2017年に読んだおすすめの本15冊【ミステリ編】
一年を振り返ると今年はいつもに増して沢山の本を読んだ、読ませていただいた年でした。12月28日時点で325冊。これらの他に漫画や雑誌を読んでいた時間を含めると、一年の何%が読書に費やされていたのだろうと自分でも訝しんでしまいます。果たして一年、僕は社会人としてしっかり働いていたのだろうか、友達とのコミュニケーションはとっていただろうか、と。
今年は、例年のブックオフでの古本大量買いに加えて、Kindleでの電子書籍の乱読、そして例年以上に新刊の単行本を買った年でもありました。そのおかげか、本を置くスペースがなくなっては、本棚をDIYしたり、無印良品の本棚を書い足したりと、図書スペースはかなり増設されました。が、まだまだ入りきらない本がたくさんあるという……。この一進一退の攻防はいつまで続くのでしょうか。
さて、今年読んだ本の中でも、2017年に発刊されたミステリ要素を含むものに絞っておすすめ本を10冊紹介します。前回のブログで書いた「ミステリランキング誌比較」のブログや300booksさんのランキングともかぶるところが多々ありますが、ご了承くださいませ。
1位 今村昌弘「屍人荘の殺人」(東京創元社)
各誌ミステリランキングでも1位総なめの本格推理小説。
僕の中でも圧倒的1位でした。
SF要素が含まれたストーリーの中で、あくまでもなんでもありな世界ではなく、この特殊な世界だからこそできる限られた殺人を、見事に作り上げた論理性もぴかいちでした。
フーダニットとハウダニットを理論づくめで伏線回収していくときの爽快感、そしてホワイダニットの納得感。
言わずもがな、最高傑作でした。
2位 辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社)
稀代のストーリーテラー、辻村深月さんの最高傑作と言うしかないでしょう!という本作品。
300booksさんとは、逆の順位となってしまいましたが、「屍人荘の殺人」と甲乙つけがたいほど素晴らしい作品でした。なんなら両者1位でいいぐらい!笑
ミステリ要素は強くないですが、それがかえってミステリ好きだけではなく、老若男女問わずすべての人に、すべての家族に、すべての子どもに読んでもらいたい作品だと思いました。
文量を少なくして絵本にするのもいいんじゃないかなぁ、と思えるぐらい優しいファンタジーミステリです。
3位 陳浩基「13・67」(文藝春秋)
お恥ずかしいことに、各種ミステリランキングが出てから急いで読みました。
香港警察のクワンとローの師弟コンビが難事件を解決していく連作短編の警察ミステリなのですが、あくまでもサスペンスではなく本格推理小説。それも6編どの短編をとっても緻密に作られた最高傑作のミステリであるだけでなく、時代を遡及して描かれる6編が最後につながる瞬間、そしてその余韻がなんとも味わい深いのです。
また、この逆年代記は単なる推理小説としてだけではなく、実在する香港警察の転換期にあたる出来事や歴史なども学ぶことができる、一石二鳥一挙両得な社会派ミステリでもあります。
かなり文量が多く、読み切るには時間がかかりますが、各章を読んだ時の読後感、そして全章読んだ時の読後感、是非とも味わってみるべきです。海外小説の中では断トツの納得の一位です。
4位 アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」(東京創元社)
お次も海外小説。アイスランドを舞台にしたエーレンデュル警部シリーズ最新作です。エーレンデュル警部シリーズは、本格ミステリというよりはサスペンスのカテゴリ、しかも派手なアクションなどはなく、むしろ殺人事件や見つかった死体から、悲しい歴史や過去を掘り起こしていく、静のミステリなので、好き嫌いが分かれるかもしれません。
ただ、僕が北海道出身、北海道在住なせいか、この冷たく悲しいアイスランド小説にかなり傾倒してしまっています。アイスランドは日本と同じぐらい犯罪発生率が低く、また北海道とほぼ同じぐらいの大きさで、北海道でいう大都市札幌とアイスランドでいう大都市レイキャビクはほぼ同じ場所にあり、寒さはかなり違うとはいえ寒い地域に存在している、そんな共通点が肌感覚であっているのかもしれません。
「湖の男」は、湖で見つかった年代不明の白骨死体から、第二次世界大戦後の冷戦時の動乱が紐解かれていきます。本シリーズの読後感は、決して気持ちの良いものではありませんし、文章はかなりドライ(それがむしろ好きなのですが)につづられています。しかし、それらすべてが相まった寂寥感がなんとも味わい深いものになっています。
そして、アイスランドの旅行ガイドと一緒に読んでいた僕は、「いつかアイスランドにいってやる!」と決意したのでした。
5位 相沢沙呼「マツリカ・マトリョシカ」(KADOKAWA)
廃墟ビルに住む謎の美女マツリカさんと彼女にこき使われる男子高校生、柴犬こと柴山くんの青春ミステリシリーズ第3弾、今回は女子生徒の制服盗難事件解決のために密室の謎を解く、前作からさらにパワーアップした本格ミステリでかなりの傑作でした。
なぜ各誌ランキングに名乗り出ていないのか不思議なぐらいです。ジュブナイル小説らしい、スピード感あるストーリー展開と秀逸なプロットは、読者のめくる手が止まりないこと間違いなしです。
読み終わった後の、楽しい気分、そしてもう次の作品を読みたくなる中毒性MAXな作品です。
マツリカ・マトリョシカ 「マツリカ」シリーズ (角川書店単行本)
- 作者: 相沢沙呼
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
6位 似鳥鶏「彼女の色に届くまで」(KADOKAWA)
画廊の息子で画家を目指す主人公、緑川礼の生活は、千坂桜という一人の少女に出会って一変する。デッサンの仕方もろくに知らなかった彼女は絵を覚え始めるやいなや天才画家へと昇り詰めていく。そしてその間で出会った数々の不可解な出来事。彼女は有名な絵画をヒントに真実を紐解いていく、という美術ミステリです。
最初は高校生活から、大学生活、そして社会人へ場面は移り変わり成長していく彼らを描く連作短編集は、ただそれだけでは終わらない、最後にどんでん返しが待っています。
ミステリとしても面白いし、美術に疎い僕にはとてもためになった本作。シリーズ化は難しいだろうけど、してくれないかなと願ってしまうぐらいに最高な作品でした。
7位 櫻田智也「サーチライトと誘蛾灯」(ミステリ・フロンティア)
表題作「サーチライトと誘蛾灯」でミステリーズ!新人賞を受賞した作家の短編集。
「サーチライトと誘蛾灯」「ホバリング・バタフライ」「ナナフシの夜」「火事と標本」「アドベントの繭」の5編からなる昆虫採集ミステリ(?)なのですが、主人公にて探偵役のえり(魚へんに入ると書いて)沢くんの脱力とぼけ具合がとてもいい味を出しています。短編の長さもちょうどよくて、寝る前のひとときを楽しく飾ってくれること間違いなしなおすすめの一冊です。
8位 青木知己「Y駅発深夜バス」(ミステリ・フロンティア)
表題作「Y駅発深夜バス」を含め、「猫矢来」「ミッシング・リング」「九人病」「特急富士」の5編からなる本格ミステリ短編集。
ミステリ・ショーケースとの帯の通り、本格トリック、青春ミステリ、読者への挑戦、怪奇ミステリ、特急ミステリなど、作者渾身の作品集となっており、またどの作品も面白く読み進める手が止まりませんでした。表題作が書かれたのが2003年であり、14年間かけて作り出した一冊というのだから、面白いこと間違いなしです。
9位 フランシス・ハーディング「嘘の木」(東京創元社)
博物学者である父の世紀の大発見が捏造と噂されヴェイン島へ移住した一家。そんな中で父親が不審な死を遂げる。自殺として処理されようとしている中で、博物学者を目指す娘のフェイスだけが、父は誰かに殺されたのだと確信し犯人を捜す。嘘を糧に実を結ぶ「嘘の木」を利用して犯人を暴いていく、というミステリというよりは少女の望遠活劇ファンタジー。
この作品はコスタ賞大賞および同児童文学部門賞を受賞しているのですが、「嘘」や人間の汚い部分がかなり全面に出たこの作品のテーマや内容はかなり重く、海外の児童文学はこんなものも読むのかと驚いてしまうぐらいでした。
しかし裏返せば、大人が読んでも楽しめるということにほかなりませんので、是非ご一読を。
10位 逸木裕「少女は夜を綴らない」(KADOKAWA)
前作かつデビュー作「虹を待つ彼女」にて横溝正史ミステリ大賞を受賞した作者の最新作。 加害恐怖を持つ少女は、対症療法として「殺人ノート」を綴り続ける。偶然それを読んだ少年が殺人計画を手伝ってほしいと少女に依頼する。自分を受け入れ、そして羨望する少年の態度に、協力しエスカレートしていく、殺人計画の行方は。
突飛ながらにあるかもしれないと思わせるストーリー展開や伏線の回収、さわやかな読後感、どこをとっても素晴らしい作品でした。
11位 市川憂人「ブルーローズは眠らない」(東京創元社)
こちらも、前作かつデビュー作「ジェリーフィッシュは凍らない」で鮎川哲也賞を受賞した作者の最新作。前回に引き続き寝食を忘れさせる本格ミステリ作品でした。
詳しくは過去記事を。
12位 井上真偽「探偵が早すぎる」(講談社タイガ)
大富豪の父の死をきっかけに莫大な遺産を手にした女子高生を殺そうと次々と送り込まれる刺客たち。彼らは次々と「完全犯罪」を仕組んでいく。しかし、一人の探偵によって、完全犯罪は発生後どころか、殺人計画がスタートする前に次々とトリックが暴かれていく、というそんなストーリーあるか!と突っ込みたくなるような物語。
そんなのあり?な突飛な物語に追随する怒涛の展開とトリック潰しはページをめくる手を一時たりとも止めません。こんな面白い物語はこの人にしか書けないだろうなぁ、と開いた口がふさがりませんでした。笑
13位 辻堂ゆめ「悪女の品格」(ミステリ・フロンティア)
「いなくなった私へ」でこのミス大賞優秀賞を受賞した作者が、満を持して東京創元社から出した作品。作風やストーリー展開が個人的に好きな作者の最新作です。
脅迫にあう主人公の"悪女"めぐみがマンションの物置で目を覚ますところから始まる本作は、誰が犯人か、動機は何かという犯人あてのミステリであるとともに、悪女になり切れない中途半端な悪女であるめぐみの、勝手ながらも心温かくなるストーリーを味わえます。
心情からアプローチする血の通ったミステリこそ辻堂作品の真骨頂なのかな、と楽しく読める作品です。
14位 似鳥鶏「モモンガの件はおまかせを」(文春文庫)
ラストは二回目の登場似鳥鶏さんの動物園シリーズ第4弾です。かなり癖のあるキャラクターに対して、動物に関連する重たい現実を扱う本シリーズですが、今回もかなり重たいです。そのテーマを書いてしまうとネタバレになってしまうのですが、動物とはペットとはといろいろ考えさせられるミステリです。
逆に言えば、そんな思いテーマで面白おかしく読ませてくださる似鳥さんの筆力が素晴らしいということに他なりません。ペットを飼っている方々やこれからペットを飼おうとしている方々にぜひとも読んでもらいたい作品かなと思います。
以上、2017年のミステリ総括でした。やっぱり東京創元社が多めで偏りのある僕の読書記録を如実にあらわしたランキングになったな、と思う次第でございます。
ハヤカワが全く出てきていないのが意外でした。
来年はどんなミステリが待っているのでしょうか。
楽しみで仕方ないです。
ではでは。