札幌を闊歩する青春群像ミステリを堪能せよ ーー川澄浩平「探偵は教室にいない」
11月に入りますます寒さの増す北海道。峠にも雪が積もり始めていよいよ冬到来でしょうか。
今回は鮎川哲也賞受賞の川澄浩平「探偵は教室にいない」を読みました。
謎と出会い、わたしたちはすこしだけ大人になる。
第28回鮎川哲也賞受賞作
わたし、海砂真史には、ちょっと変わった幼馴染みがいる。幼稚園の頃から妙に大人びていて頭の切れる子供だった彼とは、別々の小学校に入って以来、長いこと会っていなかった。変わった子だと思っていたけど、中学生になってからは、どういう理由からか学校にもあまり行っていないらしい。しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼――鳥飼歩は、九年ぶりに再会を果たす。日々のなかで出会うささやかな謎を通して、少年少女が新たな扉を開く瞬間を切り取った四つの物語。青春ミステリの新たな書き手の登場に、選考委員が満場一致で推した第28回鮎川哲也賞受賞作。
第28回鮎川哲也賞選考経過、選評=加納朋子 北村薫 辻真先
川澄さんは北海道出身・在住ということもあり、この作品は北海道(というか札幌)を舞台とした連作短編ミステリ感がバチバチ出ています。
北海道×連作短編集。
あれ、それいつか僕が書きたいと思ってたテーマなんですが!加納朋子さんの「ななつのこ」がとても大好きで、そういう雰囲気を生まれ育った北海道で表現したいと思っていたのに...。と書く気持ちもないのですが、なんとなく悔しくなってしまいました笑
しっかし、「円山公園」とか「宮の森」とか「発寒」とか知っている地名が出てくるだけで、ドキドキするこの気持ちはなんなんでしょうね。笑
いわゆる「日常の謎」を解明する中学生の青春ミステリなのですが、ミステリ界でのよくあるジュブナイルものをバランスよく書かれているところがとても良かったです。選評でも書かれていましたが、一歩間違えれば、物足りなくかつありきたりになりかねない、その絶妙なところを、実在する町や路線を使ってうまく昇華させ、かつ王道の読後感を味わせてもらえる、ありがたさを感じました。ミステリなのに殺伐としてない!笑
蛇足ですが、応募時の作品名は「学校に行かない探偵」だったみたいで。こっちの方が個人的には好きなかんじがします。
「ジェリーフィッシュは凍らない」「屍人荘の殺人」とはテイストの異なる今年の鮎川哲也賞ですが、さすがは受賞作、審査員の折り紙つきですので、ぜひご一読を!