カツカレーのようなボリューム感たっぷりの本格ミステリ。鮎川哲也賞受賞作、今村昌弘「屍人荘の殺人」
10月も中旬となると気温がぐっと冷える札幌。ストーブとまではいかないまでも、ダウンを着始めるひともちらほらと見かけるようになりました。
写真はBARISTART COFFEEのアラビカブレンドのエスプレッソ。砂糖をスプーン3杯半ぐらいいれて甘くして、かき混ぜないでそのまま一口で飲み干す。そこに溜まったコーヒー味の砂糖をスプーンですくって食べる。これで元気が出ます。さぁ、本を読むぞ!という気になれるわけです。
さて、第27回鮎川哲也賞受賞作となった今村昌弘氏の「屍人荘の殺人」が満を持して刊行ということで早速読ませていただきました。
(Amazon 内容紹介より引用)
たった一時間半で世界は一変した。
全員が死ぬか生きるかの極限状況下で起きる密室殺人。
史上稀に見る激戦の選考を圧倒的評価で制した、第27回鮎川哲也賞受賞作。
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちと肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!! 究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?! 奇想と本格ミステリが見事に融合する選考委員大絶賛の第27回鮎川哲也賞受賞作!
シリーズもののように始まりますが、本作品は初出です。内容紹介では巧みに隠されていますが、本格ミステリの王道クローズドサークルと、ホラーの王道ゾンビのコラボレーションという、カツカレーのような作品となっています。
と、ここまでは紫湛荘→屍人荘→ゾンビ荘という連想から想定の範囲内。しかし、ゾンビと戦いながら逃げるバイオハザードのようなホラーミステリかとなめてかかると大やけどする。何せ相手は鮎川哲也賞受賞作。加納朋子氏、北村薫氏、辻真先氏がべた褒めするように、一筋縄ではいかない本格ミステリが待ち受けていたわけです。
パンデミックによりゾンビ化した集団から逃げるように別荘に籠城した主人公一行が殺人事件に遭遇する。殺された方法は明らかに人間によるもの、しかし殺された死因は明らかにゾンビによるものであることが明らかとなってくる。こっちをたてればあっちがたたず、あっちをたてればこっちがたたず。そんな状況で次々と殺人事件が発生する。
本作の面白いところは、明らかに「ゾンビによる殺人」が発生しているというところ。それでいて、ホワイダニットがおおむね自明であるところでしょうか。すなわち殺された人々は、昨年も別荘に女性を連れてきては酷い扱いをして、自殺や退学に追い込んでいる関係者であり、おそらく彼らに対して強い怒りが殺意へと変わったものによって殺された、という意味でのホワイダニットは、物語中で共通認識である、ということです。ただし、ゾンビに襲われている渦中での殺人、という意味でのホワイダニットは最後の解決編にて明らかにされます。
したがって、フーダニット、ハウダニット、真の意味でのホワイダニット、それらのすべてを明らかにしなければならない、という状況下にあったということです。
そしてそれらが全く明らかにならない状態で、物語は90%程終盤へと進んでいくわけです。そこからが怒涛の謎解き。探偵役がハウダニットについて言及、死体損壊のトリックが明らかにされます。そこからの消去法でのフーダニットの解明が美しい。「さて、どちらかな?」というぐらいの追い詰め具合。伏線とも気づかぬ伏線を、数少ない手がかりや言葉の端々をこれでもかというぐらい回収していく流れは見事です。
さすがにホワイダニットは犯人の自供による部分が大きかったですが、こちらもなぜ殺したのかが納得せざるを得ない作者の筆力に脱帽しました。ゾンビという奇想天外な状況に置かれた中でのある種の不条理な殺人を、ゾンビがいたからこその殺人理由へと逆手にとって、むしろ昇華させていった、一定の道義に基づく殺人だったと言わせしめた。そこもまた素晴らしかったです。
(ネタバレを含みます)
一点だけ気になったのは、3人目の殺害の際に利用したコンタクトレンズ用の点眼液。犯人はこれにゾンビの血をいれ、角膜からウイルス感染させたとのことでしたが、どうやって点眼液に血を入れたのか、という点。直接触れれば犯人も感染してしまうことを勘案すると、スポイトや注射針のようなものが必要となるのではないか、と。予め用意していた睡眠薬は固形タイプのものですし、犯人のもちもののなかには注射針のようなものはなかったでしょう。そうすると、キッチンにあるであろう爪楊枝なんかを使ったのでしょうかね。まぁ、そんなことは瑣末なことです。
⇒コメントを頂いてから気づきました。容器をからにすれば容器をスポイトのようにして吸い取ることができます。その通りでした。頭が完全に「目薬を中に入れたまま血を吸い取る」という前提から抜け出せていませんでした。ちなみに調べて見たところ、内容液の色がわからない、容器に色のついたスポイト状の点眼液もあるみたいですね。(一般社団法人 日本眼科用剤協会 医療用点眼剤写真一覧より)
読み終わった感想ですが、前回の鮎川哲也賞受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」に続き、今作も非常にレベルの高い作品だったなぁと思った次第であります。自分に書けと言われても一生無理な気がしますね。
どちらが良かったかというと難しいところですが、個人的にはバイオハザードなどホラー系は苦手なので、ジェリーに軍配があがるところでしょうか。でも完全に好みの問題で、本格ミステリとしては甲乙つけがたい限りです。
鮎川哲也賞は何と言っても加納朋子さんの「ななつのこ」が大大大好きなのですが、相沢沙呼さんの「午前零時のサンドリヨン」、青崎有吾さんの「体育館の殺人」など最近の作品もお気に入りがふえており、ますます本賞に期待を高めるばかりであります。もうすでに来年の大賞が楽しみで仕方ありません・・・・。
【読書記録】2017年9月の読書数は15冊でした。
おばんです、10月も5日になってしまいました。
十五夜過ぎちゃったけど出てもいいかな、とためらいがちなお月様を見ながら秋の夜長はゆったりスピッツを聴きながら読書をしたいなぁ、なんて思うわけです。
札幌は昨日は中山峠に雪も積もり、いよいよ冬到来か!と、
いやでもさすがにこの時期にストーブ炊くのは…、の心理戦が今年も繰り広げられております。
今月のアイキャッチ画像はCafe Tococheのコーヒーとプリンです。
札幌市営地下鉄東豊線「学園前駅」または東西線「東札幌駅」から徒歩10分程度の住宅街の中にできたカフェ。夜はクラフトビールも楽しめます。
ちなみに、先月のアイキャッチ画像は「喫茶カルメル堂」の煎茶とサラ・ウォーターズでした。
さてさて、9月の読書数は以下の通りです。
9月は出張も多かったこともあって15冊です。
Kindleも持って行ったのですが、東京で友達と遊ぶことが多く、移動中は疲れて寝てしまったので、伸び悩んだ結果ですね笑
市川憂人さんの「ブルーローズは眠らない」は前回触れたとおりです。
あとは、ジェフリー・ディーヴァーさんの「ウォッチ・メイカー」。
こちらの本は、スゴ本でおなじみDain氏がおすすめしており、
徹夜小説『ウォッチメイカー』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
僕もミステリ好きの端くれ、読んでいないなんて恥ずかしいのかもしれない、と思い急いで読ませていただきました。
一作目の「ボーン・コレクター」は以前読んでいたのですが、なかなか積読が多く、先に進まない状況、「きっと読めるはずだ!」と思い切ってシリーズを飛ばして読んでしまいました。
脱帽しました。これでもか、これでもか、と読者の予想をひっくり返し、頭の中をかき回されたような、え、え、え、え???(語彙笑)の連続で、ページをめくる手が止まりませんでした。
上下巻とページ数はそれなりに多いですが、一瞬ですよ一瞬。
これこそ夜の長くなる今時期の夜更かしにぴったりです。
そういえば、今日はノーベル文学賞の発表。
「わたしを離さないで」「日の名残り」などで世界的ベストセラー作家のカズオ・イシグロさんが受賞されたようです。
こちらも所有しているものの、積読中。
大変申し訳ありません。読みます。早急に読ませていただきます。
10月も張り切ってまいりましょうか。
「ブルーローズは眠らない」が面白すぎて僕も眠れなかった。(市川憂人「ブルーローズは眠らない」(東京創元社))
お久しぶりです、こんばんは。
9月の怒涛の東京出張を終え、ようやく札幌で一息。思えば、今月は羊蹄山の登山から始まって、登山⇒札幌⇒東京⇒札幌⇒登山⇒東京⇒札幌⇒ライブ⇒東京⇒札幌(⇒ライブ×2の予定)とインドア派の僕にしてはなかなかハードなスケジュール。
ちなみに、この間のライブはビッケブランカの、そして今週末はCzecho no RepublicとLOVE PHYCHEDELICOのライブに行ってきます。
仕事は忙しくないはずなのにあわただしい。しかしそんな中でも読みたい本は絶対読む、というポリシー。今回は、待ちに待った市川憂人さんの「ブルーローズは眠らない」(東京創元社)を読みました。
(以下Amazon「内容紹介」より引用)
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、〈ジェリーフィッシュ〉事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査してほしいという依頼を受ける。ところが両者との面談の後、施錠された温室内で切断された首が発見される。扉には血文字が書かれ、バラの蔓が壁と窓を覆った堅固な密室状態の温室には、縛られた生存者が残されていた。各種年末ミステリベストにランクインした、『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第2弾!
市川さんは、「ジェリーフィッシュは凍らない」が鮎川哲也賞を受賞してデビューという輝かしい経歴。僕も2016年に読んだ中でもおすすめの本として以前に書かせていただいていますが、最近では珍しく寝食を惜しんで読みたくなる本でした。
今年は、「新本格ミステリ」30周年の年ですが、市川さんの作品は第一作が21世紀の「そして誰もいなくなった」と言われたように、本格ミステリに属するものだと思います。そろそろ「新・新本格ミステリ」と謳ってもよいのでは、なんて思ってしまいます。青崎有吾さんと一緒に。
さて、まだかまだかと発売を期待していた2作目「ブルーローズは眠らない」、発売と同時に紙面での即購入です。
今回の事件は、前作ジェリーフィッシュ事件の後。遺伝子操作により青いバラの開発した博士が温室内で殺される、しかも状況は密室。この条件だけでわくわくしてしまいます。その密室殺人の謎を解くべく、マリアと漣が再び捜査に動き出す。しかし、捜査むなしく第2の殺人が。
博士は誰に殺されたのか?
密室の謎は?
そして、青いバラの発表はなぜ同時に2つも現れたのか?
今回もまた寝食を忘れるほどの一気読みでした。完全に夜更かし。
前作はプロローグの後「地上」パートと「ジェリーフィッシュ」パートが交互に語られ、間に意味深長な短い「インタールード」を挟む書き方で、読む側として非常に読み進めたくさせられていましたが、今回も。
「ブルーローズ」パートと「プロトタイプ」パートが交互に描かれ、間に「インタールード」。真実へと着々と迫っていっているような、現在と過去が錯綜するような、疾走感あるサスペンスのような、そんな感じがします。頭の中で、海外の2時間ドラマが流れるように想像されます。
そして装丁も美しい。
前作のイメージを踏襲していて、並べると本棚の見栄えもよいです。笑
いや、しかし表紙の絵が我々のミスリードへと一役買っているような…。
THE BLUE ROSE NEVER SLEEPS
THE JERRY FISH NEVER FREEZES
なんて並べてみたら、どこかの歌詞みたいな。
本文にも装丁にも通じる、この理路整然としている感じ。
これが市川ミステリなのかな、と思いました。
前作を読んだ方は是非今作も。
前作を読んでいない方は前作も含めて今作も。
買ってみてはいかがでしょうか。
【読書記録】2017年8月の読書数は27冊でした。
さようなら8月、こんにちは9月。
そしてさようなら夏、いらっしゃいませ北海道の秋、という感じです。
夏は野外フェスに行ったり山に登ったりとアクティブだったので、夏が名残惜しいですが、ここは読書の秋、教養の秋とポジティブにとらえることにします。
さてさて、今月の読書記録はこんな感じです。27冊!
平野啓一郎さんの「日蝕」、西加奈子さんの「サラバ!」、池澤夏樹さんの「スティル・ライフ」、佐藤正午さんの「Y」と、純文学よりの小説たち(「サラバ!」は直木賞ですが、僕の中ではエンターテインメントよりは純文学の箱に入れたほうが個人的にすっきりします)から始まって、
後半はサラ・ウォーターズの「半身」や相沢沙呼さんの「マツリカシリーズ」、そしてアガサ・クリスティとミステリ尽くしで終わりました。
平野啓一郎さんの「日蝕」は、1999年の芥川賞受賞作品なのですが、受賞時も賛否両論となった、その特徴ある文体に触れるべきです。フランスの神学者が蒐集の旅をしている中で、錬金術師や両性具有者との邂逅を経て、キリスト教との新たなつながりを模索しているようなストーリーも異色ですが、20世紀前半から中盤にかけて書かれたような古風で形式ばった文体は、まるで実際に中世ヨーロッパに書かれた書物をその時代の学者が翻訳したように感じられ、挑戦的な作品だったと伺えます。
個人的に、西加奈子さんと又吉直樹さんと中村文則さんの小説は、読んでもハマらないと感じていました。もちろん、作品を読んだうえでそう思っています。
西加奈子さんの小説の帯には「中村文則さん、又吉直樹さん推薦!」
中村文則さんの小説の帯には「西加奈子さん、又吉直樹さん推薦!」
そして又吉直樹さんの小説の帯には「西加奈子さん、中村文則さん推薦!」
そう書かれているような気がして、僕の中ではなんだか好きになれない純文学トライアングルの一角にいました。(「舞台」はとっても面白かったですが。)
その気持ちで、「サラバ!」を読んでみていたのですが、その考えは大きく間違っていたことに気づかされました。
「サラバ!」は傑作です。間違いなく傑作だと思いました。
なんで、もっと早く読んでいなかったのか、悔やまれる恥ずかしい、そんな作品。
サラバ!の上巻の半分ぐらいまでは、淡々とイランやエジプト、日本での生活が淡々と語られており、なんだかちょっと読んでいて退屈でした。しかしあの上巻半分の記載はいわばダムのようなものでした。上巻の後半から、感情の放流が始まりました。自分の感情や他人の言動などに振り回されて振り回される主人公の放流たるや、とうとうと滔々と、僕の目に、耳に、五感に大量の水が流れ込んでくるような感覚に陥りました。西加奈子におぼれてしまった。
相沢沙呼さんの「マツリカシリーズ」の最新作「マツリカ・マトリョシカ」、せっかくなので、最初から読むことに。
主人公の柴犬(通称)がマツリカさんに振り回されながら謎を解決していく。そして謎を解決しながら成長していく、ジュブナイル日常の謎的なシリーズ。
ジュブナイル小説らしい、スピード感あるストーリー展開ながらにして、秀逸なプロットは、読んでいてとても楽しくなります。
読み終わった瞬間に、もう次の作品が読みたくなる、中毒性MAXな小説です。
マツリカ・マトリョシカ 「マツリカ」シリーズ (角川書店単行本)
- 作者: 相沢沙呼
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: Kindle版
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あと、変わったところでいうと、穂村弘さんの「短歌の友人」でしょうか。
先日、本屋さんを歩き回っているときに、ふいに短歌の棚に目が行きまして、「そういえば、詩は読んだことあるけど、短歌って読んだことないなぁ」と思ったのです。しかし、短歌を読もうとおもっても、何を手に取ったらいいかわかりません。正直俵万智さんの「~~サラダ記念日」しか知りません。なので、歌集を買うのはハードルが、というかリスクが高い、そんな気がしました。
いろいろ、検索してみると、短歌の評論でこの「短歌の友人」がおすすめされていたので、購入してみました。
読んでみると、短歌の評論というよりは、もう詰め込みに詰め込んだ短編小説のおもちゃ箱みたいで、短歌たるやを全く知らない僕でも、面白いなぁと思いながら、リラックスした気持ちで読むことができました。
と今回は、こんなところです。
9月は出張が多く飛行機であっちへこっちへ行ったり来たりなので、Kindleでの読書がメインになりそうです。
ではでは。
僕が個人的に好きな漫画10作品を紹介します。
こんにちは。
8月も3分の1が過ぎようとしていて、もうお盆休みに入っている人もいるのでしょうか。おととい、8月7日は北海道では七夕の日でした。
いつも、小説ばかり読んでいる僕ですが、漫画もそれなりに読んでいます。特にiPadをかってからはKindleでまとめ買いする機会も増えました。
昔はいわゆる少年ものの王道バトル漫画として、ワンピースやNARUTO、ブリーチなど読んでいたのですが、最近は王道からは外れた漫画(と言っては失礼ですが)をよく読みます。
せっかくなので、僕の個人的に好きな漫画10作品を紹介したいと思います。
- 1.イエスタデイをうたって(冬目景/集英社)
- 2.アルテ(大久保圭/コミックゼノン)
- 3.ベイビーステップ(勝木光/講談社)
- 4.スパイラル~推理の絆~(城平京・水野英多/スクウェア・エニックス)
- 5.星野、目をつぶって。(永椎晃平/講談社)
- 6.恋は雨上がりのように(眉月じゅん/小学館)
- 7.よつばと!(あずまきよひと/メディアワークス)
- 8.ドメスティックな彼女(流石景/講談社)
- 9.惑星のさみだれ(水上悟志/少年画報社)
- 10.メイドインアビス(つくしあきひと/竹書房)
- その他紹介できなかった、おすすめ漫画
1.イエスタデイをうたって(冬目景/集英社)
イエスタデイをうたって 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
- 作者: 冬目景
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/07/18
- メディア: Kindle版
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コンビニバイトで何となく毎日を過ごしているリクオのもとにカラスを連れた少女、ハルが現れる。一方、リクオは大学時代からの友人、榀子のことが忘れられない。
と、あらすじが2行でかけてしまう、この漫画。
僕は何を隠そう冬目景さんのこの漫画が大好きなわけです。くくってしまえば、青年向けの恋愛コミックなんですが、いわゆる恋愛漫画みたく、恋愛恋愛していなくて、主人公たちに際立ったキャラクターはないのだけど、どこか情緒的な、文学的な感じがするのです。そしてハルがかわいい。その情緒さを際立たせるのが作品のタッチ。作者が美大出身であったこともあり、輪郭や髪型などの手書き感が、いつか懐かしい夏の思い出…のようなノスタルジアを味わせてくれます。冬目さんの作品画集もとっても素晴らしいです。
余談ですが、冬目さんはこの作品以外にも多く作品を書かれており、「羊のうた」や「幻想博覧会」「ハツカネズミの時間」などどれも面白いですが、個人的に好きなのは「マホロミ 時空建築幻視譚」です。取壊し寸前の建物の取っ手に触れると建物の記憶が少しだけ見える建築学生の物語。全四巻。
また、現在月間バーズにて「空色ノイズの姫君」を連載中。こちらもおすすめです。
2.アルテ(大久保圭/コミックゼノン)
中世ヨーロッパのフィレンツェやヴェネツィアを舞台にした、職業画家を目指す女性の物語。当時は職業画家は男性の仕事で、女性、特に貴族の女性は家系の繁栄のために、多額の結納金をもって名家へ嫁がせるものであったとされる時代のなかで、貴族として、女性として、の生き方と戦い自立しようとする主人公アルテ。物乞いや高級娼婦など様々な人との出会いの中で、職業画家として、元貴族として、そして女性として成長していく姿にとても引き込まれます。そして表情豊かなアルテがかわいい。
3.ベイビーステップ(勝木光/講談社)
勤勉・真面目でオールエーだから、あだ名がエーちゃん。そんなエーちゃんが、運動不足の解消のためにテニスの体験レッスンに行き、テニスの世界にはまっていく、スポーツ漫画。テニス漫画といえばこの漫画、ぐらい有名なテニスの王子様の「ありえない」設定とは真逆で、様々なテニス理論や実際のトレーニング・アプローチなどに基づいたリアルなテニス漫画で、テニス経験者としてはなるほどと思いながら読んでしまう。そしてナッちゃんがかわいい。
4.スパイラル~推理の絆~(城平京・水野英多/スクウェア・エニックス)
スパイラル ?推理の絆? 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
- 作者: 城平京,水野英多
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2012/09/21
- メディア: Kindle版
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天才の弟、鳴海歩(なるみあゆむ)の類稀なる洞察力と理論に基づいた構築力によって、難事件を解決しながら兄の行方を捜していく物語。
ガンガン・コミックスも「魔法陣グルグル」や「まもって守護月天!」、「ハレのちグウ」など結構読んでいた気がします。僕の全盛期はこの「スパイラル~推理の絆~」や「東京アンダーグラウンド」「鋼の錬金術師」だったんですが、中でもこの作品は夢中で読んでいました。
単発の事件解決の推理漫画が、いつのまにか途中からお兄さんとの確執と真実を見つける物語と変わっていったという点の評価は分かれるところですが、細かい伏線や高度な心理戦は最後まで読んでてぞくぞくさせられました。あとひよのさんかわいい。
東京アンダーグラウンド、読みなおしたくなってきました。
あ、あと城平京さんの小説「名探偵に薔薇を」もオススメです。
5.星野、目をつぶって。(永椎晃平/講談社)
人との関わりを避けながら高校生活を送る主人公、小早川が人気者のギャルである星野美咲に振り回される、結構王道な青春恋愛漫画。
顔もかわいく人気者の星野が唯一隠していることが、すっぴん。すっぴんの顔が地味すぎて人気者の輪を何とか保とうとしているが、川でおぼれていた子猫を助けたために、小早川にすっぴんがばれてしまう。そして化粧がへたくそな星野のかわりに、美術部の小早川が星野のメイク担当として、学校生活に巻き込まれていく。
でも、星野の行動力に感化されつつも、「いやいや、人間っていうのはそうそうすぐには変わんねーんだよ」みたいな主人公の鬱屈した感情が、王道の展開から少しはずれて進んでいくところが、たまらないです。あとすっぴん星野がかわいい。
6.恋は雨上がりのように(眉月じゅん/小学館)
ファミレスでバイトしている女子高生橘あきらとそのファミレスの店長の恋愛物語。
ただし、好意の方向は、あきら⇒店長で、店長もその好意をありがたいと思いながらも、自分の年齢や世間体、あきらの将来を考えて、優しく突き放す。一歩間違えば、おじさんの妄想漫画になりかねないテーマを、読んでいて気持ち悪くならない、そして面白い絶妙なバランス感で進んでくストーリーがなんともいえないです。
「たちばなあきら」と聞くと、「橘玲」さんをおもいだしてしまうのが悲しいところ。(笑)
7.よつばと!(あずまきよひと/メディアワークス)
よつばちゃんという5さいのおんなのこが、きんじょのひとたちとほんぽうにふれあっていくものがたりです!きみはよつばとなフレンズなんだね!っていうかんじです。きんどるばんはないよ。
作者は違うけど、何となく雰囲気の似ている石黒正数さんの「それでも町は廻っている」も併せておすすめです。
8.ドメスティックな彼女(流石景/講談社)
ひょんな事から童貞を卒業した主人公ナツオは、父の再婚によって、片思いしている学校の先生と童貞を卒業した相手(2人は姉妹)と同居することに。という主人公ハーレム系の物語。少年誌でここまでやっちゃっていいの?ってぐらいエロくて、近親相姦のセックスシーンも多く出てくる、いろいろギリギリな漫画。なんだけど、読み始めたら面白いです。
9.惑星のさみだれ(水上悟志/少年画報社)
これも昔に読んでとてもはまっていた漫画。また読もうかな。
大枠は普通の人がある日力を得てしまい敵と戦うバトル漫画なのですが、世界を救うために力を得たヒロインが、何よりも世界を壊したがっている、というところが面白いです。
10巻完結というコンパクトさの中にこれでもかと面白さや名言を詰め込んでおり、是非一読すべき漫画です。
10.メイドインアビス(つくしあきひと/竹書房)
アビスというどこまで続くかわからない謎の縦穴を探索する探窟家の物語。主人公のリコも探窟家にあこがれをもち、誰も到達したことのない縦穴の底を目指します。絵柄からかなりかわいい感じがするのですが、内容はそろそろグロく、死んだり死にかけたり。webコミックながら、単行本でも読みたくなる面白さです。
その他紹介できなかった、おすすめ漫画
ほかにも紹介したい漫画があったのですが、10作品に絞ってしまったため紹介できなかった作品たち、備忘録として記載しておきます。
・羽海野チカ「ハチミツとクローバー」/「3月のライオン」
・桂正和「I's」
・仲村佳樹「スキップビート」
・渡辺静「CHIMES」
ではでは。