読書ノート

札幌在住の26歳。読書が好きで読書感想ブログをちまちま書いています。特に推理小説が好きですが、どんなジャンルの本でも読むように心がけています。おすすめの本は通年募集中です。

ゾーイ・ヘラー「あるスキャンダルについての覚え書き」(ランダムハウス講談社)を読みました。

こんにちは。

僕は今日が仕事始め、今年も一年健康に仕事をできるように頑張っていきたいと思っています。

 

今回はゾーイ・ヘラーさんの「あるスキャンダルについての覚え書き」(ランダムハウス講談社)を読みました。

 

あるスキャンダルについての覚え書き

あるスキャンダルについての覚え書き

 

 (以下Amazon 内容紹介より引用)

2003年6月にイギリスで出版され、同年のブッカー賞の最終候補作になった小説です。夫も子どももいる40代の美しい陶芸教師と、教え子の15歳の少年とのスキャンダルの真相を綴るという設定で、実際にあった事件にヒントを得ています。しかし、本書の醍醐味は実はまったく別のところにあります。小説は、美しい女教師シバが赴任してきたときからその一挙手一頭足をじっとみてきた60代の女教師、バーバラの手記というかたちで綴られます。最大の読みどころは、シバとバーバラ、とくにバーバラの内奥を浮かび上がらせる作者の筆力です。年齢も、生まれ育った環境も、容貌の美醜も、すべてが自分とは異なるシバが、教え子とのスキャンダルによって家族からも地域社会からも糾弾され、打ちのめされていく様子を、バーバラはなんともいえない語り口で書きつづっていきます。傍目には、バーバラはシバの擁護者でありながら、人間の有り様とはそれほど単純ではないということが、じわじわと読む者に突きつけられてくるのです。

 

 内容紹介にも記載されている通り、2003年に刊行され、同年のブッカー賞候補となりました。惜しくも「ヴァーノン・ゴッド・リトル 死をめぐる21世紀の喜劇」(都甲幸治訳)に受賞を譲ってしまいましたが、2006年に映画化されたりと大きな話題を呼んだ著作です。

 というのも、本作品は、1997年にアメリカで実際に発生したメアリー・ケイ・ルトーノー事件として話題となった事件をベースとして書かれています。もちろん事件とは内容を改編しており、小説としてはフィクションになってます。

 

 

 小説は題名の「覚え書き」(原題:Notes on a Scandal)のとおり、主人公シバの様子を自称親友のバーバラが個人的な手記としてまとめている、という体裁をとっています。実際の事件では、主人公の夫が主人公の不倫相手である未成年の少年とやり取りした手紙を発見したことから内情が発覚するため、このバーバラはオリジナルのキャラクターだと思われます。

 本作の面白いところは、まさにこのバーバラの手記がそのまま刊行されているという体裁をとっているところにあり、その記載が客観的事実に基づいて記載されているものというよりは、孤独な老人(というには若いかもしれませんが)であるバーバラの主観的な判断で書かれており、時折見えるバーバラの傲慢さもシバや他の人に転嫁することであくまでも「私はこんなに寂しいのに、あなたはわかってくれない。わかっているなんてそんな投げやりに言わないでほしいの」と傍観者でありながら自己擁護に徹する内情が垣間見えます。後半の取り消し線が加えられた文章は、あからさまではあるもののそのバーバラの自分勝手な心情をより印象付けるものになっています。

 

 また、実際の事件では性的な関係を持った少年との間に女児を儲け、児童レイプ罪で懲役7年5か月の求刑、その後少年が擁護する主張をしたことや世間が同情したことから、少年に合わないことを条件に6か月の求刑を受けました。仮釈放後、同じ少年と再び性交渉を行っているところを警察に目撃され再逮捕されましたが、出所後、成年となった少年と最終的に結婚しました。つまり彼女は、二度児童レイプ罪で逮捕されるもその少年と結婚して幸せに暮らしています。形式的には児童レイプであったかもしれませんが、彼らにとっては禁じられた愛だったのかもしれません。

 一方で小説では、彼女が未成年と性交渉を行ったことが発覚してマスコミなどの糾弾からバーバラとシバが雲隠れするところで終わっています。もちろんこれもバーバラの手記によるところであり、彼女が職場の同僚にシバの不倫をたきつけ、シバに手記を見られて絶縁状態となったものの和解した、との記載そしてこの終わり方は彼女の理想だったのかもしれません。言及はされていませんが、バーバラはシバに対して職場の同僚以上の感情を持っていた、レズビアンだったのかもしれません。先述した斜線部以降の記載は、小説上の事実とすら異なっているのかもしれませんね。

 

 去年、何かと話題となった不倫問題ですが、あそこまで反響が大きかったのもマスコミがたきつけたせいかもしれません。今では当時と違ってSNSも火付け役に加わっていますが。

 

かもしれません、ばっかりでしたが、今回はこれで。

 

 

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