小説家による小説家の小説 ーーデヴィッド・ゴードン「二流小説家」
「二流小説家」は2011年文春ミステリーベスト10の第1位、2012年このミステリーがすごい!第1位、2012年ミステリが読みたい第1位、で三冠を達成した、ディヴィッド・ゴードンによる推理小説だ。
様々な筆名を使い、ポルノ小説、SF小説、ミステリ小説、ヴァンパイア小説などを執筆する小説家ハリー・ブロックが、連続殺人鬼として界隈を震撼させたダリアン・クレイの告白本を書くことになる。執筆を依頼されたブロックは渋々ながらも筆を進めるうちに、クレイの手口にそっくりな殺人事件に巻き込まれることになる。というのがあらすじ。
500ページ超の長編ながら、アメリカ小説ならぬ、繊細で自虐的な主人公と軽妙洒脱な語り口でページのめくる手が止まらない。
ただ、読後感はあまり良くなかった。物語は次の一文から始まる。
小説は冒頭の一文が何より肝心だ。唯一の例外と言えるのは、結びの一文だろう。
この小説はスピード感あるサスペンスのように見せながら、この殺人事件が終結したあとまとめ直して執筆したというメタ小説的な立ち位置を取っている。
そのため、途中で小説の引用文が入り、物語の途中で読者への挑戦や小説家としての哲学などが紛れ込ませられている。
引用した冒頭の一文、そして結びの一文を読んでも、果たしてその一文が肝心であったのかは甚だ不明だった。
書かれた小説の体裁をとって書かれた小説、もいうメタ小説の構造自体がメタ小説なのではないか、と現実の猟奇的殺人の記事を漁ってみたものの、自分が探した範囲では見つけられなかった。
しかし、最終ページを読む限りでは、書かれた「小説の体裁をとって書かれた小説」の体裁をとって書かれた小説、のように思えてならないのだけれど。