佐藤航陽「お金2.0」/落合陽一「日本再興戦略」(Newspicksbooks)
最近Newspicksbooksから出版される書籍が、Kindleの上位によく上がっています。
なるべくベストセラーになっている書籍は読むようにしようと心がけているので、今回は佐藤航陽さんの「お金2.0」と落合陽一さんの「日本再興戦略」を読みました。自分用のメモも含めて、気になったところをピックアップ。
「お金2.0」は、最近ICOによる資金調達で話題になっていた、メタップスの代表取締役の描くこれからの「お金」についての本です。この本では、資本主義が限界を露呈し始め、いわゆる今までの「お金」の価値尺度を超える、新しい「お金」の概念を踏まえて、価値主義へと移り変わっていくことを示唆していました。
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
- 作者: 佐藤航陽
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/11/29
- メディア: Kindle版
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実際に私たちが生活している経済は少なくとも2つの性質の異なる経済が混ざり合ってできています。労働して給料もらい、コンビニに行ってお金を払うと言う一般的な経済は「消費経済(実体経済)」と呼ばれています。大半の人はこの経済の中で生きているはずです。もう一つが、お金からお金を生み出す経済、これは「資産経済(金融経済)」と区別されています。こちらの経済をメインに生きている人は資産家や金融マンなどのごく一部の人たちです。ただ、世の中に流通しているお金の流れの9割近くは資産経済のほうで生まれています。
人間の生活に必要なお金というのは極めて少額だと思います。仮想通貨を含めた投資・投機にかかる支出がほとんどです。昔は家計を判断する材料として、エンゲル計数が使われてきましたが、これから個人の支出に占める割合は、どんどん広い意味での「娯楽」「趣味」が大きくなっていくと思います。
無形資産として反映させることもできますか、それはほんの一部です。
(中略)
ITなどの企業は財務諸表を見ていても、企業の競争優位性となる価値が一切反映されていないので、その企業の将来性を予測することは難しいのです。
(中略)
ものを扱わないネット企業で、財務諸表上の価値として認識されていないものの1つが「人材」、もう一つが「データ」です。
公認会計士の自分が言うのもアレですが、今の会計制度や財務諸表が、株式市場において実体経済の尺度として機能しているのかは疑問です。いわゆるノウハウや顧客データの価値の測定が難しく、対価として判別不明な部分についても、現行制度で企業結合における超過収益力を「のれん」として計上することを認めていますが、あくまでも企業結合時における投下資本の範囲内であり、価値の再評価は減少方向でしかなされません。また、自己創設のれんは認められていません。
極端な話、「社員1名(=社長)で自己資金でスタートアップしました。自分で開発しているのでほとんど経費はかかりません。今は無料で提供してデータを収集しているところです。」という企業は財務諸表上、何も活動していないことにみえるかもしれません。
そのため、「可視化された『資本』ではなく、お金などの資本に変換される前の『価値』を中心とした世界」への変化が予想され、価値とは次の3つから構成されると述べられています。
①有用性としての価値:「役に立つか?」という観点から考えた価値
②内面的な価値:愛情、共感、興奮、行為、信頼など、実生活に役立つわけではないけれど、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす
③社会的な価値:個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動
そして、「資本主義の問題点はまさに①の有用性のみを価値として認識して、その他の2つの価値を無視してきた点にあり」、そういった従来の基準では適切に価値を判断できないからこそ、価値主義による価値を価値尺度により判断していこうじゃないですか、という流れです。
個人が自分に最も適した経済を選んでいくという「選択」かあるだけです。
落合さんは、ワークアズライフでレイヤー化した経済を選択し行き来する、と言っていました。
先程の価値と言う観点からすると30歳前後の世代は、すでに車や家や時計などのものに対して高いお金を払うと言う感覚がわからなくなりつつあります。
ほんとこれで、高い時計よりもアウトドアウォッチやスマートウォッチが欲しいし、車は新車はいらないしシェアでもいい、不動産は所有するリスクが高いから賃貸でいいし、豪邸への憧れはない。備え付けで飾らなくていいから、自分で自由にオプションできるようになってほしい。
自分なりの独自の枠組みを作れるかどうかの競争になります。枠組みの中の競争ではなく、枠組みそのものを作る競争です。
完全にステレオタイプな枠組みの中で動いてます。よろしくないですね。
これからの価値基盤は従来型と大きく変わってくるのは至極納得できる話です。自分も今までの常識に囚われず、新しい価値観を認め、リスク評価していかなければならないですね。
今話題のcoincheckも仮想通貨が悪いという的外れな議論にならないように気をつけなければなりませんね。
続いて、落合さんの「日本再興戦略」を読みました。研究者やアーティスト活動など、マルチで活動している落合さんですが、ワークアズライフなど、自分の働き方やこれから生きていくためにはこうすべき、などいつも個人に焦点をあてているとイメージだったので、「日本」というテーマで書かれていたのは意外でした。(勝手なイメージですね。)
日本をよくしていくためにはどうするべきか、というのを、日本の歴史の特異性を学び、海外と悪い比較をせずに、持ち味をいかして、再興していこう。まさにタイトル通りの一冊になっていました。
「個人」として判断することをやめればいいと僕は考えています。「僕個人にとって誰に投票するのがいいか」ではなく、重層的に「僕らにとって誰に投票すればいいだろう」(中略) と考えたらいいのです。個人のためではなく、自らの属する複数のコミュニティの利益を考えて意思決定すればいいのです。
(中略)
これからの日本に大事なのは、いろんなコミュニティがあって、複数のコミュニティに所属しつつ、そのコミュニティを自由に変えられることです。
経済=コミュニティとするならば、佐藤さんの書籍の中でも同様の話をされていました。同じ色に染まる必要はなく、自分の色でいられるところで咲きなさい。そして、それぞれの「僕ら」のなかで、「僕」として存在すればいい。というのは、平野啓一郎さんの分人主義に通ずるところがあるように感じます。
オンとオフの区別をつける発想自体がこれからの時代にはいません。無理なく続けられることを、生活の中に入れ込み複数行うのが大切なのです。
ワークアズライフですね。残業などの概念もなく、やりたいことをやりたいだけやって生活する、幸せの究極系ですね。
昭和の時代においては、マスメディアが大衆の画一的な需要を作り出すと言う戦略は正しかった。マスメディアが国民全員に同じ方向を見させることによって、「次は自動車が売れる、テレビが触れる、洗濯機が売れる」と言うふうに消費行動読みやすくなったのです。これは企業にとって好都合です。どこの分野に投資したらいいかわかりやすかったですし、国内で発達した技術的価値を国外に移転することができました。これがうまい戦略だったこと間違いありません。
(中略)
もう一つ、トレンディードラマに代表されるマスメディアがもたらした害悪があります。それは、拝金主義です。今の日本は拝金主義すぎます。
高度経済成長化では正しい選択でしたが、そのステレオタイプな像に未だに洗脳されているということですね。たしかに、自分が経験したことがないことは、時に作られた映像から造り上げることがあります。最近は、Youtubeで幼児向けに、「小学生の一日」や「薬屋さんでお買い物」などの教育的動画を配信していたりしますが、これも洗脳ですよね。実際に「小学校」や「薬屋」を訪れた時、映像との違いを受け入れられなくなる可能性はあります。
お金からお金を生み出す職業が、一番金を稼げる(=価値がある)と考えると言うこと自体が間違っているのです。制度や発明だと生産性のある事は何もしていませんし、社会に富を生み出していません。それなのに、金融機関に行きたがる若者が多いのは、マスメディアで洗脳されているからです。ドラマの中に出てくる主人公が銀行で働いている設定だったりするのは、マスメディアで報じられる金持ちへの憧れがあるのでしょう。
(中略)
医者は重要な職業であり、価値を産みますが、優秀な人が一緒にばかりなる必要はありません。弁護士は、社会制度を複雑にしたおかげで生き残った職業です。それは公認会計士や税理士も同じです。これらの仕事の給料は高いですが、社会に富も価値も産みだしていません。制度を難しくこねくり回しているだけなので、あまり意味がないのです。今後、AIが進化していったら、弁護士や公認会計士は今後さらに不要となってくるでしょう。
厳しいですが、おっしゃる通りです。これから生き残るためには、公認会計士+αにならなければなりません。大手監査法人での副業・兼業緩和を訴えていく必要があります。
これから日本をアップデートし、日本を再興するためには、まず意識を改革しなければなりません。これまでの常識を捨てて、新しい時代を生きるための能力を育む必要があります。では、新しい時代に磨くべき能力とは何でしょうか。それは、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です。
バランス感と先見の明。
リサーチメソッドと言う授業は、アメリカの大学にはだいたいあるのですが、日本にはほとんどありません。これは、ヨーロッパ人がサイエンスを作るときに獲得した作法です。
(中略)
専門性を持っている人がMBAに行くのはいいですが、
(中略)
MBAを学ぶ位であれば、リサーチメソッドやアートを学んだ方が良いでしょう。今の日本の教育を受けていると、どこにもアートに触れる機会がありません。
(中略)
アートを学ばないと、ものの複雑性を理解できません。生涯教育というのであれば、アートも組み込んでいくべきでしょう。アートを学ぶといっても、美術館に行けという話ではなく、アートの基本作法を学ぶと言うことです。どういうお作法でアートができているかとか、アートの価値はどこにあるかとか、そうしたことを学ぶということです。
これは自分用のメモ。全く意識したことがありませんでした。
これからは、ワークとライフが無差別となり、すべての時間がワークかつライフとなります。「ワークアズライフ」となるのです。生きていることによって、価値を稼ぎ、そして価値を高める時代になるのです。
そうした時代において一番重要なのは「ストレスフルな仕事」と「ストレスフルではない仕事」をどうバランスするかです。要するに、1日中、仕事やアクティビティを重視していても、遊びの要素を取り入れて心身のストレスコントロールがちゃんとできていれば、それでもいいのです。
ストレスコントロールもまた、ポートフォリオマネジメントということですね。
よく、何かストレスマネジメントでオススメはありますか?と言われるのですが、個人として、ストレスマネジメントのために力を入れているのは、筋トレです。
最後に。落合さん、筋トレしてたんですか。
たまには、小説以外の本も読まなければいけませんね。上記の2冊を読んでトレンドワードがだいぶ理解できたので、よかったです。
ただ、Kindle版で買って、気になったところをハイライトしていたのですが、出力しようとしたら書き出し制限がかかっていて、「せっかくの機能を殺すな!」と思いました。仕方なく音声入力したのですが、舌ったらず&声がこもりがちなので、間違っている部分があるかもしれません…。