読書ノート

札幌在住の26歳。読書が好きで読書感想ブログをちまちま書いています。特に推理小説が好きですが、どんなジャンルの本でも読むように心がけています。おすすめの本は通年募集中です。

河野裕「最良の嘘の最後のひと言」(東京創元社)を読みました。

3月に入り太陽は小春日和のような温かさがありますが、さすがは冬の北海道、太陽に騙され薄着ででると待っているのはマイナス2度だったりします。

 

今回は、河野裕さんの「最良の嘘の最後のひと言」(東京創元社)を読みました。

 

 

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫)

最良の嘘の最後のひと言 (創元推理文庫)

 

 (以下Amazon 内容紹介より引用)

検索エンジンSNSで世界的な成功を収めた企業・ハルウィンには、超能力研究の噂があった。それを受け、ハルウィンはジョーク企画として「4月1日に年収8000万で超能力者をひとり採用する」という告知を出す。そして審査を経て、自称超能力者の7名が3月31日の夜に街中で行われる最終試験に臨むことに。ある目的のために参加した大学生・市倉は、同じ参加者の日比野という少女と組み、1通しかない採用通知書を奪うため、策略を駆使して騙し合いに挑む。『いなくなれ、群青』、〈サクラダリセット〉の著者が贈る、ノンストップ・ミステリ。

 

「かわのひろし」さんかと思ったら、「こうのゆたか」さんなんですね。そして、同姓同名の声優の方がいらっしゃるので、Twitterでは(文章のほう)となっているのですね。笑

内容紹介にも書いてあるように、「サクラダリセット」シリーズや「いなくなれ、群青」などの階段島シリーズが主な著作で、創元推理文庫から出すのか!という物珍しさから手に取りましたが......。面白い。

 

面白い作品でした。作品を読む前は、いわゆる超能力者同士が一人になるまで戦うサバイバルゲームのような作品で、「未来日記」とか「魔法少女育成計画」みたいな、殺し合いが繰り広げられているんだろうなぁと思っていました。そういう殺し合い系はあまり好きではないので買ってはみたものの、という感じだったんです。

 (もちろん、「魔法少女育成計画」はそのグロテスクさを抜きにしても、能力をつかった心理戦が高度に繰り広げられていて、とても面白い作品です。そして「未来日記」もトラウマになりそうなぐらい何度も何度も読んだ漫画です。)

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)

 

 

でも実際に、河野さんの作品を読んでみると思っていたものとは全く違って、人の死なない超能力者サバイバル。なんというか「優しいサバイバルミステリ」という感じがしました。(実際に優しいわけではないのですが)

 

こういうノンストップアクションのような小説はネタバレしてしまうと面白くないので深くは書きませんが、登場人物全員が小さな嘘から大きな嘘まで、さまざまな嘘を交えながら対戦相手と協力したり駆け引きしたりしていきます。広がりに広がったさまざまな伏線や嘘を最後で続々と回収していくときのその緻密さと爽快感。そしてハッピーエンド。突飛なキャラクターなどがいないところもよかったです。なんというか、創元推理文庫らしい。笑

 

ストーリーの中で「最良の嘘」とは何か、という話になります。ある人は「誠実な嘘」であるといい、それはだれかのためを思ってついた嘘で、嘘を突き通す覚悟でついた嘘でで、万が一ばれてしまっても笑えるようなそんな嘘であると。はたしてそのついた嘘の「最後のひと言」が「最良の嘘」であったのかどうかは、読んで確かめてみてください。

 

物語の中で、BGMとして印象的だった「ザ・エンターテイナー」。これは1973年にアメリカで公開された映画「スティング」のテーマソングでした。「スティング」は詐欺師が主人公のコメディ映画で、最後は「死んだふりをして大がかりな嘘をついて、実は誰も死なずに悪い奴だけが騙されて、みんなで笑いながらその場を去っていく」ように物語が終わります。

 

 

あれ、なんだかこれ、似てませんか?

 

エピローグで、当日のみんなの行動を一覧にまとめておさらいをしています。

 

河野さんは「ザ・エンターテイナー」から着想して、エピローグのようなプロットをもとに、この「最良の嘘の最後のひと言」を書かれたのではないか、などと邪推してしまいました。

 

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【読書記録】2017年2月の読書数は33冊でした。

昨日で3月が始まりました。

早いもので、もう今年も2か月たったんですね。といっても北海道に春の訪れが来る気配はまだまだありませんが…。

 

2月はあまり感想を書いていないですが、読書数は33冊でした。

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表にするとこんな感じ。

これを取り込むのに手間がかかって昨日は更新できませんでした。笑

 

 

本谷有希子さんの戯曲や最果タヒさんの詩集など、今月は小説以外のものも読んでいるので冊数が増えた感じでしょうかね。

 

もちろん、村上春樹さんの新刊も読みまして、感想も書こうと思っているのですが、全く感想がまとまらず…。

いつか感想を書けたらいいなと思っています。

 

ビブリア古書堂の事件手帖は完結巻となってしまって、好きなシリーズだっただけに少し寂しいです。

 

初野晴さんなどは、映画化に乗じて読み直ししています。

 

あと、万能鑑定士シリーズもようやく最終巻まで、読み終えました。軽いタッチとはいえ、長かった…。

 

そんな読みやすいものも多かったですが、バラエティーに富んだ2月でした。

 

ではでは。

北大が舞台!阿川せんり「アリハラせんぱいと救えないやっかいさん」(角川書店)を読みました。

昨日に引き続きの更新です。

 

今回は阿川せんりさんの「アリハラせんぱいと救えないやっかいさん」(角川書店)を読みました。

 

アリハラせんぱいと救えないやっかいさん (角川書店単行本)
 

 (以下 Amazon内容紹介より引用)

ナンバーワンよりオンリーワンになる方が難しい! こじらせ系北大青春小説

「わたし、北大に行きます。真の変人と出会わんがために!」
北海道大学2年、コドリタキ。珍妙なせんぱいと、身体を張った「変人研究」はじめました。

「自称」変人の皆さんへ。――住野よる(作家)
住野よる氏も共鳴! 個性という言葉が切々と胸に迫る、こじらせ系青春小説!

特別な自分の演出のために変人ぶろうとする、偽りの変人。それが、通称“やっかいさん”。
北海道大学2年コドリは、ある理由から“真の変人”を追い求めている。だがそれゆえ、やっかいさんから好かれがち。
ある日、心理系コース4年・アリハラと「とんでもない出会い方」をする。アリハラはコドリとやっかいさんらの関係に興味津々……かきまわし、あらゆるイベントを起こしたがる。
「アリハラこそ真の変人なのではないか?」と希望を持ったコドリは、あえて振り回されるうち、封印していた自分の気持ちと向き合うように。
しかし、アリハラには別の目的があった……。

あなたは「特別な人」ですか? それとも「やっかいさん」ですか?
読み終えたあとは自由になれる、今までにないこじらせ系青春小説!

 

いま札幌が推している作家といっても過言ではない、阿川さんは北海道大学卒業で今作は「厭世マニュアル」に続く第2作目の刊行作品です。

住野よるさんの作品は読んだことないので共鳴はしなかったのですが、同じ大学の出身者で前作も読んでいたことと、装画が気になったので今回も購入しました。

 

ちなみに北海道大学出身の作家というと、東直己さんや佐藤正午さん、最近だと水原涼さんや草野原々さんもそうです。

 

厭世マニュアル

厭世マニュアル

 
身の上話 (光文社文庫)

身の上話 (光文社文庫)

  
最後にして最初のアイドル

最後にして最初のアイドル

 

 

さて、「アリハラせんぱいと救えないやっかいさん」は、「変人はいいけど、エセ変人=やっかいさんはいや」な"普通"の主人公コドリタキと彼女をとりまく3人の変人orやっかいさんのアリハラせんぱい、マイ先輩、ミレイさんの4人にまつわる話です。

 

マイ先輩とミレイさんという二人のやっかいさんに付きまとわれているコドリタキが、変人orやっかいさんのアリハラせんぱいと出会って少しずつ化学反応をおこしていって、徐々に4人の関係性や見方、あり方が変化していきます。

 

変人とやっかいさんという自意識の境界線が主眼となっているので読んでいるうちにむず痒くなりそうですが、テンポの良い会話劇が続くのでそんなことはなくかなり読みやすいです。

 

そしていちいち(笑)北大スポットや周辺のネタが出てきます。北食(北部食堂)やら北図書(北図書館)、工学部食堂、サ館(サークル会館)、文系棟、大野池、紀伊國屋書店札幌本店、ノルベサ、あと金獅子のホルモンor味覚園、などなど。なじみ深いスポットばかりなので、頭の中でイメージしながら話が読めたのもよかったです。

ネタバレになってしまうので多くは書きませんが。

 

 少し突飛なところもありましたが面白いです。個人的には前作より好きです。

 

 

余談ですが、北大はよい大学でした。比較的自由な風土だからでしょうか。

サクシュコトニ川が流れる中央ローンで緑と風を感じながら本を読んだりゼミをやったり、農学部ローンでビール片手にジンパ(ジンギスカンパーティー)やバーベキューをしたり...。学内にビアガーデンがあったり。秋は七輪でサンパ(サンマパーティー)、夜も工学部の明かりを見ながら缶ビールを飲んだり...。

変な人も多かったです。工学部のごみ置き場から使えそうな什器等を拾ってきて売っている人とかいましたけど、あれは犯罪だったんじゃないでしょうかね...。

 

なんて、思い出話にも花を咲かすことができるかもしれません。

北大生(に限らずですが)はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

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渡辺優「自由なサメと人間たちの夢」(集英社)を読みました。

2月も終わりに近づいてきていますが、久しぶりの投稿です。

 

上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズや和田竜さんの「村上海賊の娘」などの冊数の多いシリーズものを読んでおりまして、今更書くのもなぁと思いながらなんとなく更新が滞ってました。

 

さて、今回は渡辺優さんの「自由なサメと人間たちの夢」(集英社)を読みました。

 

 

自由なサメと人間たちの夢

自由なサメと人間たちの夢

 

 (以下Amazon 内容紹介より引用)

クズばっかりの世界に差し込む、ひとすじの光――。痛快な毒気をはらんだ物語センスが炸裂! 2015年に小説すばる新人賞を受賞した注目作家の、受賞後第一作。自殺未遂を繰り返す女が、入院先の病院で決意する最後の日の顛末とは?―「ラスト・デイ」。冴えない男が事故で手を切断。新型の義手で人生を一発逆転する力を手に入れ―「ロボット・アーム」。メンヘラ気味のキャバ嬢のたったひとつの生きがいは、サメを飼うことだった―「サメの話」。新感覚フィクション、怒涛の全7編。

 

渡辺優さんは、「ラメルノエリキサ」で第28回小説すばる新人賞を受賞した作家で、その受賞後第一作の短編集です。

実はまだ「ラメルノエリキサ」は読んでいないのですが(現在注文中です)、今後もこの作家の作品は買っていこうかな、と思えるような作品でした。

 

ラメルノエリキサ (集英社文芸単行本)

ラメルノエリキサ (集英社文芸単行本)

 

 

 

7つの短編は、自殺未遂、精神病棟、幻肢痛、義手、明晰夢、夢の中の絵、哲学的ゾンビ、いじめ、夢、サメ...。少しSFチックであったり、人に話すには少し後ろめたくなったりするようなキーワードがテーマで繰り広げられます。

 

ただ前に「伊藤計劃トリビュート2」でのぼくのりりっくのぼうよみなどで触れたような完全なるSF世界でのディストピアが描かれているといったようなものではありません。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

限りなく現実に近い世界で、死にたがりだったり何のために生きているのかわからないけどなんとなく働いていたりする割と一般的な主人公が、希望を見出してハッピーエンドとも死んでしまってバッドエンドともつかない物語がつづられている、そんな感じがします。

 

等身大のフィクション、っていうんでしょうか。

 

自分で小説をしたためておきながら、ハッピーエンドになるかどうかなんて知ったこっちゃないよ、そんなの小説の中の登場人物たちに聞いてみなよ、と言っているような文章にも主人公に対しても毒気をはらんだ文章や展開、突き放す優しさみたいなのがあるような気がしました。

 

僕が好きな漫画家の冬目景さんの作品「空中庭園の人々」の小説版といっても近いかもしれません。

 

冬目景作品集 空中庭園の人々 (バーズコミックス)
 

 

限りなく現実に近い世界で、非現実的な物語が淡々と浮かび上がっては消えていくような、こちらもそんな作品になっています。

 

おととしは深緑野分さんの「オーブランの少女」「戦場のコックたち」、昨年は一色さゆりさんの「神の値段」という新しい作品に出合いました。

2017年はまだ始まって2月ですが、この渡辺優さんの「自由なサメと人間たちの夢」2017年の中で一番好きな作品になりました。装丁を見て手に取ったというところもあって、素敵な出合いに感謝して、終わりにします。ではまた。

 

 

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【読書記録】2017年1月の読書数は31冊でした。

今日から2月です。

 

先月の読書数報告をば。

1月の読書冊数は31冊でした。

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小さいけれど表にするとこんな感じ。

 

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今月も忙しさはそこそこなので、読む余裕はありそう。

4月、5月は全く読めないと思うので、読み溜めしておかなくては。笑