読書ノート

札幌在住の26歳。読書が好きで読書感想ブログをちまちま書いています。特に推理小説が好きですが、どんなジャンルの本でも読むように心がけています。おすすめの本は通年募集中です。

一月とクラフトビールと本の話

もう1月も終わろうとしているのですが、年末年始休みが長かったせいでいまだに休みボケをしています。年始から、北海道神宮に初詣(親戚づきあいを避けるために何をお願いするでもなく参拝した)に行き、今年はここ10年で最高の雪質と言われているニセコスノーボードにいき、東京にいき、トマムに行き、インフルエンザになり、とめまぐるしい1ヶ月でした。

そう、インフルエンザにかかりまして、大変辛い一日だったのですが、薬を飲めば途端によくなり、ただただ仕事初めにもかかわらず、有給にめかしこんで夜更かしでモンハンワールドをやり続けるという始末。それで体調がだんだんよくなるのだから難儀なものですね……。今作のモンハンは10年ぶりぐらいにプレイステーション系で出るということでとても楽しみにしていて、当時中学生から高校生だった僕が2,000時間も費やしたゲームの最新作なのだから、インフルエンザを気にしている暇などなく、3日で40時間ぐらいプレイしたのでございました。

 

1月の半ばに東京に行った時は、初台にあるfuzkueという読書喫茶にいってきました。新宿駅から京王新線にのって一駅のところにある初台は、駅を出ると、いわゆる「地元の駅前商店街通り」になっていて、山手線も一駅外側に出ると、街並みもこんなに変わる、東京の変わり早さをまた一つ味わえました。東京は広い。

fuzkueは読書専門のカフェで、注文・お会計以外は基本的に私語禁止、読書人による読書のための喫茶店。料金形態が面白く、飲食代のほかに利用料が取られるのだが、飲食すればするほど、つまり長居すればするほど、利用料は少なくなり最終的にゼロになるシステム。30分でも3時間でも、だいたい2,000円かかる仕組みになっていて、店主の「どうせ同じぐらいのお金払うんだったら、どんどん長居して本読んでってよ」という意気込みが聴こえるようでした。御多分に洩れず、僕も結局4時間ぐらいずっと本を読んでしまいました。良い東京出張。

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本の話。2018年の読書は「(仮)ヴィラ・アーク設計趣旨 -VILLA ARC(tentative)」から始まりました。風変わりなタイトルですが、内容は館もののミステリ。ただし作者の家原英生さんは一級建築士で、館ものミステリも、一般的な「館を利用した殺人のトリック」よりも「館がそのような設計になっている理由」、つまり設計趣旨に重きを置いた作品になっているところが面白かったです。著者略歴にグッドデザイン賞江戸川乱歩賞最終候補が並ぶ違和感から楽しめる作品になっていました。

 

 

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そこからアイスランドミステリへと読書の道は続きます。昨年「湖の男」が話題になった、アーナルデュル・インドリダソンのエーレンデュル警部シリーズの舞台、アイスランド。日本語になっているアイスランドミステリはそんなに多くなくて、今回読んだラグナル・ヨナソンの「雪盲」やヴィクトル・アルナル・インゴウルフソンの「フラテイの暗号」の他には、イルサ・シグルザルドッティルの「魔女遊戯」が挙げられます。(現在未読・積読アイスランドは夏でも平均気温は10度前半ぐらいと一年中涼しい気候も相まって、もの悲しさの残る物語が多く、文章も感情よりも事実を語っているように感じられるのですが、北海道に住んでいるせいか、僕にとってはその物悲しさが心地よく感じ、どハマりしています。いつかアイスランドにいってやるんだ、と心に秘めてTRANSITのアイスランド号(バックナンバー)を買いました。

ちなみに、アイスランド人には苗字がないらしく、ファーストネーム+父親のファーストネーム+ソン(=son、男の場合)orドッティル(=daughter、女の場合)となり、例えばイルサ・シグルザルドッティルの父親は、おそらくシグルザル・なんとかソンになっているはずであり、これもまた面白いですよねぇ。

 

フラテイの暗号 (創元推理文庫)

フラテイの暗号 (創元推理文庫)

 

 

雪盲?SNOW BLIND?

雪盲?SNOW BLIND?

 

 

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自分の中でクラフトビール元年と銘打って、今年は古本とビールのアダノンキやbeer seller sapporoに通い始めました。ある時アダノンキでミステリ談義になったときに、自分のなかで好きな作品傾向を再認識する機会がありました。純文学もSFもエンターテイメントも好きだが何よりミステリが好き。そこまでは自明だったのだけれども、今回はその先。結果、僕はハードボイルドも好きだが、コージーミステリ・日常の謎がもっと好き。大長編よりは、短編集または短編連作の長編のそれが好きだとわかり、そちらのほうへ食指を進める傾向にあるみたいです。昨年末に読んだ「Y駅発深夜バス」や「サーチライトと誘蛾灯」も最高でしたし、今月読んだ「叫びと祈り」(梓崎優)や「七つの海を照らす星」(七河迦南)、「人魚と金魚鉢」(市井豊)しかり、どの作品もべらぼうに面白かったです。東京創元社に感謝。

 

 

叫びと祈り

叫びと祈り

 

  

  

人魚と金魚鉢 (創元推理文庫)

人魚と金魚鉢 (創元推理文庫)

 

 

 

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直近で読んだものが「僕と彼女の左手」(辻堂ゆめ)と「さよなら僕らのスツールハウス」(岡崎琢磨)と「高架線」(滝口悠生)の3作。辻堂さんはデビュー作から読み続けている作家で、心理学的要素を踏まえたストーリー重視のミステリが多いイメージです。最新作の「僕と彼女の左手」もその流れを汲んでいる作品だと感じました。ちなみに辻堂さん、ほとんど同い年なのですが、普段はIT関係の会社で働きながら執筆活動をしているらしく、執筆ペースも決して遅くはないので、本業と副業の二足の草鞋を履く生活スタイルもかっこいいですね。

岡崎琢磨さんは「珈琲店タレーランの事件簿」でのデビューが僕の中でいまだに衝撃に残っている作家でして。「さよなら僕らのスツールハウス」はシェアハウスを舞台にした青春ミステリで、単なるミステリだけではなく住人の人間性を見えてくるんですね。 

僕と彼女の左手 (単行本)

僕と彼女の左手 (単行本)

 

 

さよなら僕らのスツールハウス (角川書店単行本)

さよなら僕らのスツールハウス (角川書店単行本)

 

 

 

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そして、「高架線」の話。普段いわゆる純文学作家の本をあまり読まないのだけれど、急に読みたくなることがあって、「高架線」は表紙に目を引かれて、そしてあらすじの、年季の入ったアパートを中心に描かれていく物語という、物の思念的なところに惹かれて買って読むことにしたのですけれど、読んだ後、買って間違いない本だったと思えるようなとても良い本でした。

先述した「さよなら僕らのスツールハウス」と「高架線」を同じタイミングで読んだ時、幹は全く違うのですけれど、両小説とも集合住宅を中心に、住人の移り変わりを描き、その住宅がなくなるところで物語が終わっていて、勝手に広がりを感じていたり。まったく関係のない小説が偶然繋がる瞬間があるから本を読むのは面白いと思う訳です。

「 高架線」はうまく練られたある種のミステリだというレビューも見ましたけれど、僕としてはむしろ練らずにただただ書き続けた結果このような顛末に落ち着いた、みたいな文章と自由の広がりを感じられるのびのびとした小説のように感じられました。いつか近いうちにこの本は読み直して、また新しい発見をするのだろうと思います。動いていないのに、常に動き続けていて、文は確かに切れているのに、永遠に続いているような繋がりを感じられるような不思議な心地を味わえる小説でしたし、この本に出会えただけで2018年は最高だったと思える一冊でした。

 

高架線

高架線

 

 

滝口悠生、恐るべし。今月はこの一言に、尽きますね。おわり。

 

【読書記録】2017年12月の読書数は28冊&2017年の読書数は327冊でした。

今更ながら、新年あけましておめでとうございます。今年もぼちぼち更新していきます。

今回のアイキャッチ画像はhato coffeeです。イッタラのソーサー&カップが素敵ですね。

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さてさて、昨年の読書記録、年間読書数は327冊にて着地しました。

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正直、一年間でこれだけ読むことができるだなんて思っていませんでした。かなりたくさんの素晴らしい作品との出会いがありました。寝食を削った甲斐がありました。友達からは本当に働いているのか疑われましたが……。笑

 

さて、昨年読んだ本のリストをPDFにしました。ご参考までに。

 

今年の目標は、海外ミステリも積極的に挑戦すること、そして新刊購入も積極的に。その代わり、冊数は気にしない方向でのんびり頑張りたいと思います。今年はやらなければいけないこともいろいろあるので。

 

ではでは。

 

2017年に読んだおすすめの本15冊【ミステリ編】

一年を振り返ると今年はいつもに増して沢山の本を読んだ、読ませていただいた年でした。12月28日時点で325冊。これらの他に漫画や雑誌を読んでいた時間を含めると、一年の何%が読書に費やされていたのだろうと自分でも訝しんでしまいます。果たして一年、僕は社会人としてしっかり働いていたのだろうか、友達とのコミュニケーションはとっていただろうか、と。

今年は、例年のブックオフでの古本大量買いに加えて、Kindleでの電子書籍の乱読、そして例年以上に新刊の単行本を買った年でもありました。そのおかげか、本を置くスペースがなくなっては、本棚をDIYしたり、無印良品の本棚を書い足したりと、図書スペースはかなり増設されました。が、まだまだ入りきらない本がたくさんあるという……。この一進一退の攻防はいつまで続くのでしょうか。

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さて、今年読んだ本の中でも、2017年に発刊されたミステリ要素を含むものに絞っておすすめ本を10冊紹介します。前回のブログで書いた「ミステリランキング誌比較」のブログや300booksさんのランキングともかぶるところが多々ありますが、ご了承くださいませ。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

300books.net

 

 

 

1位 今村昌弘「屍人荘の殺人」(東京創元社

各誌ミステリランキングでも1位総なめの本格推理小説

僕の中でも圧倒的1位でした。

SF要素が含まれたストーリーの中で、あくまでもなんでもありな世界ではなく、この特殊な世界だからこそできる限られた殺人を、見事に作り上げた論理性もぴかいちでした。

フーダニットとハウダニットを理論づくめで伏線回収していくときの爽快感、そしてホワイダニットの納得感。

言わずもがな、最高傑作でした。 

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

 

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2位 辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社

稀代のストーリーテラー辻村深月さんの最高傑作と言うしかないでしょう!という本作品。

300booksさんとは、逆の順位となってしまいましたが、「屍人荘の殺人」と甲乙つけがたいほど素晴らしい作品でした。なんなら両者1位でいいぐらい!笑

ミステリ要素は強くないですが、それがかえってミステリ好きだけではなく、老若男女問わずすべての人に、すべての家族に、すべての子どもに読んでもらいたい作品だと思いました。

文量を少なくして絵本にするのもいいんじゃないかなぁ、と思えるぐらい優しいファンタジーミステリです。 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

  

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3位 陳浩基「13・67」(文藝春秋

お恥ずかしいことに、各種ミステリランキングが出てから急いで読みました。

香港警察のクワンとローの師弟コンビが難事件を解決していく連作短編の警察ミステリなのですが、あくまでもサスペンスではなく本格推理小説。それも6編どの短編をとっても緻密に作られた最高傑作のミステリであるだけでなく、時代を遡及して描かれる6編が最後につながる瞬間、そしてその余韻がなんとも味わい深いのです。

また、この逆年代記は単なる推理小説としてだけではなく、実在する香港警察の転換期にあたる出来事や歴史なども学ぶことができる、一石二鳥一挙両得な社会派ミステリでもあります。

かなり文量が多く、読み切るには時間がかかりますが、各章を読んだ時の読後感、そして全章読んだ時の読後感、是非とも味わってみるべきです。海外小説の中では断トツの納得の一位です。

13・67

13・67

 

 

 4位 アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」(東京創元社

お次も海外小説。アイスランドを舞台にしたエーレンデュル警部シリーズ最新作です。エーレンデュル警部シリーズは、本格ミステリというよりはサスペンスのカテゴリ、しかも派手なアクションなどはなく、むしろ殺人事件や見つかった死体から、悲しい歴史や過去を掘り起こしていく、静のミステリなので、好き嫌いが分かれるかもしれません。

ただ、僕が北海道出身、北海道在住なせいか、この冷たく悲しいアイスランド小説にかなり傾倒してしまっています。アイスランドは日本と同じぐらい犯罪発生率が低く、また北海道とほぼ同じぐらいの大きさで、北海道でいう大都市札幌とアイスランドでいう大都市レイキャビクはほぼ同じ場所にあり、寒さはかなり違うとはいえ寒い地域に存在している、そんな共通点が肌感覚であっているのかもしれません。

「湖の男」は、湖で見つかった年代不明の白骨死体から、第二次世界大戦後の冷戦時の動乱が紐解かれていきます。本シリーズの読後感は、決して気持ちの良いものではありませんし、文章はかなりドライ(それがむしろ好きなのですが)につづられています。しかし、それらすべてが相まった寂寥感がなんとも味わい深いものになっています。

そして、アイスランドの旅行ガイドと一緒に読んでいた僕は、「いつかアイスランドにいってやる!」と決意したのでした。 

湖の男

湖の男

 

 

 

5位 相沢沙呼「マツリカ・マトリョシカ」(KADOKAWA

廃墟ビルに住む謎の美女マツリカさんと彼女にこき使われる男子高校生、柴犬こと柴山くんの青春ミステリシリーズ第3弾、今回は女子生徒の制服盗難事件解決のために密室の謎を解く、前作からさらにパワーアップした本格ミステリでかなりの傑作でした。

なぜ各誌ランキングに名乗り出ていないのか不思議なぐらいです。ジュブナイル小説らしい、スピード感あるストーリー展開と秀逸なプロットは、読者のめくる手が止まりないこと間違いなしです。

読み終わった後の、楽しい気分、そしてもう次の作品を読みたくなる中毒性MAXな作品です。

 

 

6位 似鳥鶏「彼女の色に届くまで」(KADOKAWA

画廊の息子で画家を目指す主人公、緑川礼の生活は、千坂桜という一人の少女に出会って一変する。デッサンの仕方もろくに知らなかった彼女は絵を覚え始めるやいなや天才画家へと昇り詰めていく。そしてその間で出会った数々の不可解な出来事。彼女は有名な絵画をヒントに真実を紐解いていく、という美術ミステリです。

最初は高校生活から、大学生活、そして社会人へ場面は移り変わり成長していく彼らを描く連作短編集は、ただそれだけでは終わらない、最後にどんでん返しが待っています。 

ミステリとしても面白いし、美術に疎い僕にはとてもためになった本作。シリーズ化は難しいだろうけど、してくれないかなと願ってしまうぐらいに最高な作品でした。

彼女の色に届くまで

彼女の色に届くまで

 

 

7位 櫻田智也「サーチライトと誘蛾灯」(ミステリ・フロンティア

表題作「サーチライトと誘蛾灯」でミステリーズ!新人賞を受賞した作家の短編集。

「サーチライトと誘蛾灯」「ホバリング・バタフライ」「ナナフシの夜」「火事と標本」「アドベントの繭」の5編からなる昆虫採集ミステリ(?)なのですが、主人公にて探偵役のえり(魚へんに入ると書いて)沢くんの脱力とぼけ具合がとてもいい味を出しています。短編の長さもちょうどよくて、寝る前のひとときを楽しく飾ってくれること間違いなしなおすすめの一冊です。

 

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)

 

 

8位 青木知己「Y駅発深夜バス」(ミステリ・フロンティア

表題作「Y駅発深夜バス」を含め、「猫矢来」「ミッシング・リング」「九人病」「特急富士」の5編からなる本格ミステリ短編集。

ミステリ・ショーケースとの帯の通り、本格トリック、青春ミステリ、読者への挑戦、怪奇ミステリ、特急ミステリなど、作者渾身の作品集となっており、またどの作品も面白く読み進める手が止まりませんでした。表題作が書かれたのが2003年であり、14年間かけて作り出した一冊というのだから、面白いこと間違いなしです。

 

Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)

Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)

 

 

9位 フランシス・ハーディング「嘘の木」(東京創元社

博物学者である父の世紀の大発見が捏造と噂されヴェイン島へ移住した一家。そんな中で父親が不審な死を遂げる。自殺として処理されようとしている中で、博物学者を目指す娘のフェイスだけが、父は誰かに殺されたのだと確信し犯人を捜す。嘘を糧に実を結ぶ「嘘の木」を利用して犯人を暴いていく、というミステリというよりは少女の望遠活劇ファンタジー。

この作品はコスタ賞大賞および同児童文学部門賞を受賞しているのですが、「嘘」や人間の汚い部分がかなり全面に出たこの作品のテーマや内容はかなり重く、海外の児童文学はこんなものも読むのかと驚いてしまうぐらいでした。

しかし裏返せば、大人が読んでも楽しめるということにほかなりませんので、是非ご一読を。 

嘘の木

嘘の木

 

 

10位 逸木裕「少女は夜を綴らない」(KADOKAWA

前作かつデビュー作「虹を待つ彼女」にて横溝正史ミステリ大賞を受賞した作者の最新作。 加害恐怖を持つ少女は、対症療法として「殺人ノート」を綴り続ける。偶然それを読んだ少年が殺人計画を手伝ってほしいと少女に依頼する。自分を受け入れ、そして羨望する少年の態度に、協力しエスカレートしていく、殺人計画の行方は。

突飛ながらにあるかもしれないと思わせるストーリー展開や伏線の回収、さわやかな読後感、どこをとっても素晴らしい作品でした。

少女は夜を綴らない

少女は夜を綴らない

 

 

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11位 市川憂人「ブルーローズは眠らない」(東京創元社

こちらも、前作かつデビュー作「ジェリーフィッシュは凍らない」で鮎川哲也賞を受賞した作者の最新作。前回に引き続き寝食を忘れさせる本格ミステリ作品でした。 

詳しくは過去記事を。 

ブルーローズは眠らない

ブルーローズは眠らない

 

 

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12位 井上真偽「探偵が早すぎる」(講談社タイガ

 大富豪の父の死をきっかけに莫大な遺産を手にした女子高生を殺そうと次々と送り込まれる刺客たち。彼らは次々と「完全犯罪」を仕組んでいく。しかし、一人の探偵によって、完全犯罪は発生後どころか、殺人計画がスタートする前に次々とトリックが暴かれていく、というそんなストーリーあるか!と突っ込みたくなるような物語。

そんなのあり?な突飛な物語に追随する怒涛の展開とトリック潰しはページをめくる手を一時たりとも止めません。こんな面白い物語はこの人にしか書けないだろうなぁ、と開いた口がふさがりませんでした。笑

 

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 

13位 辻堂ゆめ「悪女の品格」(ミステリ・フロンティア

「いなくなった私へ」でこのミス大賞優秀賞を受賞した作者が、満を持して東京創元社から出した作品。作風やストーリー展開が個人的に好きな作者の最新作です。

脅迫にあう主人公の"悪女"めぐみがマンションの物置で目を覚ますところから始まる本作は、誰が犯人か、動機は何かという犯人あてのミステリであるとともに、悪女になり切れない中途半端な悪女であるめぐみの、勝手ながらも心温かくなるストーリーを味わえます。

心情からアプローチする血の通ったミステリこそ辻堂作品の真骨頂なのかな、と楽しく読める作品です。 

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

 

 

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14位 似鳥鶏「モモンガの件はおまかせを」(文春文庫)

 ラストは二回目の登場似鳥鶏さんの動物園シリーズ第4弾です。かなり癖のあるキャラクターに対して、動物に関連する重たい現実を扱う本シリーズですが、今回もかなり重たいです。そのテーマを書いてしまうとネタバレになってしまうのですが、動物とはペットとはといろいろ考えさせられるミステリです。

逆に言えば、そんな思いテーマで面白おかしく読ませてくださる似鳥さんの筆力が素晴らしいということに他なりません。ペットを飼っている方々やこれからペットを飼おうとしている方々にぜひとも読んでもらいたい作品かなと思います。 

モモンガの件はおまかせを (文春文庫)

モモンガの件はおまかせを (文春文庫)

 

 

  

 

 

以上、2017年のミステリ総括でした。やっぱり東京創元社が多めで偏りのある僕の読書記録を如実にあらわしたランキングになったな、と思う次第でございます。

ハヤカワが全く出てきていないのが意外でした。

来年はどんなミステリが待っているのでしょうか。

楽しみで仕方ないです。

 

ではでは。

 

【2017年版】4誌ミステリランキングを総括してみました。

12月も中頃となり、年末までもうあと2週間なんて早いものですね。

今回は、毎年12月のお楽しみミステリランキングを総括してみました。対象としたミステリランキングは、「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」「週刊文春ミステリーベスト10」です。

 

まず、上位10作品を集計した結果が以下のとおりです。

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青字が4誌で入賞、以下、赤字が3誌、緑字が2誌、黒字が単独となっています。

 

■他誌とのかぶり

他誌との関連(かぶり)については、国内小説は「このミステリーがすごい!」の9冊かぶり、海外小説は「週刊文春ミステリーベスト10」の9冊かぶりが最大でした。

 国内小説については、2誌かぶりの作品①古処誠二「いくさの底」、②山本巧次「開化鐵道探偵」はいずれもハヤカワ「ミステリが読みたい!」との2誌入賞で、これはアンケートの回答者かぶり(直井明さん、郷原宏さん、小山正さん、若林踏さん、慶應義塾大学推理小説同好会)が一つの要因でしょうか。もちろん回答者かぶりはこの2冊に限りませんし、この5名に限りません。また③辻村深月かがみの孤城」、④柚月裕子「盤上の向日葵」はいずれも「週刊文春ミステリーベスト10」との2誌入賞で、これは2誌の"ミステリー"の範囲がほかの2誌の"ミステリ"の範囲よりも広義であることから入賞したものと考えられます。なお、ダ・ヴィンチの小説ランキング1位は③辻村深月かがみの孤城」となっています。

 海外小説については、要因は調査中です。ただ、「本格ミステリ・ベスト10」は「本格」が国内発となっている点や、ページ数の配分から見ても、海外小説はおざなりな傾向にあるように見えます。

 

■対象作品の期間

今年の人気作「屍人荘の殺人」「13・67」「ミステリー・クロック」がハヤカワ「ミステリが読みたい!」にてランク外となっていますが、これはハヤカワの対象期間が他誌に対して1ヶ月ずれているためです。(2016年10月〜2017年9月)

 

「13・67」:2017年9月30日刊行

「屍人荘の殺人」:2017年10月13日刊行

「ミステリークロック」:2017年10月20日刊行

 

「13・67」はぎりぎり9月刊行ですが、回答者に対して対象作品を全て読んだ上で回答することを求めているわけではないので、対象期間ぎりぎりの奥付となれば、読んだ回答者も少なかったのでしょう。

 不運なことに今回は9月末、10月に良い作品が沢山刊行されてしまいました。上記のうち2作品は来年度の「ミステリが読みたい!」の対象作品となりますが、そこで2作品がランクインしても今更感は否めないでしょう。

 

 ■「ミステリー」と「ミステリ」、そして「本格」

 「本格ミステリ・ベスト10」は、他誌と比べて「本格」の条件があるためか、母集団が少なく上位10作品に得票率が固まる傾向があるようです。特に1位の「屍人荘の殺人」333票、「13・67」218票は、2位の得票率と比べてもかなりの差があり、「本格」ゆえにプロットのロジックの美しさなど回答者の軸がある程度一定なのが伺えます。一方、他誌で人気の「フロスト始末」や「機龍警察 狼眼殺手」は、本格外(サスペンス寄り)のため、ランクインならずと、良くも悪くも、母集団の狭さが現れています。

 

■集計に基づく読むべき作品

調整項目(刊行の時期、対象範囲)を踏まえた4誌(ほぼ)掲載の、ミステリ好きがマストで読んでおく作品はこんな感じでしょうか。


【国内編】
・今村昌弘「屍人荘の殺人」東京創元社
伊坂幸太郎「ホワイトラビット」新潮社
有栖川有栖「狩人の悪夢」KADOKAWA
月村了衛「機龍警察 狼眼殺手」早川書房
貴志祐介「ミステリークロック」KADOKAWA

 

【海外編】
・R・D・ウィングフィールド「フロスト始末」創元推理文庫
・陳浩基「13・67」文藝春秋
・ケイト・モートン「湖畔荘」東京創元社
・ビル・ビバリー「東の果て、夜へ」ハヤカワ文庫
・ヴィエト・タン・ウェン「シンパサイザー」早川書房

 

ちなみにあげた作品のうち僕が読んだものは「屍人荘の殺人」と「ミステリークロック」、買っているけど読んでないものは「フロスト始末」と「13・67」です。全然読めてないですね...(笑) シリーズものだとどうしても最初から読みたくなるので最新刊にたどり着くまで時間がかかったりするのが原因だと言い訳しておきます。読めていない作品は年末年始を使って読もうかと思います。

 

今年もあと少しですが、最後まで読書を楽しみましょう!

 

2017年、個人的に今年買って良かったもの

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初めてのお題、ほかの人のブログを読んでいて、自分も今年一年いっぱい買ったな(半分以上はAmazonのお世話になったな)と思いながら、備忘録的に自分なりに買ってよかったものをまとめてみる。

 

セイコークロック KS474M

セイコー クロック 掛け時計 アナログ 防塵型 オフィスタイプ 金属枠 薄緑 KS474M SEIKO

セイコー クロック 掛け時計 アナログ 防塵型 オフィスタイプ 金属枠 薄緑 KS474M SEIKO

 

 オフィスタイプの防塵型クオーツ掛け時計。前にフランフランで買った時計が電波時計なのに、常に15分ずれ続けていたのに嫌気がさして購入。居間と寝室が一続きなので時計のチクタクの音が気になっていたけれど、この時計はスイープセコンドなので静かに時を刻んでくれる。防塵機能なんて室内使いなら必要ないけれども、静かに、でも確かにそこにある絶妙な存在感がインテリアに一役買ってくれる。

 

②Anker SoundCore 2 

 家にいる時間が長いから音楽をかけたくなることが結構ある。でも本格的なものじゃなくていい、と思って買ったものがこれ。5,000円という低価格のわりにいい音を奏でてくれる。本体が414gかなり軽量で軽い水濡れにも耐えられるから、野外フェスやキャンプにも持ってこい。個人的には、キッチンカウンターとテーブルの間のわずかな隙間にはまってくれる存在感のなさが一押しのポイント。

 

③マウンテンハードウェア スクランブラーRT20 

 今年は会社の同僚と登山に行く機会もあって、ザックを新調した。日帰り登山を想定して、20Lぐらいあれば十分だろうという想定で探していた中で出会ったのがこれ。もともとマウンテンハードウェアの製品はよく使っていたので、ブランド品質は疑っていなかったし、雨除けのカバーがいらないミニマムさが自分の好みにしっくり来た。ロールトップの締め方次第ではフードに干渉する点とサイドポケットへのアクセスの悪さ(腕が短いせい?)はあるけれど、それを差し引いてもバランスよく使えて低価格。エントリーモデルとしては最適なんじゃないかと自分では思っている。

 

 ④iRobot ルンバ622

【国内正規品】 iRobot ロボット掃除機 ルンバ 622 ホワイト

【国内正規品】 iRobot ロボット掃除機 ルンバ 622 ホワイト

 

 今更ルンバかよという感じだけれども、自分にとっては冒険だった。そして一番安い冒険は成功だった。布団に大量の服と大量の本、とホコリが発生しやすい環境。もともと掃除機はかけていたけれど、ダイソンも驚くぐらいにホコリを集めてくれる。iPhoneの充電コードを断線させたり、玄関から転落したりとオチャメな一面も見せてくれるが、彼女(彼?)のために、床にものを置かなくしようと努力する。掃除そのものだけでなく、片付け方や消費行動まで改めさせてくれる立役者。一人暮らしはエントリーモデルで十分でした。

 

⑤Udemy(ユーデミー)

www.udemy.com

 

もの、というかコト。忙しく働いていると、定期的にテニススクールに通ったり、ダブルスクールをしたり、コースのスケジュールに時間を合わせるのが難しくなる、というか面倒くさくなる。オンライン学習講座ならスキマ時間を当てられるし、Udemyなら買い切りだから、一度買っておけば聞いてもいない月の年会費を払う必要もない。結構な頻度で90%オフで買い切れるので、講座の信頼度はともかくちょっとした自己学習にはピッタリかも。

 

 ⑥ニッカ カフェジン

ニッカ カフェジン 瓶 700ml

ニッカ カフェジン 瓶 700ml

 

 今、スピリッツ市場がかなり熱い。中でもニッカのカフェシリーズは格別においしい。ニッカウヰスキーが持つ伝統的な連続式蒸溜機「カフェスチル」で生産されている。難しいことはよくわからないけれど、スピリッツなんてただ辛いものという認識を改めさせてくれた。「和柑橘の爽やかな香りと山椒のスパイシーな香りが調和。コクを感じさせる甘い口当たり、ボタニカル由来の香りが広がり重なり合う複雑な味わい」が口いっぱいに広がる。(と説明文に書いてあった。自分ではここまで表現できない)とてもおいしい。ありがとうニッカ。

 

 

 ⑦NieR Automata

ニーア オートマタ - PS4

ニーア オートマタ - PS4

 

ラストはこれ、ニーアオートマタ。荒廃した惑星で繰り広げられる機械生命体とアンドロイドの戦いの記録。人類とは、感情とは、真実とは。ニーアレプリカントの続編の立ち位置だが、前作を知らなくても十分に楽しめる。感覚的に楽しめるアクションはもちろんだけれども、物語・世界観がとてつもなく素晴らしく深い。ゲームをクリアしてから、攻略本(設定資料集)を買い、ノベライズを買い、サントラを買い、コンサートDVDを買い、もう少しでレコードが届く。こんなにドはまりしたゲームは久しぶりで、みんなでこのディストピア感を語り合おうじゃないか。 

 

 

という感じで、2017年のベストバイでした。いや、もっと早く前から買えただろとか、ジャンル偏りすぎだろとか、いろいろあるかと思うけれど、備忘録という建付けを大事にして、来年もたくさん物欲を開放していきたいですね。IoT家電とかドラム式洗濯機とかほしいものは尽きないですが、この辺で。