも悲しくも儚くもあり、しかしながらその現実に向き合い続けたひたむきさというのでしょうか、ノーブル(ノーベルではなく)な佇まい。気高くあれ、の精神も感じられました。

 

限られた人生の中で、過去は事実のまま、現実は現実のままに受け入れるべきであるが、苦しい時代も前を向いて歩いていかなければならない。その先にどんな出来事が待ち受けていようとも、進むべき先に未来がある。それは決して希望のある未来ではないかもしれないが、それでも私たちは進むしかないのだ。カズオ・イシグロ氏はそう私たちに訴えかけているのかもしれない、とそう感じたのでした。

 

おわり。

時間が許す限り、これからもよい小説を読んでいきたいものです。

 

 

 

 

 

カツカレーのようなボリューム感たっぷりの本格ミステリ。鮎川哲也賞受賞作、今村昌弘「屍人荘の殺人」

10月も中旬となると気温がぐっと冷える札幌。ストーブとまではいかないまでも、ダウンを着始めるひともちらほらと見かけるようになりました。

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写真はBARISTART COFFEEのアラビカブレンドのエスプレッソ。砂糖をスプーン3杯半ぐらいいれて甘くして、かき混ぜないでそのまま一口で飲み干す。そこに溜まったコーヒー味の砂糖をスプーンですくって食べる。これで元気が出ます。さぁ、本を読むぞ!という気になれるわけです。

 

さて、第27回鮎川哲也賞受賞作となった今村昌弘氏の「屍人荘の殺人」が満を持して刊行ということで早速読ませていただきました。

 

 

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

 

 (Amazon 内容紹介より引用)

たった一時間半で世界は一変した。
全員が死ぬか生きるかの極限状況下で起きる密室殺人。
史上稀に見る激戦の選考を圧倒的評価で制した、第27回鮎川哲也賞受賞作。

神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!! 究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?! 奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!

 

シリーズもののように始まりますが、本作品は初出です。内容紹介では巧みに隠されていますが、本格ミステリの王道クローズドサークルと、ホラーの王道ゾンビのコラボレーションという、カツカレーのような作品となっています。

 

と、ここまでは紫湛荘→屍人荘→ゾンビ荘という連想から想定の範囲内。しかし、ゾンビと戦いながら逃げるバイオハザードのようなホラーミステリかとなめてかかると大やけどする。何せ相手は鮎川哲也賞受賞作。加納朋子氏、北村薫氏、辻真先氏がべた褒めするように、一筋縄ではいかない本格ミステリが待ち受けていたわけです。

 

パンデミックによりゾンビ化した集団から逃げるように別荘に籠城した主人公一行が殺人事件に遭遇する。殺された方法は明らかに人間によるもの、しかし殺された死因は明らかにゾンビによるものであることが明らかとなってくる。こっちをたてればあっちがたたず、あっちをたてればこっちがたたず。そんな状況で次々と殺人事件が発生する。

 

本作の面白いところは、明らかに「ゾンビによる殺人」が発生しているというところ。それでいて、ホワイダニットがおおむね自明であるところでしょうか。すなわち殺された人々は、昨年も別荘に女性を連れてきては酷い扱いをして、自殺や退学に追い込んでいる関係者であり、おそらく彼らに対して強い怒りが殺意へと変わったものによって殺された、という意味でのホワイダニットは、物語中で共通認識である、ということです。ただし、ゾンビに襲われている渦中での殺人、という意味でのホワイダニットは最後の解決編にて明らかにされます。

 

したがって、フーダニット、ハウダニット、真の意味でのホワイダニット、それらのすべてを明らかにしなければならない、という状況下にあったということです。

そしてそれらが全く明らかにならない状態で、物語は90%程終盤へと進んでいくわけです。そこからが怒涛の謎解き。探偵役がハウダニットについて言及、死体損壊のトリックが明らかにされます。そこからの消去法でのフーダニットの解明が美しい。「さて、どちらかな?」というぐらいの追い詰め具合。伏線とも気づかぬ伏線を、数少ない手がかりや言葉の端々をこれでもかというぐらい回収していく流れは見事です。

 

さすがにホワイダニットは犯人の自供による部分が大きかったですが、こちらもなぜ殺したのかが納得せざるを得ない作者の筆力に脱帽しました。ゾンビという奇想天外な状況に置かれた中でのある種の不条理な殺人を、ゾンビがいたからこその殺人理由へと逆手にとって、むしろ昇華させていった、一定の道義に基づく殺人だったと言わせしめた。そこもまた素晴らしかったです。

 

 

(ネタバレを含みます)

一点だけ気になったのは、3人目の殺害の際に利用したコンタクトレンズ用の点眼液。犯人はこれにゾンビの血をいれ、角膜からウイルス感染させたとのことでしたが、どうやって点眼液に血を入れたのか、という点。直接触れれば犯人も感染してしまうことを勘案すると、スポイトや注射針のようなものが必要となるのではないか、と。予め用意していた睡眠薬は固形タイプのものですし、犯人のもちもののなかには注射針のようなものはなかったでしょう。そうすると、キッチンにあるであろう爪楊枝なんかを使ったのでしょうかね。まぁ、そんなことは瑣末なことです。

 

⇒コメントを頂いてから気づきました。容器をからにすれば容器をスポイトのようにして吸い取ることができます。その通りでした。頭が完全に「目薬を中に入れたまま血を吸い取る」という前提から抜け出せていませんでした。ちなみに調べて見たところ、内容液の色がわからない、容器に色のついたスポイト状の点眼液もあるみたいですね。(一般社団法人 日本眼科用剤協会 医療用点眼剤写真一覧より)

 

読み終わった感想ですが、前回の鮎川哲也賞受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」に続き、今作も非常にレベルの高い作品だったなぁと思った次第であります。自分に書けと言われても一生無理な気がしますね。

どちらが良かったかというと難しいところですが、個人的にはバイオハザードなどホラー系は苦手なので、ジェリーに軍配があがるところでしょうか。でも完全に好みの問題で、本格ミステリとしては甲乙つけがたい限りです。

masahirom0504.hatenablog.com

 

鮎川哲也賞は何と言っても加納朋子さんの「ななつのこ」が大大大好きなのですが、相沢沙呼さんの「午前零時のサンドリヨン」、青崎有吾さんの「体育館の殺人」など最近の作品もお気に入りがふえており、ますます本賞に期待を高めるばかりであります。もうすでに来年の大賞が楽しみで仕方ありません・・・・。

 

 

 

体育館の殺人 (創元推理文庫)

体育館の殺人 (創元推理文庫)

 

 

 

 

 

【読書記録】2017年9月の読書数は15冊でした。

おばんです、10月も5日になってしまいました。

 

昨日は十五夜で今日は十六夜の月です。

十五夜過ぎちゃったけど出てもいいかな、とためらいがちなお月様を見ながら秋の夜長はゆったりスピッツを聴きながら読書をしたいなぁ、なんて思うわけです。

 

札幌は昨日は中山峠に雪も積もり、いよいよ冬到来か!と、

いやでもさすがにこの時期にストーブ炊くのは…、の心理戦が今年も繰り広げられております。

 

今月のアイキャッチ画像はCafe Tococheのコーヒーとプリンです。

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札幌市営地下鉄東豊線学園前駅」または東西線東札幌駅」から徒歩10分程度の住宅街の中にできたカフェ。夜はクラフトビールも楽しめます。

 

ちなみに、先月のアイキャッチ画像は「喫茶カルメル堂」の煎茶とサラ・ウォーターズでした。

 

 

さてさて、9月の読書数は以下の通りです。

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9月は出張も多かったこともあって15冊です。

Kindleも持って行ったのですが、東京で友達と遊ぶことが多く、移動中は疲れて寝てしまったので、伸び悩んだ結果ですね笑

 

市川憂人さんの「ブルーローズは眠らない」は前回触れたとおりです。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

あとは、ジェフリー・ディーヴァーさんの「ウォッチ・メイカー」。

こちらの本は、スゴ本でおなじみDain氏がおすすめしており、

徹夜小説『ウォッチメイカー』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

僕もミステリ好きの端くれ、読んでいないなんて恥ずかしいのかもしれない、と思い急いで読ませていただきました。

一作目の「ボーン・コレクター」は以前読んでいたのですが、なかなか積読が多く、先に進まない状況、「きっと読めるはずだ!」と思い切ってシリーズを飛ばして読んでしまいました。

脱帽しました。これでもか、これでもか、と読者の予想をひっくり返し、頭の中をかき回されたような、え、え、え、え???(語彙笑)の連続で、ページをめくる手が止まりませんでした。

上下巻とページ数はそれなりに多いですが、一瞬ですよ一瞬。

これこそ夜の長くなる今時期の夜更かしにぴったりです。

 

 

 

そういえば、今日はノーベル文学賞の発表。

「わたしを離さないで」「日の名残り」などで世界的ベストセラー作家のカズオ・イシグロさんが受賞されたようです。

www3.nhk.or.jp

こちらも所有しているものの、積読中。

大変申し訳ありません。読みます。早急に読ませていただきます。

 

 

10月も張り切ってまいりましょうか。

 

「ブルーローズは眠らない」が面白すぎて僕も眠れなかった。(市川憂人「ブルーローズは眠らない」(東京創元社))

お久しぶりです、こんばんは。

 

 9月の怒涛の東京出張を終え、ようやく札幌で一息。思えば、今月は羊蹄山の登山から始まって、登山⇒札幌⇒東京⇒札幌⇒登山⇒東京⇒札幌⇒ライブ⇒東京⇒札幌(⇒ライブ×2の予定)とインドア派の僕にしてはなかなかハードなスケジュール。

 ちなみに、この間のライブはビッケブランカの、そして今週末はCzecho no RepublicとLOVE PHYCHEDELICOのライブに行ってきます。

 

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 仕事は忙しくないはずなのにあわただしい。しかしそんな中でも読みたい本は絶対読む、というポリシー。今回は、待ちに待った市川憂人さんの「ブルーローズは眠らない」(東京創元社)を読みました。 

ブルーローズは眠らない

ブルーローズは眠らない

 

 (以下Amazon「内容紹介」より引用)
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、〈ジェリーフィッシュ〉事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査してほしいという依頼を受ける。ところが両者との面談の後、施錠された温室内で切断された首が発見される。扉には血文字が書かれ、バラの蔓が壁と窓を覆った堅固な密室状態の温室には、縛られた生存者が残されていた。各種年末ミステリベストにランクインした、『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第2弾!

 

 市川さんは、「ジェリーフィッシュは凍らない」が鮎川哲也賞を受賞してデビューという輝かしい経歴。僕も2016年に読んだ中でもおすすめの本として以前に書かせていただいていますが、最近では珍しく寝食を惜しんで読みたくなる本でした。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

 今年は、「新本格ミステリ」30周年の年ですが、市川さんの作品は第一作が21世紀の「そして誰もいなくなった」と言われたように、本格ミステリに属するものだと思います。そろそろ「新・新本格ミステリ」と謳ってもよいのでは、なんて思ってしまいます。青崎有吾さんと一緒に。

 

 

さて、まだかまだかと発売を期待していた2作目「ブルーローズは眠らない」、発売と同時に紙面での即購入です。

 

 

今回の事件は、前作ジェリーフィッシュ事件の後。遺伝子操作により青いバラの開発した博士が温室内で殺される、しかも状況は密室。この条件だけでわくわくしてしまいます。その密室殺人の謎を解くべく、マリアと漣が再び捜査に動き出す。しかし、捜査むなしく第2の殺人が。

博士は誰に殺されたのか?

密室の謎は?

そして、青いバラの発表はなぜ同時に2つも現れたのか?

 

 

今回もまた寝食を忘れるほどの一気読みでした。完全に夜更かし。

前作はプロローグの後「地上」パートと「ジェリーフィッシュ」パートが交互に語られ、間に意味深長な短い「インタールード」を挟む書き方で、読む側として非常に読み進めたくさせられていましたが、今回も。

「ブルーローズ」パートと「プロトタイプ」パートが交互に描かれ、間に「インタールード」。真実へと着々と迫っていっているような、現在と過去が錯綜するような、疾走感あるサスペンスのような、そんな感じがします。頭の中で、海外の2時間ドラマが流れるように想像されます。

 

そして装丁も美しい。

前作のイメージを踏襲していて、並べると本棚の見栄えもよいです。笑

いや、しかし表紙の絵が我々のミスリードへと一役買っているような…。

 

THE BLUE ROSE NEVER SLEEPS

THE JERRY FISH NEVER FREEZES

 

なんて並べてみたら、どこかの歌詞みたいな。

 

本文にも装丁にも通じる、この理路整然としている感じ。

これが市川ミステリなのかな、と思いました。

 

前作を読んだ方は是非今作も。

前作を読んでいない方は前作も含めて今作も。

 

買ってみてはいかがでしょうか。