竹本健治「涙香迷宮」(講談社)を読みました。
こんにちは。
クリスマスも終わりましたね。
今回は、竹本健治著「涙香迷宮」を読みました。
(以下、Amazonの内容紹介より引用)
明治の傑物・黒岩涙香が残した最高難度の暗号に挑むのは、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久! これぞ暗号ミステリの最高峰! いろは四十八文字を一度ずつ、すべて使って作るという、日本語の技巧と遊戯性をとことん極めた「いろは歌」四十八首が挑戦状。そこに仕掛けられた空前絶後の大暗号を解読するとき、天才しかなし得ない「日本語」の奇蹟が現れる。日本語の豊かさと深さをあらためて知る「言葉のミステリー」です。「このミステリーがすごい!2017」第1位!
今まで竹本健治作品は「匣の中の失楽」しか読んだことがなかったので、探偵役の牧場智久が今までどんな事件を解き明かしてきたのかは知りませんが、単独でも楽しめる作品と踏んで、そしてこのミステリーがすごい!2017年版の国内編第1位を獲得したにもかかわらず読んでいないとは!!という責務の念から読んでみることにしました。
竹本健治氏といえば、本編への伏線等関係なく、これでもかこれでもかと知識を詰め込むので、小栗虫太郎の「国死館殺人事件」に近しい書かれ方をしているなぁ、という印象です。(いわゆる日本四大奇書の作家としての共通点もあったりして)
以下、ネタバレになる部分も含むかもしれないですが、読み終わった感想としては、「なぜこれがこのミス1位に……?」というような印象でした。
選考委員の感想の文面においても「いろは歌を約五十もひねり出した労をねぎらいたい」などと描かれており、しまいには「ミステリーとしては全く評価できない」(しかしそれを踏まえてもエンターテイメント性がすごい、と続く前段としての感想ではあるが)とかかれており、このミステリーがすごい!なのに、ミステリは評価できないの?え、功労賞としての1位なの??という疑問が生じる結果となってしまいました。
いろは歌の大量生産はとてつもない労力をかけた代物である、ということはもちろん承知なのですが、いわば「ミステリ大賞」なのにミステリ部分が結構粗野で、暗号部分と殺人事件にほとんど関連性がなかったり、殺人事件の解決が現行犯で捕縛→自供で終わってしまったり、動機も瑣末なことであったり、落石のアリバイとかの話が一切語られなかったり。竹本健治氏が、というよりは選評者が、という感じがしますね。
黒岩涙香や連珠についてのドキュメンテーションの部分は、フィクションとの線引きは難しいものの読み物としてむしろ面白かったですし、竹本健治氏が調べれば調べるほどこの人はこんなに面白いのか!と皆さんにぜひ知ってほしいと書かれているようでした。
そして、最後の逆文いろはも、もう一段階あるかと思ったら、あ、それで終わりなの?という感じで少し拍子抜けでした。(まだ先があるんじゃないか、なんて疑ってしまいます。)
「ウミガメのスープ」といえば水平思考(シチュエーションゲーム)の定番中の定番でありもちろん結末も知っていました。(水平思考といえば、松岡圭祐氏の「特等添乗員αの難事件」などにも描かれています。)
特等添乗員αの難事件 I<「特等添乗員α」シリーズ> (角川文庫)
- 作者: 松岡圭祐
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/25
- メディア: Kindle版
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ですが、この本の結びとなる竹本氏オリジナルの水平思考ゲーム「涙香の匕首」については、考えてみましたがなかなか納得のいく結論は見つかりませんでした。
あいくち、あいくち……、開いた口がふさがらないってか!などと思ったり、首に突きつけることで、「首をきる」から、あなたは首だ(=退職をすっぱり認めてあげよう)
、「あいくち」だからあなたの「口に合う」(=自分が正しいと思う道をいきなさい)
懐にはいる短刀なので、お前は俺の懐刀だった(=腹心の部下だとおもっていたよ)なんて考えたりしたんですが、その考え方って完全に垂直志向だよなぁ……とさまよってしまっています。いろは歌いろは歌と考えていたら、餞別のことは「むまのはなむけ(馬の鼻向け)」なんていったなぁ、などと思い出したりもしましたが。
個人的には、幸徳秋水は黒岩涙香から柄の部分に幸徳の名前が彫られた匕首をプレゼントされた。という説を推しておくことにします。
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