読書ノート

札幌在住の26歳。読書が好きで読書感想ブログをちまちま書いています。特に推理小説が好きですが、どんなジャンルの本でも読むように心がけています。おすすめの本は通年募集中です。

すごい、なんか、すごい。本谷有希子「静かに、ねぇ、静かに」(群像3月号/講談社)

先日発売された「群像」3月号に本谷有希子さんの創作3本が一挙公開されていた。本谷有希子さんは、純文学系の作家の中で一番好きな作家で、ずっと楽しみにしていたので、(北海道)の発売日に買って、さっそく読んだ。 

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群像 2018年 03 月号 [雑誌]

群像 2018年 03 月号 [雑誌]

 

 

「静かに、ねぇ、静かに」という創作群の中に、いい歳になっているにもかかわらずインスタで自己表現する3人組のマレーシアの旅の模様を描いた「本当の旅」、ネットショッピング依存症の妻をネットから解放するために知り合い夫婦とキャンピングカーでの旅に出た夫婦の話を描く「奥さん、犬は大丈夫ですか?」、夫婦揃って職を失いどん底に落ちたのは印のせいだ、と二人だけが知る印を動画に撮ろうとする夫婦の話を描く「でぶのハッピーバースデー」の3つの短編が掲載されている。

 

全体タイトルの「静かに、ねぇ、静かに」はの頭文字の通り、SNSが今回の短編集のテーマ。インスタグラム、AmazonYoutube、といったところだろうか。(ネットショッピングはSNSではないが、アフィリエイトやブログ、SNS上でのクチコミ等も含めているのだろう。)今の社会のコミュニケーション、社会ツールを織り交ぜた人間たちの群像劇は、どこかのコミュニティーや家庭を覗き見しているような感覚にさせられる。

 

「本当の旅」は、ハネケンとづっちんとヤマコがマレーシアに行く。彼らは来年40になるぐらいの年齢だが、そんなの関係なくハネケンだしづっちんだしヤマコだ。ラインで連絡を取りながら空港に集まり、検査場で迷惑をかけながら、フードコートのおばさんに文句を言いながら、マレーシアへと旅立つ。マレーシアについてからも、キングサイズのベッドに飛び込みはしゃぎ、男と女なんて関係なく3人で一部屋、ベッドさえも共有すれば、「まじ」で「ヤバイ」会話を繰り広げる。途中から、この物語は3人の大学生が貧乏旅行する話のように感じてくる。

しかし、昼寝から目覚めると鏡に映るのはおっさんだし、隣で横たわっているのは、どこからどう見ても黒ずくめのおばさんだった。いわゆる「いい年こいてはしゃいでる」状態だと気づかされる。でもそれと同時に「その光景を見た瞬間、ズゴッ、という何か重たいものが外れるような音」がハネケンの頭に響く。なにかの箍が外れたのか、社会という重圧から解放されたのか。何れにしても、彼らはおじさんおばさんであると同時に、その瞬間だけ年齢から解放される。

そのあとも屋台巡りを動画に収め、自撮り棒で写真撮影をし、Instagramに画像を上げるための素材を撮りまくる。彼らは本当の旅は「してる時そのものの中」にはなくて、「あとから見返す時間」なんじゃないか、と話をしながら、彼らはタクシーに乗る。目的地ではなく、人気のない廃墟に連れていかれても、彼らは恐怖に怯えながらも、笑顔でインスタ用の写真をとったり自撮りをしたりする。そして......。

 

「ファインダー越しの私の世界」だったり、「置き画クラブ」だったり、インスタ映えを狙った独特の文化が存在する。見えないところはいい。見えるところだけでいい。いかに素敵な写真を撮るか。それが全てだ。水面下の白鳥は彼らには関係ないのだ。

 

そういえばこんな事件もありました。

www.nikkei.com

「本当の旅」は後から見返したときに、旅をしたことを感じられること。旅からは、絶対に安全に戻らなければならないのだ。

 

 

「奥さん、犬は大丈夫だよね?」はネット依存症の浪費家の主人公と超倹約家の相手がたの奥さんとの対比が面白い。「登山行くの?じゃあこのトマトとコーヒー淹れた魔法瓶持って行きなさい?お金も使わないし、あなた好きでしょ?」あー、いるいる!いや登山なんて荷物なるべく軽くするんだけど!みたいな。でも、そんなこと関係なく、ただの親切心っていうところに人柄がありありと出ているし、でもそのトマトとコーヒーを持って山を登ってしまう旦那さんの人柄もありありと出ている。お互いに仕方ないなと思うところはありつつも受け入れている、こちらの夫婦は長続きしそうだが......。主人公の夫婦はそうはいかないみたい。旦那は妻の浪費ぐせに怒り心頭だし、妻は旦那の言葉すくななところや他人の前で自分を貶めようとする行為にイライラしている。

一行は、キャンピングカーに乗って道の駅のパーキングエリアで一泊してから目的地に向かうらしいが、パーキングエリアでこの物語は終わる。相も変わらず、旦那が怒り散歩に出かける。酒の勢いもあって、妻は旦那の愚痴を倹約家夫婦に漏らす。そこでいたずらでキャンピングカーの位置をずらして旦那を驚かせようとする。飲酒運転になるがパーキングエリア内だからまぁいいだろう。妻は車を動かそうとするがギアがバックに入っていたのか縁石に乗り上げる。その後ギアを戻してキャンピングカーを移動させて旦那を待つが一向に帰ってこない。倹約家夫婦は旦那をさがしにいくと......。

結論は分かっている。旦那はその前の休憩の時、キャンピングカーの後方に寄り掛かって、煙草を吸っていたし、奥さんは旦那が戻っていたらあの狭いキャンピングカーのロフトの暗闇で共に過ごすことを憂いた直後思い立ったように、エンジンをふかし、バックにギアを入れたまま、アクセルを強めに踏み込んでいるのだから。(きっと、タバコの火がバックミラーに映っていたのでしょう。)

でも話の主題はそこではなくて、奥さんのネットショッピング依存にある。奧さんは普通に買い物にはまっているだけだろうと軽く読んでいると、「次に買うもの探しに追われ」るようになり、「必要なものを全部買い尽くしちゃったらどうしよう」と思い始める。そして子供ができたときも、子供ができたことへの喜びより「赤ちゃんのものがいくらでも買える」と思ってしまった、奥さんのネットショッピング信仰が恐ろしい。欲しいものを買うために、ネットショッピングという手段を利用するのではなく、ネットショッピングを利用することが目的になっている。

倹約家夫婦が旦那を見つけているときに妻は思う。あそこに横たわっているものが、「何が必要になるだろう」と。

 

僕もかなりの頻度でAmazonを利用している。年間100万円ぐらいは使っていると思う。食料品も本もネットで買えるし、ゲームも音楽も映画もネットでダウンロード出来る。その手軽さが恐ろしい。クリックすることに意義を感じ始めるから、僕もきっと依存してる。買ったのに使わないもの、読んでいない本、やっていないゲームが大量にあったりしていつも呆れられる。流石に人が死んだときに何を買おうかな、とは思わないかもしれないけど、友達が結婚したときに、おめでとう!、よりも先に、じゃあ新しいネクタイ買おうかな、とかシャツを新調しようかな、とか考えることもあるから同類なのだと思う。おそろしやおそろしや。刑務所には入りたくないので、節約しようと思ったのでした。

 

最後に「でぶのハッピーバースデー」。炎上しそうなタイトルだけれど、「でぶ」っていうのは旦那の譲歩したいいかたなのかもしれない。「でぶってほどじゃない」し、それよりも歯並びの悪さが目に付くのだけれども、旦那はでぶと呼ぶ。二人は夫婦揃って働いていた会社が倒産し、ハローワークで職探しを始める。その頃から、旦那はでぶと呼ぶ。会社が倒産したのだって、職探しがうまくいかないのだって、「何かを諦めた人間」だという印が付いているからだと旦那はいう。それが歯並びの悪い歯だと。でも二人の夫婦関係はいつだって対等なところが少し歯がゆい。

その後、でぶは職を見つけ、旦那も遅れて同じところで務め始める。ことはうまく回り始め、その勢いもあって、でぶは歯列矯正のための抜歯をする。まずは片側、右側だけ。ただ、術後の腫れ・熱のために長期で休み、店長に次はないと釘を刺されてしまう。片側だけ歯並びの良いバランスの悪い顔のまま二人とも働き続けているが、段々と働く事を疑問に思い始める。

Youtuberの特番を見て、でぶの動画を公開しようと旦那が言い始める。「そのふざけた顔がもっともっとふざけていく様子を毎日とって見せ続ければいいんだよ」、旦那は「でぶの新しい右側の歯」が誕生日プレゼントに欲しいという。抜歯した歯ではなく、少し良くなった歯並びの歯を、だ。それに対してでぶはいう。「あんたのいう通りかも、あたし達は、もっと何かをしなきゃいけないのかも。」最初は、近くの歯科の矯正モニターですら、自分の一番恥ずかしいところを見せたくないと言っていたでぶが、不特定多数への動画配信もありかもしれない、なんて思い始める。

「いいね」の数や再生数を稼ぐために徐々に過激になっていくのは今に始まった事ではない。スナッフ・フィルムやハッピー・スラッピングもその一種だし、コンビニのアイスケースに入ったり、飲食店の流しで風呂に入ったり、とんかつソースを鼻に突っ込んだりして、それを写真や動画にとって流して炎上する。だんだんと善悪の判断がなくなり、面白いか面白くないか、それだけが判断基準となるのは、楽しいけれど危険だ。

 

 

3つの短編を読んだが、彼らは皆、何かに麻痺している。もう私たちの生活からは、インターネットやSNSを切り離すことはできない。 ただ、それに依存するのではなく、共存していかなければならないのだと、強く思った。

 

 

本谷有希子さんは芥川賞をとった「異類婚姻譚」も含め、どの作品も、人間性が豊かな登場人物に溢れている。ただ突飛ではなく、「あぁ、なんかいる気がする」「こういう人、どっかであったことある気がする」と思えるような人間性だ。そしてブラックユーモアや皮肉や悪意も入りみだれる。それがとてもおもしろいので、群像3月号も他の作品も未読の人は是非とも読んで欲しい。

 

異類婚姻譚

異類婚姻譚

 

  

あの子の考えることは変 (講談社文庫)
 

 

幸せ最高ありがとうマジで!

幸せ最高ありがとうマジで!

 

 

佐藤航陽「お金2.0」/落合陽一「日本再興戦略」(Newspicksbooks)

最近Newspicksbooksから出版される書籍が、Kindleの上位によく上がっています。 

なるべくベストセラーになっている書籍は読むようにしようと心がけているので、今回は佐藤航陽さんの「お金2.0」と落合陽一さんの「日本再興戦略」を読みました。自分用のメモも含めて、気になったところをピックアップ。

 

「お金2.0」は、最近ICOによる資金調達で話題になっていた、メタップス代表取締役の描くこれからの「お金」についての本です。この本では、資本主義が限界を露呈し始め、いわゆる今までの「お金」の価値尺度を超える、新しい「お金」の概念を踏まえて、価値主義へと移り変わっていくことを示唆していました。

 

 

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

 

 

実際に私たちが生活している経済は少なくとも2つの性質の異なる経済が混ざり合ってできています。労働して給料もらい、コンビニに行ってお金を払うと言う一般的な経済は「消費経済(実体経済)」と呼ばれています。大半の人はこの経済の中で生きているはずです。もう一つが、お金からお金を生み出す経済、これは「資産経済(金融経済)」と区別されています。こちらの経済をメインに生きている人は資産家や金融マンなどのごく一部の人たちです。ただ、世の中に流通しているお金の流れの9割近くは資産経済のほうで生まれています。

 

人間の生活に必要なお金というのは極めて少額だと思います。仮想通貨を含めた投資・投機にかかる支出がほとんどです。昔は家計を判断する材料として、エンゲル計数が使われてきましたが、これから個人の支出に占める割合は、どんどん広い意味での「娯楽」「趣味」が大きくなっていくと思います。

 

無形資産として反映させることもできますか、それはほんの一部です。

(中略)

ITなどの企業は財務諸表を見ていても、企業の競争優位性となる価値が一切反映されていないので、その企業の将来性を予測することは難しいのです。

(中略)

ものを扱わないネット企業で、財務諸表上の価値として認識されていないものの1つが「人材」、もう一つが「データ」です。

 

公認会計士の自分が言うのもアレですが、今の会計制度や財務諸表が、株式市場において実体経済の尺度として機能しているのかは疑問です。いわゆるノウハウや顧客データの価値の測定が難しく、対価として判別不明な部分についても、現行制度で企業結合における超過収益力を「のれん」として計上することを認めていますが、あくまでも企業結合時における投下資本の範囲内であり、価値の再評価は減少方向でしかなされません。また、自己創設のれんは認められていません。

極端な話、「社員1名(=社長)で自己資金でスタートアップしました。自分で開発しているのでほとんど経費はかかりません。今は無料で提供してデータを収集しているところです。」という企業は財務諸表上、何も活動していないことにみえるかもしれません。

 

 

そのため、「可視化された『資本』ではなく、お金などの資本に変換される前の『価値』を中心とした世界」への変化が予想され、価値とは次の3つから構成されると述べられています。

 

①有用性としての価値:「役に立つか?」という観点から考えた価値

②内面的な価値:愛情、共感、興奮、行為、信頼など、実生活に役立つわけではないけれど、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす

③社会的な価値:個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動

 

そして、「資本主義の問題点はまさに①の有用性のみを価値として認識して、その他の2つの価値を無視してきた点にあり」、そういった従来の基準では適切に価値を判断できないからこそ、価値主義による価値を価値尺度により判断していこうじゃないですか、という流れです。

 

個人が自分に最も適した経済を選んでいくという「選択」かあるだけです。

落合さんは、ワークアズライフでレイヤー化した経済を選択し行き来する、と言っていました。

 

先程の価値と言う観点からすると30歳前後の世代は、すでに車や家や時計などのものに対して高いお金を払うと言う感覚がわからなくなりつつあります。

 

ほんとこれで、高い時計よりもアウトドアウォッチやスマートウォッチが欲しいし、車は新車はいらないしシェアでもいい、不動産は所有するリスクが高いから賃貸でいいし、豪邸への憧れはない。備え付けで飾らなくていいから、自分で自由にオプションできるようになってほしい。

 

自分なりの独自の枠組みを作れるかどうかの競争になります。枠組みの中の競争ではなく、枠組みそのものを作る競争です。

 

完全にステレオタイプな枠組みの中で動いてます。よろしくないですね。

 

これからの価値基盤は従来型と大きく変わってくるのは至極納得できる話です。自分も今までの常識に囚われず、新しい価値観を認め、リスク評価していかなければならないですね。

今話題のcoincheckも仮想通貨が悪いという的外れな議論にならないように気をつけなければなりませんね。

 

 

続いて、落合さんの「日本再興戦略」を読みました。研究者やアーティスト活動など、マルチで活動している落合さんですが、ワークアズライフなど、自分の働き方やこれから生きていくためにはこうすべき、などいつも個人に焦点をあてているとイメージだったので、「日本」というテーマで書かれていたのは意外でした。(勝手なイメージですね。)

日本をよくしていくためにはどうするべきか、というのを、日本の歴史の特異性を学び、海外と悪い比較をせずに、持ち味をいかして、再興していこう。まさにタイトル通りの一冊になっていました。

 

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

 

 



 

「個人」として判断することをやめればいいと僕は考えています。「僕個人にとって誰に投票するのがいいか」ではなく、重層的に「僕らにとって誰に投票すればいいだろう」(中略) と考えたらいいのです。個人のためではなく、自らの属する複数のコミュニティの利益を考えて意思決定すればいいのです。

(中略)

これからの日本に大事なのは、いろんなコミュニティがあって、複数のコミュニティに所属しつつ、そのコミュニティを自由に変えられることです。

 

経済=コミュニティとするならば、佐藤さんの書籍の中でも同様の話をされていました。同じ色に染まる必要はなく、自分の色でいられるところで咲きなさい。そして、それぞれの「僕ら」のなかで、「僕」として存在すればいい。というのは、平野啓一郎さんの分人主義に通ずるところがあるように感じます。

 

オンとオフの区別をつける発想自体がこれからの時代にはいません。無理なく続けられることを、生活の中に入れ込み複数行うのが大切なのです。

ワークアズライフですね。残業などの概念もなく、やりたいことをやりたいだけやって生活する、幸せの究極系ですね。

 

 

昭和の時代においては、マスメディアが大衆の画一的な需要を作り出すと言う戦略は正しかった。マスメディアが国民全員に同じ方向を見させることによって、「次は自動車が売れる、テレビが触れる、洗濯機が売れる」と言うふうに消費行動読みやすくなったのです。これは企業にとって好都合です。どこの分野に投資したらいいかわかりやすかったですし、国内で発達した技術的価値を国外に移転することができました。これがうまい戦略だったこと間違いありません。

(中略)

もう一つ、トレンディードラマに代表されるマスメディアがもたらした害悪があります。それは、拝金主義です。今の日本は拝金主義すぎます。

 

高度経済成長化では正しい選択でしたが、そのステレオタイプな像に未だに洗脳されているということですね。たしかに、自分が経験したことがないことは、時に作られた映像から造り上げることがあります。最近は、Youtubeで幼児向けに、「小学生の一日」や「薬屋さんでお買い物」などの教育的動画を配信していたりしますが、これも洗脳ですよね。実際に「小学校」や「薬屋」を訪れた時、映像との違いを受け入れられなくなる可能性はあります。

 

お金からお金を生み出す職業が、一番金を稼げる(=価値がある)と考えると言うこと自体が間違っているのです。制度や発明だと生産性のある事は何もしていませんし、社会に富を生み出していません。それなのに、金融機関に行きたがる若者が多いのは、マスメディアで洗脳されているからです。ドラマの中に出てくる主人公が銀行で働いている設定だったりするのは、マスメディアで報じられる金持ちへの憧れがあるのでしょう。

(中略)

医者は重要な職業であり、価値を産みますが、優秀な人が一緒にばかりなる必要はありません。弁護士は、社会制度を複雑にしたおかげで生き残った職業です。それは公認会計士や税理士も同じです。これらの仕事の給料は高いですが、社会に富も価値も産みだしていません。制度を難しくこねくり回しているだけなので、あまり意味がないのです。今後、AIが進化していったら、弁護士や公認会計士は今後さらに不要となってくるでしょう。

厳しいですが、おっしゃる通りです。これから生き残るためには、公認会計士+αにならなければなりません。大手監査法人での副業・兼業緩和を訴えていく必要があります。

 

これから日本をアップデートし、日本を再興するためには、まず意識を改革しなければなりません。これまでの常識を捨てて、新しい時代を生きるための能力を育む必要があります。では、新しい時代に磨くべき能力とは何でしょうか。それは、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です。

バランス感と先見の明。 

 

リサーチメソッドと言う授業は、アメリカの大学にはだいたいあるのですが、日本にはほとんどありません。これは、ヨーロッパ人がサイエンスを作るときに獲得した作法です。

(中略)

専門性を持っている人がMBAに行くのはいいですが、

(中略)

MBAを学ぶ位であれば、リサーチメソッドやアートを学んだ方が良いでしょう。今の日本の教育を受けていると、どこにもアートに触れる機会がありません。

(中略)

アートを学ばないと、ものの複雑性を理解できません。生涯教育というのであれば、アートも組み込んでいくべきでしょう。アートを学ぶといっても、美術館に行けという話ではなく、アートの基本作法を学ぶと言うことです。どういうお作法でアートができているかとか、アートの価値はどこにあるかとか、そうしたことを学ぶということです。

これは自分用のメモ。全く意識したことがありませんでした。

 

これからは、ワークとライフが無差別となり、すべての時間がワークかつライフとなります。「ワークアズライフ」となるのです。生きていることによって、価値を稼ぎ、そして価値を高める時代になるのです。

そうした時代において一番重要なのは「ストレスフルな仕事」と「ストレスフルではない仕事」をどうバランスするかです。要するに、1日中、仕事やアクティビティを重視していても、遊びの要素を取り入れて心身のストレスコントロールがちゃんとできていれば、それでもいいのです。

ストレスコントロールもまた、ポートフォリオマネジメントということですね。

 

 

よく、何かストレスマネジメントでオススメはありますか?と言われるのですが、個人として、ストレスマネジメントのために力を入れているのは、筋トレです。

最後に。落合さん、筋トレしてたんですか。

 

 

たまには、小説以外の本も読まなければいけませんね。上記の2冊を読んでトレンドワードがだいぶ理解できたので、よかったです。

ただ、Kindle版で買って、気になったところをハイライトしていたのですが、出力しようとしたら書き出し制限がかかっていて、「せっかくの機能を殺すな!」と思いました。仕方なく音声入力したのですが、舌ったらず&声がこもりがちなので、間違っている部分があるかもしれません…。

 

 

一月とクラフトビールと本の話

もう1月も終わろうとしているのですが、年末年始休みが長かったせいでいまだに休みボケをしています。年始から、北海道神宮に初詣(親戚づきあいを避けるために何をお願いするでもなく参拝した)に行き、今年はここ10年で最高の雪質と言われているニセコスノーボードにいき、東京にいき、トマムに行き、インフルエンザになり、とめまぐるしい1ヶ月でした。

そう、インフルエンザにかかりまして、大変辛い一日だったのですが、薬を飲めば途端によくなり、ただただ仕事初めにもかかわらず、有給にめかしこんで夜更かしでモンハンワールドをやり続けるという始末。それで体調がだんだんよくなるのだから難儀なものですね……。今作のモンハンは10年ぶりぐらいにプレイステーション系で出るということでとても楽しみにしていて、当時中学生から高校生だった僕が2,000時間も費やしたゲームの最新作なのだから、インフルエンザを気にしている暇などなく、3日で40時間ぐらいプレイしたのでございました。

 

1月の半ばに東京に行った時は、初台にあるfuzkueという読書喫茶にいってきました。新宿駅から京王新線にのって一駅のところにある初台は、駅を出ると、いわゆる「地元の駅前商店街通り」になっていて、山手線も一駅外側に出ると、街並みもこんなに変わる、東京の変わり早さをまた一つ味わえました。東京は広い。

fuzkueは読書専門のカフェで、注文・お会計以外は基本的に私語禁止、読書人による読書のための喫茶店。料金形態が面白く、飲食代のほかに利用料が取られるのだが、飲食すればするほど、つまり長居すればするほど、利用料は少なくなり最終的にゼロになるシステム。30分でも3時間でも、だいたい2,000円かかる仕組みになっていて、店主の「どうせ同じぐらいのお金払うんだったら、どんどん長居して本読んでってよ」という意気込みが聴こえるようでした。御多分に洩れず、僕も結局4時間ぐらいずっと本を読んでしまいました。良い東京出張。

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本の話。2018年の読書は「(仮)ヴィラ・アーク設計趣旨 -VILLA ARC(tentative)」から始まりました。風変わりなタイトルですが、内容は館もののミステリ。ただし作者の家原英生さんは一級建築士で、館ものミステリも、一般的な「館を利用した殺人のトリック」よりも「館がそのような設計になっている理由」、つまり設計趣旨に重きを置いた作品になっているところが面白かったです。著者略歴にグッドデザイン賞江戸川乱歩賞最終候補が並ぶ違和感から楽しめる作品になっていました。

 

 

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そこからアイスランドミステリへと読書の道は続きます。昨年「湖の男」が話題になった、アーナルデュル・インドリダソンのエーレンデュル警部シリーズの舞台、アイスランド。日本語になっているアイスランドミステリはそんなに多くなくて、今回読んだラグナル・ヨナソンの「雪盲」やヴィクトル・アルナル・インゴウルフソンの「フラテイの暗号」の他には、イルサ・シグルザルドッティルの「魔女遊戯」が挙げられます。(現在未読・積読アイスランドは夏でも平均気温は10度前半ぐらいと一年中涼しい気候も相まって、もの悲しさの残る物語が多く、文章も感情よりも事実を語っているように感じられるのですが、北海道に住んでいるせいか、僕にとってはその物悲しさが心地よく感じ、どハマりしています。いつかアイスランドにいってやるんだ、と心に秘めてTRANSITのアイスランド号(バックナンバー)を買いました。

ちなみに、アイスランド人には苗字がないらしく、ファーストネーム+父親のファーストネーム+ソン(=son、男の場合)orドッティル(=daughter、女の場合)となり、例えばイルサ・シグルザルドッティルの父親は、おそらくシグルザル・なんとかソンになっているはずであり、これもまた面白いですよねぇ。

 

フラテイの暗号 (創元推理文庫)

フラテイの暗号 (創元推理文庫)

 

 

雪盲?SNOW BLIND?

雪盲?SNOW BLIND?

 

 

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自分の中でクラフトビール元年と銘打って、今年は古本とビールのアダノンキやbeer seller sapporoに通い始めました。ある時アダノンキでミステリ談義になったときに、自分のなかで好きな作品傾向を再認識する機会がありました。純文学もSFもエンターテイメントも好きだが何よりミステリが好き。そこまでは自明だったのだけれども、今回はその先。結果、僕はハードボイルドも好きだが、コージーミステリ・日常の謎がもっと好き。大長編よりは、短編集または短編連作の長編のそれが好きだとわかり、そちらのほうへ食指を進める傾向にあるみたいです。昨年末に読んだ「Y駅発深夜バス」や「サーチライトと誘蛾灯」も最高でしたし、今月読んだ「叫びと祈り」(梓崎優)や「七つの海を照らす星」(七河迦南)、「人魚と金魚鉢」(市井豊)しかり、どの作品もべらぼうに面白かったです。東京創元社に感謝。

 

 

叫びと祈り

叫びと祈り

 

  

  

人魚と金魚鉢 (創元推理文庫)

人魚と金魚鉢 (創元推理文庫)

 

 

 

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直近で読んだものが「僕と彼女の左手」(辻堂ゆめ)と「さよなら僕らのスツールハウス」(岡崎琢磨)と「高架線」(滝口悠生)の3作。辻堂さんはデビュー作から読み続けている作家で、心理学的要素を踏まえたストーリー重視のミステリが多いイメージです。最新作の「僕と彼女の左手」もその流れを汲んでいる作品だと感じました。ちなみに辻堂さん、ほとんど同い年なのですが、普段はIT関係の会社で働きながら執筆活動をしているらしく、執筆ペースも決して遅くはないので、本業と副業の二足の草鞋を履く生活スタイルもかっこいいですね。

岡崎琢磨さんは「珈琲店タレーランの事件簿」でのデビューが僕の中でいまだに衝撃に残っている作家でして。「さよなら僕らのスツールハウス」はシェアハウスを舞台にした青春ミステリで、単なるミステリだけではなく住人の人間性を見えてくるんですね。 

僕と彼女の左手 (単行本)

僕と彼女の左手 (単行本)

 

 

さよなら僕らのスツールハウス (角川書店単行本)

さよなら僕らのスツールハウス (角川書店単行本)

 

 

 

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そして、「高架線」の話。普段いわゆる純文学作家の本をあまり読まないのだけれど、急に読みたくなることがあって、「高架線」は表紙に目を引かれて、そしてあらすじの、年季の入ったアパートを中心に描かれていく物語という、物の思念的なところに惹かれて買って読むことにしたのですけれど、読んだ後、買って間違いない本だったと思えるようなとても良い本でした。

先述した「さよなら僕らのスツールハウス」と「高架線」を同じタイミングで読んだ時、幹は全く違うのですけれど、両小説とも集合住宅を中心に、住人の移り変わりを描き、その住宅がなくなるところで物語が終わっていて、勝手に広がりを感じていたり。まったく関係のない小説が偶然繋がる瞬間があるから本を読むのは面白いと思う訳です。

「 高架線」はうまく練られたある種のミステリだというレビューも見ましたけれど、僕としてはむしろ練らずにただただ書き続けた結果このような顛末に落ち着いた、みたいな文章と自由の広がりを感じられるのびのびとした小説のように感じられました。いつか近いうちにこの本は読み直して、また新しい発見をするのだろうと思います。動いていないのに、常に動き続けていて、文は確かに切れているのに、永遠に続いているような繋がりを感じられるような不思議な心地を味わえる小説でしたし、この本に出会えただけで2018年は最高だったと思える一冊でした。

 

高架線

高架線

 

 

滝口悠生、恐るべし。今月はこの一言に、尽きますね。おわり。

 

【読書記録】2017年12月の読書数は28冊&2017年の読書数は327冊でした。

今更ながら、新年あけましておめでとうございます。今年もぼちぼち更新していきます。

今回のアイキャッチ画像はhato coffeeです。イッタラのソーサー&カップが素敵ですね。

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さてさて、昨年の読書記録、年間読書数は327冊にて着地しました。

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正直、一年間でこれだけ読むことができるだなんて思っていませんでした。かなりたくさんの素晴らしい作品との出会いがありました。寝食を削った甲斐がありました。友達からは本当に働いているのか疑われましたが……。笑

 

さて、昨年読んだ本のリストをPDFにしました。ご参考までに。

 

今年の目標は、海外ミステリも積極的に挑戦すること、そして新刊購入も積極的に。その代わり、冊数は気にしない方向でのんびり頑張りたいと思います。今年はやらなければいけないこともいろいろあるので。

 

ではでは。

 

2017年に読んだおすすめの本15冊【ミステリ編】

一年を振り返ると今年はいつもに増して沢山の本を読んだ、読ませていただいた年でした。12月28日時点で325冊。これらの他に漫画や雑誌を読んでいた時間を含めると、一年の何%が読書に費やされていたのだろうと自分でも訝しんでしまいます。果たして一年、僕は社会人としてしっかり働いていたのだろうか、友達とのコミュニケーションはとっていただろうか、と。

今年は、例年のブックオフでの古本大量買いに加えて、Kindleでの電子書籍の乱読、そして例年以上に新刊の単行本を買った年でもありました。そのおかげか、本を置くスペースがなくなっては、本棚をDIYしたり、無印良品の本棚を書い足したりと、図書スペースはかなり増設されました。が、まだまだ入りきらない本がたくさんあるという……。この一進一退の攻防はいつまで続くのでしょうか。

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さて、今年読んだ本の中でも、2017年に発刊されたミステリ要素を含むものに絞っておすすめ本を10冊紹介します。前回のブログで書いた「ミステリランキング誌比較」のブログや300booksさんのランキングともかぶるところが多々ありますが、ご了承くださいませ。

 

masahirom0504.hatenablog.com

 

300books.net

 

 

 

1位 今村昌弘「屍人荘の殺人」(東京創元社

各誌ミステリランキングでも1位総なめの本格推理小説

僕の中でも圧倒的1位でした。

SF要素が含まれたストーリーの中で、あくまでもなんでもありな世界ではなく、この特殊な世界だからこそできる限られた殺人を、見事に作り上げた論理性もぴかいちでした。

フーダニットとハウダニットを理論づくめで伏線回収していくときの爽快感、そしてホワイダニットの納得感。

言わずもがな、最高傑作でした。 

屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

 

 masahirom0504.hatenablog.com

 

 

2位 辻村深月「かがみの孤城」(ポプラ社

稀代のストーリーテラー辻村深月さんの最高傑作と言うしかないでしょう!という本作品。

300booksさんとは、逆の順位となってしまいましたが、「屍人荘の殺人」と甲乙つけがたいほど素晴らしい作品でした。なんなら両者1位でいいぐらい!笑

ミステリ要素は強くないですが、それがかえってミステリ好きだけではなく、老若男女問わずすべての人に、すべての家族に、すべての子どもに読んでもらいたい作品だと思いました。

文量を少なくして絵本にするのもいいんじゃないかなぁ、と思えるぐらい優しいファンタジーミステリです。 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

  

masahirom0504.hatenablog.com

 

 

3位 陳浩基「13・67」(文藝春秋

お恥ずかしいことに、各種ミステリランキングが出てから急いで読みました。

香港警察のクワンとローの師弟コンビが難事件を解決していく連作短編の警察ミステリなのですが、あくまでもサスペンスではなく本格推理小説。それも6編どの短編をとっても緻密に作られた最高傑作のミステリであるだけでなく、時代を遡及して描かれる6編が最後につながる瞬間、そしてその余韻がなんとも味わい深いのです。

また、この逆年代記は単なる推理小説としてだけではなく、実在する香港警察の転換期にあたる出来事や歴史なども学ぶことができる、一石二鳥一挙両得な社会派ミステリでもあります。

かなり文量が多く、読み切るには時間がかかりますが、各章を読んだ時の読後感、そして全章読んだ時の読後感、是非とも味わってみるべきです。海外小説の中では断トツの納得の一位です。

13・67

13・67

 

 

 4位 アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」(東京創元社

お次も海外小説。アイスランドを舞台にしたエーレンデュル警部シリーズ最新作です。エーレンデュル警部シリーズは、本格ミステリというよりはサスペンスのカテゴリ、しかも派手なアクションなどはなく、むしろ殺人事件や見つかった死体から、悲しい歴史や過去を掘り起こしていく、静のミステリなので、好き嫌いが分かれるかもしれません。

ただ、僕が北海道出身、北海道在住なせいか、この冷たく悲しいアイスランド小説にかなり傾倒してしまっています。アイスランドは日本と同じぐらい犯罪発生率が低く、また北海道とほぼ同じぐらいの大きさで、北海道でいう大都市札幌とアイスランドでいう大都市レイキャビクはほぼ同じ場所にあり、寒さはかなり違うとはいえ寒い地域に存在している、そんな共通点が肌感覚であっているのかもしれません。

「湖の男」は、湖で見つかった年代不明の白骨死体から、第二次世界大戦後の冷戦時の動乱が紐解かれていきます。本シリーズの読後感は、決して気持ちの良いものではありませんし、文章はかなりドライ(それがむしろ好きなのですが)につづられています。しかし、それらすべてが相まった寂寥感がなんとも味わい深いものになっています。

そして、アイスランドの旅行ガイドと一緒に読んでいた僕は、「いつかアイスランドにいってやる!」と決意したのでした。 

湖の男

湖の男

 

 

 

5位 相沢沙呼「マツリカ・マトリョシカ」(KADOKAWA

廃墟ビルに住む謎の美女マツリカさんと彼女にこき使われる男子高校生、柴犬こと柴山くんの青春ミステリシリーズ第3弾、今回は女子生徒の制服盗難事件解決のために密室の謎を解く、前作からさらにパワーアップした本格ミステリでかなりの傑作でした。

なぜ各誌ランキングに名乗り出ていないのか不思議なぐらいです。ジュブナイル小説らしい、スピード感あるストーリー展開と秀逸なプロットは、読者のめくる手が止まりないこと間違いなしです。

読み終わった後の、楽しい気分、そしてもう次の作品を読みたくなる中毒性MAXな作品です。

 

 

6位 似鳥鶏「彼女の色に届くまで」(KADOKAWA

画廊の息子で画家を目指す主人公、緑川礼の生活は、千坂桜という一人の少女に出会って一変する。デッサンの仕方もろくに知らなかった彼女は絵を覚え始めるやいなや天才画家へと昇り詰めていく。そしてその間で出会った数々の不可解な出来事。彼女は有名な絵画をヒントに真実を紐解いていく、という美術ミステリです。

最初は高校生活から、大学生活、そして社会人へ場面は移り変わり成長していく彼らを描く連作短編集は、ただそれだけでは終わらない、最後にどんでん返しが待っています。 

ミステリとしても面白いし、美術に疎い僕にはとてもためになった本作。シリーズ化は難しいだろうけど、してくれないかなと願ってしまうぐらいに最高な作品でした。

彼女の色に届くまで

彼女の色に届くまで

 

 

7位 櫻田智也「サーチライトと誘蛾灯」(ミステリ・フロンティア

表題作「サーチライトと誘蛾灯」でミステリーズ!新人賞を受賞した作家の短編集。

「サーチライトと誘蛾灯」「ホバリング・バタフライ」「ナナフシの夜」「火事と標本」「アドベントの繭」の5編からなる昆虫採集ミステリ(?)なのですが、主人公にて探偵役のえり(魚へんに入ると書いて)沢くんの脱力とぼけ具合がとてもいい味を出しています。短編の長さもちょうどよくて、寝る前のひとときを楽しく飾ってくれること間違いなしなおすすめの一冊です。

 

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)

サーチライトと誘蛾灯 (ミステリ・フロンティア)

 

 

8位 青木知己「Y駅発深夜バス」(ミステリ・フロンティア

表題作「Y駅発深夜バス」を含め、「猫矢来」「ミッシング・リング」「九人病」「特急富士」の5編からなる本格ミステリ短編集。

ミステリ・ショーケースとの帯の通り、本格トリック、青春ミステリ、読者への挑戦、怪奇ミステリ、特急ミステリなど、作者渾身の作品集となっており、またどの作品も面白く読み進める手が止まりませんでした。表題作が書かれたのが2003年であり、14年間かけて作り出した一冊というのだから、面白いこと間違いなしです。

 

Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)

Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)

 

 

9位 フランシス・ハーディング「嘘の木」(東京創元社

博物学者である父の世紀の大発見が捏造と噂されヴェイン島へ移住した一家。そんな中で父親が不審な死を遂げる。自殺として処理されようとしている中で、博物学者を目指す娘のフェイスだけが、父は誰かに殺されたのだと確信し犯人を捜す。嘘を糧に実を結ぶ「嘘の木」を利用して犯人を暴いていく、というミステリというよりは少女の望遠活劇ファンタジー。

この作品はコスタ賞大賞および同児童文学部門賞を受賞しているのですが、「嘘」や人間の汚い部分がかなり全面に出たこの作品のテーマや内容はかなり重く、海外の児童文学はこんなものも読むのかと驚いてしまうぐらいでした。

しかし裏返せば、大人が読んでも楽しめるということにほかなりませんので、是非ご一読を。 

嘘の木

嘘の木

 

 

10位 逸木裕「少女は夜を綴らない」(KADOKAWA

前作かつデビュー作「虹を待つ彼女」にて横溝正史ミステリ大賞を受賞した作者の最新作。 加害恐怖を持つ少女は、対症療法として「殺人ノート」を綴り続ける。偶然それを読んだ少年が殺人計画を手伝ってほしいと少女に依頼する。自分を受け入れ、そして羨望する少年の態度に、協力しエスカレートしていく、殺人計画の行方は。

突飛ながらにあるかもしれないと思わせるストーリー展開や伏線の回収、さわやかな読後感、どこをとっても素晴らしい作品でした。

少女は夜を綴らない

少女は夜を綴らない

 

 

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11位 市川憂人「ブルーローズは眠らない」(東京創元社

こちらも、前作かつデビュー作「ジェリーフィッシュは凍らない」で鮎川哲也賞を受賞した作者の最新作。前回に引き続き寝食を忘れさせる本格ミステリ作品でした。 

詳しくは過去記事を。 

ブルーローズは眠らない

ブルーローズは眠らない

 

 

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12位 井上真偽「探偵が早すぎる」(講談社タイガ

 大富豪の父の死をきっかけに莫大な遺産を手にした女子高生を殺そうと次々と送り込まれる刺客たち。彼らは次々と「完全犯罪」を仕組んでいく。しかし、一人の探偵によって、完全犯罪は発生後どころか、殺人計画がスタートする前に次々とトリックが暴かれていく、というそんなストーリーあるか!と突っ込みたくなるような物語。

そんなのあり?な突飛な物語に追随する怒涛の展開とトリック潰しはページをめくる手を一時たりとも止めません。こんな面白い物語はこの人にしか書けないだろうなぁ、と開いた口がふさがりませんでした。笑

 

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

探偵が早すぎる (上) (講談社タイガ)

 

 

13位 辻堂ゆめ「悪女の品格」(ミステリ・フロンティア

「いなくなった私へ」でこのミス大賞優秀賞を受賞した作者が、満を持して東京創元社から出した作品。作風やストーリー展開が個人的に好きな作者の最新作です。

脅迫にあう主人公の"悪女"めぐみがマンションの物置で目を覚ますところから始まる本作は、誰が犯人か、動機は何かという犯人あてのミステリであるとともに、悪女になり切れない中途半端な悪女であるめぐみの、勝手ながらも心温かくなるストーリーを味わえます。

心情からアプローチする血の通ったミステリこそ辻堂作品の真骨頂なのかな、と楽しく読める作品です。 

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

悪女の品格 (ミステリ・フロンティア)

 

 

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14位 似鳥鶏「モモンガの件はおまかせを」(文春文庫)

 ラストは二回目の登場似鳥鶏さんの動物園シリーズ第4弾です。かなり癖のあるキャラクターに対して、動物に関連する重たい現実を扱う本シリーズですが、今回もかなり重たいです。そのテーマを書いてしまうとネタバレになってしまうのですが、動物とはペットとはといろいろ考えさせられるミステリです。

逆に言えば、そんな思いテーマで面白おかしく読ませてくださる似鳥さんの筆力が素晴らしいということに他なりません。ペットを飼っている方々やこれからペットを飼おうとしている方々にぜひとも読んでもらいたい作品かなと思います。 

モモンガの件はおまかせを (文春文庫)

モモンガの件はおまかせを (文春文庫)

 

 

  

 

 

以上、2017年のミステリ総括でした。やっぱり東京創元社が多めで偏りのある僕の読書記録を如実にあらわしたランキングになったな、と思う次第でございます。

ハヤカワが全く出てきていないのが意外でした。

来年はどんなミステリが待っているのでしょうか。

楽しみで仕方ないです。

 

ではでは。