読書ノート

札幌在住の26歳。読書が好きで読書感想ブログをちまちま書いています。特に推理小説が好きですが、どんなジャンルの本でも読むように心がけています。おすすめの本は通年募集中です。

小説家による小説家の小説 ーーデヴィッド・ゴードン「二流小説家」

 

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕

 

「二流小説家」は2011年文春ミステリーベスト10の第1位、2012年このミステリーがすごい!第1位、2012年ミステリが読みたい第1位、で三冠を達成した、ディヴィッド・ゴードンによる推理小説だ。

 

様々な筆名を使い、ポルノ小説、SF小説、ミステリ小説、ヴァンパイア小説などを執筆する小説家ハリー・ブロックが、連続殺人鬼として界隈を震撼させたダリアン・クレイの告白本を書くことになる。執筆を依頼されたブロックは渋々ながらも筆を進めるうちに、クレイの手口にそっくりな殺人事件に巻き込まれることになる。というのがあらすじ。

 

500ページ超の長編ながら、アメリカ小説ならぬ、繊細で自虐的な主人公と軽妙洒脱な語り口でページのめくる手が止まらない。

 

ただ、読後感はあまり良くなかった。物語は次の一文から始まる。

小説は冒頭の一文が何より肝心だ。唯一の例外と言えるのは、結びの一文だろう。

この小説はスピード感あるサスペンスのように見せながら、この殺人事件が終結したあとまとめ直して執筆したというメタ小説的な立ち位置を取っている。

そのため、途中で小説の引用文が入り、物語の途中で読者への挑戦や小説家としての哲学などが紛れ込ませられている。

 

引用した冒頭の一文、そして結びの一文を読んでも、果たしてその一文が肝心であったのかは甚だ不明だった。

 

書かれた小説の体裁をとって書かれた小説、もいうメタ小説の構造自体がメタ小説なのではないか、と現実の猟奇的殺人の記事を漁ってみたものの、自分が探した範囲では見つけられなかった。

 

しかし、最終ページを読む限りでは、書かれた「小説の体裁をとって書かれた小説」の体裁をとって書かれた小説、のように思えてならないのだけれど。

 

 

 

【ご報告】本の帯に感想が載りました!

 

 

簡単なご報告です。

2018年8月23日に発売された本谷有希子さんの「静かに、ねぇ、静かに」の単行本の帯に僕 ( @masahirom_0504 )の感想を載せていただきました。

 

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

 

 

「すごい、なんか、すごい。」

 

わずか12文字(笑)

されど12文字です。

 

以前ブログに載せた感想から引用されたもので、本谷さんのタイトルと呼応するようにSNSの頭文字で書いたところ、印象に止まったようでした。

 

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

 

発売日当日に、講談社から献本していただきまして。純文学系の作家の中でダントツに好きな作家、本谷さんからの、僕の名前入りサイン本ということで感涙です。

 

一生の宝物です。

 

是非お買い求めください(笑)

 

 

最近の下着の標準化について

下着の校則についての話が話題となっていますが、この記事は全く関係なく、単に僕が最近コスパがとても良いと思っている下着類について書くだけの記事です。

ビジネスおよびプライベートに使えるコスパ良しの肌着をまとめました。

 

 

 

上肌着(ビジネス用)

ビジネス用の肌着は圧倒的にユニクロのエアリズムがオススメです。

www.uniqlo.com

 

圧倒的な安さ。これ5枚あれば平日は完璧です。メッシュ生地もありますが破れやすいので通常のがオススメです。ワイシャツとの兼ね合いを考えるとVネックがよく、すけにくさからベージュがオススメです。(黒もすけないと思います)

昔はポリエステル85%、ポリウレタン15%だったんですが、最近のはポリエステル89%、ポリウレタン11%と通気性を改善しています。

ただ、化学繊維である以上汗を掻くと乾きづらい点には注意が必要です。

 

上肌着(プライベート用)

プライベートでは前開きにすることも考えると無印のオーガニックコットンTシャツがかなり着心地が良い。

www.muji.net

もうこのご時世、どのTシャツもオーガニックコットンを使っているんでしょ、という感じではあるんですが、何よりも安く、何よりも着心地がよく、何回洗っても生地が磨耗しないのはさすがの無印クオリティという感じです。色はネイビー、グレー、白の3色あり、色違いで着まわせ、1枚でもシャツの下でも自然に馴染む風合いが最高です。丸首の方が柔らかい印象でより休日感、リラックス感が出ますよ。

 

パンツ

ポールスミス無印良品などいろいろなものを経て、最終的にたどり着くのがやはりユニクロのエアリズムです。

www.uniqlo.com

履いたあとははあまりの通気性に一瞬股がヒュッとするんですが、履いてないような心地よさがたまらない。それがこの値段で買えるんだから最高ですね。変に柄入りを買うよりも単色のネイビーやブラックで無難にしたほうが良いです。笑

 

靴下

靴下はビジネスでも普段からでも履ける消臭靴下を探していて、5本指ソックスなども試しましたが、一番良かったのは5本指ではなく普通のソックス。それがMXPのデオドラントソックスです。

www.goldwin.co.jp

スポーツ用品店やアウトドア用品店でも取り扱われるお墨付きの消臭ソックスのなかで、一番ビジネスでもプライベートでも両方使える!!となったのがこの靴下です。

僕は足汗をかなり掻くのですが、他の靴下と比較しても履いた瞬間からの心地よさが全然違います。1日履いた後でも足の匂いはおろか革靴の匂いすら何も匂いません。何度洗っても消臭力が落ちにくく、1足2千円でも試してみる価値大です。

www.goldwin.co.jp

ちなみにスニーカーソックスもあり、夏はスニーカー履いて足首は見せたいという場合にもバッチリ対応できるので、合わせて購入するのがマストですね!

 

 

ちなみにですが、ぼくもたまには靴下で遊びたくなります。おしゃれは足元からっていいますしね。そんな僕が個人的に気に入っている靴下ブランドがCHICSTOCKS(シックストックス)です。

www.chicstocks.com

日本で靴下製造で有名な県は?といえば奈良県!というぐらい、奈良県にはたくさんのソックスブランドがありますが、シックストックスもそんな奈良ブランドの一つです。

2017年に立ち上がったばかりのブランドですが、程よいデザインと綿メインの柔らかい履き心地がたまりません。

友人への贈り物にも最適で、サンダル、スニーカー、革靴、どんな靴にでも馴染むオススメの靴下です!

 

 

また、変わったり追加したりがあれば随時更新します。

 

 

アンナ・カヴァン「氷」(ちくま文庫)

久々の読書記録。最近はミステリの枠にとどまらず、SFも読むようになりました。といっても、SF初心者。まずは、というところで世界的名作を読むことにしました。
今回は、アンナ・カヴァンの「氷」(ちくま文庫)です。

 

文庫版のこの黒一色の表紙が、とっても格好いいです。黒色の背景に浮かぶ「氷」の字は、 まるで結晶のように見えますが、作品の中の「氷」は終焉の使者として描かれています。

氷 (ちくま文庫)

氷 (ちくま文庫)

 

 (Amazon 内容紹介より)

異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような“高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで、世界中に冷たい熱狂を引き起こした伝説的名作。

 

 

この物語の主要な人物(および現象)は、「私」と「少女」(と「長官」)、そして迫り来る「氷」のみです。フィヨルドなど地形名称は登場するものの、人名や地名などの固有名詞は一切登場せず、極限まで抽象化された世界の中で、氷に閉ざされる世界の終焉、「私」と「少女」のやりとりが淡々と記されています。

 

この物語は読みづらい。その理由は3点あります。

 

1点目は、構図の不変です。迫り来る「氷」、「少女」を追い続ける「私」、「私」を拒み続ける「少女」。物語の構図は最後まで殆ど変わりません。そして「私」なぜ偏執的に「少女」を追い続けるのか、その説明は最後までなされません。最後に「少女」は「私」を受け入れ始めますが、物語はそこで終了し、彼らがその後氷に閉ざされた世界に飲み込まれて行ったのかどうかは描かれていません。「私」の執着にフォーカスすると男である「私」の自己満足小説のように読めてしまいますが、それは本質ではないのでしょう。

 

2点目は、不連続的な連続性です。物語としては、虚構の中で「私」の現実と幻想が、不連続的に複雑に入れ代わり続けるのですが、文章としてはその入れ替わりが連続して書かれているため、ここまでは現実、ここからは「私」の妄想、と区切りをつけて読み進めることが非常に難しい。村上春樹の小説のようです。むしろ、「私」自身が妄想と現実の狭間で現実を生きているものとして読むべきなのでしょうか。

 

3点目は物語の抽象化です。先ほど触れたように物語が過度に抽象化されていることから、彼らが今どこにいて、昼なのか夜なのか、どこに向かっているのか、の情報が与えられないまま読者は読み進めなければなりません。しかしだからこそ、真っ白な世界に「少女」と「私」の姿や行動が、克明に浮き彫りになる、その対比が美しく見させてくれるのかもしれません。

 

この、不変の構図、不明瞭な識閾、抽象化された世界観が、この物語をとても読みづらく、しかしとても幻想的に変えているのだと思われます。

 

 


クリストファー・プリーストの序文には、以下のように描かれています。

スリップストリーム は、科学(とその所産)を無意識の領域に、メタファ、エモーション、シンボルの領域にシフトさせる。スリップストリームは、現代の科学(および科学がもたらしたもの)に対するひとつのレスポンスであり、科学を理解することではないとしても、科学をめぐる人々の感覚を表現してみせる試みなのだ。しかし、これは"アレゴリー"ではない。  

そして、この「氷」はスリップストリームを代表する作品であるとされています。物語を読み終えた後、この序文に再び触れた時、スリップストリーム作品はアレゴリーではないという文に驚きました。

 

アンナ・カヴァンは、自殺未遂、精神病院への入院、そしてヘロイン中毒。この「氷」という作品を上梓した一年後に、ヘロインの摂取によりなくなっています。だからこそ、この「氷」という物語の少女は「アンナ・カヴァン」自身であり、「私」は「ヘロイン」、そして「氷」は「死」のオマージュであるように見えてならなかったのです。だからこそ、物語が進むにつれ世界は抽象化・単純化されていった、「少女」は「私」を拒み続け、しかし最後に「氷」に閉ざされる世界で「私」を受け入れたのだろうと。

 

こういうアレゴリーは小説・漫画・ドラマ・ゲーム、様々な作品で見られます。最近プレイしたRIMEというゲームもこの類でしょう。

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この考え方を、クリストファー・プリーストは真っ向から(それも序文でだ!)否定しているのです。この物語にアレゴリーとしての厳密性はなく、ただただ神秘的で、蠱惑的であると。(クリストファーの記載では「氷」=「ヘロイン」と仮定している)

 

しかし、そうするとこの物語はたちまち捉えどころのない物語として、雲散霧消してしまう。私にはどうしても、そのように見えてならないのですが...。やはり、読むのが難しい物語であることには変わりないのでしょう。

最近の読書 逸木裕「星空の16進数」、辻堂ゆめ「片想い探偵 追掛日菜子」

久しぶりの投稿です。引越し準備でばたばたしていました。最近、国内より海外ミステリを読むことが多くなっていて、国内ミステリは気になる新刊を追う形になっています。さらに、小説以外にも読まなければならない専門書なども多く、買ったはいいけど読めていないものを多く積み上がってしまって、読書時間を十分に設けられず若干やきもきしています。ただ、アニメとか漫画も並行して読んでいるせいでもあるんですけど…。笑

 

最近買った本はこんな感じです。

・辻堂ゆめ「片想い探偵 追掛日菜子」(幻冬舎) →既読

・逸木裕「星空の16進数」(KADOKAWA) →既読

似鳥鶏「名探偵誕生」(実業之日本社) →未読

ジョー・イデ「IQ」(早川書房) →未読

・木元哉多「閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室」(講談社タイガ) →既読

・F「真夜中乙女戦争」(KADOKAWA) →読書中

・ピーター・スワンソン「そしてミランダを殺す」(東京創元社) →既読

・ロバート・ロプレスティ「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」 →既読

・オムニバス「The Best Mistery 2018」(講談社) →読書中

・芦沢央「火のないところに煙は」 →買ったばかり

高橋久美子「いっぴき」 →買ったばかり

連城三紀彦連城三紀彦傑作集1 六花の印」 →買ったばかり

 

ちなみにアニメはPrime Video配信終了になった「宇宙よりも遠い場所」を夢中で見てしまいました。大人ながらに各話涙ながらに見ていました。自分のなかでもかなり印象にのこったアニメでした。漫画は、「川柳少女」「まったく最近の探偵ときたら」「ib〜インスタントバレット〜」「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦」「大家さんと僕」あたりをぐわあああと読みました。「星野、目をつぶって。」と「僕らはみんな河合荘」、「恋は雨上がりのように」と大好きな作品が次々と完結してしまったのは嬉しくもあり、寂しくもありというところ。現在連載作品で読んでいるのは「かくしごと」と「BEASTARS」、「空電ノイズの姫君」、「ゆるキャン△」、「アルテ」、「第七女子会彷徨」、「バーナード嬢曰く。」とこんなところです。

 

さて、逸木裕さんの「星空の16進数」、これでもかと楽しみにしていました。一作目の「虹を待つ彼女」から発売と同時に読ませてもらっています。2作目の感想を書いたのがちょうど一年前ぐらいです。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

逸木さんの小説の主人公は高校生ぐらいの女の子が多く、今作も高校には通っていないものの同年代の女性が主人公です。ただ、過去2作は屋上から物語が始まっていますが、今回は違いました。(笑) 装画はloundrawさん、とても綺麗な表紙絵です。

 

星空の16進数 (角川書店単行本)

星空の16進数 (角川書店単行本)

 

(Amazon 内容紹介より引用)

 私を誘拐したあの人に、もう一度だけ会いたい。色鮮やかな青春ミステリ。

ウェブデザイナーとして働く17歳の藍葉は、”混沌とした色彩の壁”の前に立つ夢をよく見る。それは当時6歳だった自分が誘拐されたときに見た、おぼろげな記憶。あの色彩の壁は、いったい何だったのだろうか――その謎は、いつも藍葉の中にくすぶっていた。ある日、届け物を依頼されたという私立探偵・みどりが現れ、「以前は、大変なご迷惑をおかけしました」というメッセージと100万円を渡される。かつての誘拐事件しか心当たりのない藍葉は、みどりに誘拐事件の犯人・朱里の捜索を依頼する。当時、誘拐事件はわずか2時間で解決されていた。藍葉の思い詰めた様子と自身の好奇心からみどりは朱里を捜し始め、藍葉は”色彩に満ちた部屋”の再現を試みる。己の”個性”と向き合う藍葉と、朱里の数奇な人生を辿っていくみどりはやがて、誘拐事件の隠された真相に近づいていくが――。

 

少女時代に誘拐に会った女の子が誘拐犯を探す物語、というと最近「誘拐肯定じゃないか」というナナメ上の批判から放送取りやめになった「幸色のワンルーム」を思い出しますが、この作品は誘拐を肯定しているわけではありません。不遇の少女時代に発生した誘拐事件の中で、色彩感覚に優れた主人公が、誘拐された時の記憶に残っている色のついた部屋のことをどうにかして突き止めたい、色彩の共感覚を追い求めることがこの物語の主眼のように思えます。

 

ぼく自身、美術に詳しいわけでもないですし、デザイナーのような仕事をしたこともないですが、配色に優れたインテリアにはわくわくしますよね。モノトーンで決めた近未来感漂う機能美しかり、ヴィンテージ感溢れる名作家具の中でバランスよく散りばめられたスカンディナビアンテイストのお部屋であったり。 


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文中には、RGB値を16進トリプレット表記したウェブカラーが時折顔を出します。白は#FFFFFF、みたいなやつです。スタイルシートで遊んでいた人には馴染み深い表現方法ですが、そうでない人にとってはなかなかはてなマークですよね。0から9までの十種類の文字で表現するのが10進数、それにA,B,C,D,E,Fの6種類を加えた0からFまでの十六種類の文字で表現するのが16進数です。16進数にすることで約16百万の色を6桁で表現することができるんです。タイトルの16進数とはこのことですね。

 

藍葉の生活は星のない星空のようにモノトーンだったのだと思います。父親は不明、母親はシングルマザーの生活に耐えられず頻繁にネグレクトするようになるなど。クラスメイトと馴染めず高校を辞め、母親に距離を置かれ、上から指示された仕事を淡々とこなすだけの生活。だからこそ、誘拐された時の、正面から訴えかけてくるような色鮮やかな記憶は、しっかりと目に焼き付けられていたのでしょう。

 

誘拐犯を探すという強い好奇心は、藍葉の単調な生活に少しずつ色を与えて行きます。(そしてみどりは昔のやり方を徐々に思い出していきます。)その誘拐の物語の真相、パズルのピースがカチッとはまった様相は、配色のきれいに収まったステンドグラスのようにも、真っ暗な空に光る無数の煌めきのようにも思えます。自分のウィークポイントが個性であると認識した藍葉は、もう迷わずに生きていけるのでしょう。逸木さんの書く小説は、ミステリだけではなく、主人公の成長が描かれていて、それがまたページをめくる手を止めない一つの理由かもしれません。

  

物語の最後に、札幌が出てきたのも個人的にはとても嬉しかったです。時計台(今は改装工事中ですが)や北海道庁の赤レンガのコントラストなんて気にしたことありませんでしたけど笑 これからは#CD5E3C, #7EBEAB, #3A5B52を感じながら通勤しようと思います。

 

 

もう一つは 辻堂ゆめさんの「片想い探偵 追掛日菜子」です。辻堂さんは、(たしか)同い年ということもあり、もうこんなに作品を出してるなんてすごいなぁと思いながら、デビュー作から即買いして読み続けている作家の一人です。ただ今回の作品の主人公は辻堂さんの作品史上ダントツにぶっ飛んだキャラです。

 

片想い探偵 追掛日菜子 (幻冬舎文庫)

片想い探偵 追掛日菜子 (幻冬舎文庫)

 

 (Amazon 内容紹介より引用)

追掛日菜子は舞台俳優・力士・総理大臣などを好きになっては、相手の情報を調べ上げ追っかけるストーキング体質。しかしなぜか好きになった相手は、殺人容疑をかけられたり脅迫されたりと、毎回事件に巻き込まれてしまう。今こそ、日菜子の本領発揮! 次々と事件解決の糸口を見つけ出すが――。前代未聞、法律ギリギリアウト(?)の女子高生探偵、降臨。

  

大好きだけど近づき過ぎず、遠目から見守って応援し、お金や時間を捧げたくなる対象、彼女たちはそれを「推し」と呼びます。

主人公の日菜子は、そんな「推し」を推しすぎるストーキング体質という強い個性の持ち主。そして「推し」が巻き込まれた事件を、盗聴やSNS、不法侵入など「いや、もうアウトでしょ!」という手法を使って解決していくキャラミステリです。

ただし、さすがはこのミス出身の辻堂さん、ぶっとんだキャラだけではなく、綿密に設計されたミステリもピカイチです。

 

実は、この小説は、一般に世に発売される前に、最終ゲラの形で読ませていただくことができました。貴重な体験です。まるで編集者のような気持ちで「わき腹に刺さっただけで失血死(しかもほぼ即死)するのか」や「アウトドアナイフはおそらくMoraknivがメジャーだと思うけど小道具のナイフと似ることなんてあるのか」など、色々勘ぐってしまったのはここだけの秘密です。


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 この小説には、俳優や子役などいろんな日菜子の「推し」が出てきます。ぼくは完全に日菜子に翻弄されるお兄ちゃんの気分で読んでいました。自分にも「推し」がいるよ!って人はきっと日菜子の気持ちになりながら共感すること間違いなしです。

 

実はこれ、全部辻堂さんの体験談なんじゃ、と作家の人間性すら疑われかねないほど暴走気味な日菜子の片想い探偵っぷりをとくとご覧あれ!ということで、「推し」がいる方もそうでない方も是非読んでみてください!

 

今回はこの辺で。